夕子、西成区、花園町在住。 第8話      (ただいま…お父ちゃん)

「ただいま。お父ちゃん、今日は暇そうやな。暇やったら暇で、玄関の掃除ぐらい、なんでもかんでもお婆ちゃんにまかせんと自分でやりぃや。それに、なんでか青田整骨鍼灸院の看板傾いとったで・・・直しといたけど。」

「看板?ああ、たぶん夕べ、松喜寿司で盛り上がって酔っぱろうて帰ったからと思うわ。ゴメン、ゴメン。」「せやけど、暇なことは無い。さっきまで、立て続けで大変やったんやで、さすがにちょっと疲れたわ。言うとけど、今日は普通のお客さんばっかりや。弘田のおっちゃんとか。」

「そんなん、いちいち言わんでもええ、匂いで判る。」

「えっ、そうなんか?」

「そうや。」

「ほんまにか?」

「ほんまや。きのうなんか、特別えげつなかったわ。・・・声もでかいし。」

「・・・すまんなぁ・・・」

「いまさら気ぃ遣わんでもええよ。そのかわりに、なぁ、久しぶりに新世界の串カツ食べに連れて行ってや。ガード下で売ってる5円の串カツは犬の肉やて言う話聞いてから食べる気せえへんねん。」

「根も葉もない噂・・・とは、決めつけられへんもんが在るわな。」「まぁ、それは別の話として、よっしゃ、今度の休み、あさっての日曜日や。行こ。」

「うん。」

夕子、西成区、花園町在住。 第9話       (夕子、新世界へ…前編)

 「ぎょうさんの人が居るけど、なんか前に来た時より、日曜日にしたら、空いてる気がするわ。」

「日曜、祭日は、日雇いのおっちゃんらが休みやから、あちこちで昼間から飲んでるんやけど、この頃は工事が多すぎて間に合わんで、日曜日も祭日も無いらしいんや。」

「飛田のお姉ちゃん情報か?」

「嫌味な言い方する奴っちゃなぁ。それも在るけど、お父ちゃんも元警察官や、いろんなとこから情報は入ってくる。」

「ふ~ん。で、今日はどの店入るん?」

「うちのお得意さんの辻さんとこや。どうせやったら・・・なっ、そう思うやろ?」

「当たり前の話や。そう思えるんが、うちとお父ちゃんの似てる処やって、お母ちゃんが言うてた話やな。」「お父ちゃんには何んの話か判らへんやろ?」

「夕子が俺とおんなじで、誰とでもすぐに友達になれて営業向きや言う話やろ。」

「へぇ、知ってるんや・・・」「お父ちゃん、時々お母ちゃんの店に行ってるらしいなぁ。」

「・・・・・」

「それこそ、なんで知ってるんやって感じやなぁ。」「お母ちゃんの方からは来えへんのに、お父ちゃんの方からは行くと云う事は・・・お父ちゃんはお母ちゃんの事が今でも好きやと云うことやんか。せやのに、お母ちゃんが出ていく原因作ったんもお父ちゃんやねん。やっぱり、ここが問題なんや。」

「夕子、ゴチャゴチャ言うてる間に着いたで、はよう入り。」

「なぁ、お父ちゃん。うちの話聞いてた?」

「・・・聞いてた。さぁ、好きなもん、好きなだけ食べよ。」

「おっと、いらっしゃい。娘さんといっしょかいな、ありがとさん。」

「こっちこそ、いつも有難うございます。」

「あらたまってなんやねん。」「お譲ちゃん、ワシも元警官やったんや、サブよりだいぶ先輩やけどな。」

「えっ、そうなんですか・・・」

「まっ、昔の話や。さぁ、なににしはる?」

「サブちゃんはビールやな。お譲ちゃんにはバヤリースをおっちゃんが奢ったろ。」

「あ、ありがとうございます。」

「辻のおっちゃんは、どうして警察辞めたんですか?」

「色々在りすぎて忘れたわ。よそと違うてな、ここらは特別なところなんや、でも、ここが好きやから、警察辞めてもここで商売してるんや。お父ちゃんかてそうやろ?」

「うん・・・はい。判りました。」

「ふふっ、判らんでええ。もしかしたら、そのうち判るかもしれんけどな。」「さっ、しっかり食べてや。」

夕子、西成区、花園町在住。 第10話     (夕子、新世界へ…後篇)

 「美味しかったわ、お父ちゃん有難う。」「あっ、お父ちゃんカラーテレビや。」

「ん、どこ、どこや?」「ああ、電気屋さんか、売りもんやろうけど、どんな人が買うんやろな。」

「まだ学校でもどこでも、カラーテレビを買うたって話は聞いたこと無いわ。」

「そんなん、黙ってるだけで、判らんやろ。」

「いや、うちやったら絶対自慢する。黙ってる言うこと自体無理な話や。」

「確かに、俺もそう思う。お婆ちゃんも無理や、うちの家族で黙ってられるんは洋子だけやな。なぁ、夕子、そう思わんか?」

「家族って・・・なぁ、家族に戻って・・・」

「・・・ん、が、頑張る・・・」「せや、昔、3人でよう乗ったボートに乗らへんか?動物園もええな。そうや、どっちも行こか。」

「・・・お母ちゃんといっしょに行ける時まで置いとくわ。」

「・・・せ、せやな・・・頑張る・・・」

 「夕子、ええなぁ、串カツ行ったんか。美味しいもんなぁ。羨ましいなぁ。お前って、お母はんの「洋子」も在るし、美味しいもんばっかり食べてるんちゃうか?」

「あほ!お婆ちゃんが製麺所でパートしてるの知ってるやろ。うちの主食は基本、うどんか蕎麦や。それは、お母ちゃんが居てた頃から変わらへん。家と店とは別なんや。」

「俺とこなんか、この辺では珍しい鉄工所勤めのサラリーマンやから、毎日の生活に変化が無いねん。」

「そんな事を思てるんはマサだけや、変化が無い言う事は安定してる言う事やし。だいたい休みもおんなじ日曜日や、串カツかて連れて行ってもらえるやん。だいたいマサはしょっちゅう大阪球場へ野球の試合観に行ってるやんか。」

「あれは南海ホークス子供の会に入ってたからで、外野席が実質タダで観られたんや。来年からは体操クラブに通わせてもらうんで、もう行ってへん。」「なにより、この頃は鉄工所の仕事が忙し過ぎて、朝から夜遅うまで働いておとんもくたくたで休みの日は寝てばっかりや。」

「ホークス子供の会も体操クラブも、贅沢な話やんか。ホークス子供の会はいっぺん練習観に行ったけど、みんな背番号19番ばっかりで、後ろから観てたら誰が誰か判らへん。」

「この辺の子はみんな野村のファンやからそうなってしまうんや。」

「世間では、巨人、大鵬、卵焼きって言うてるのに、南海の野村かいな、まぁ、うちのお父ちゃんも阪神ファンで巨人のことはボロカスに言いよるけど・・・」「ふう、とにかく、今のうちにはど~でもええ話や・・・。」

夕子、西成区、花園町在住。 第11話     (おい、青田と藤川…学校にて)

 「おい、青田と藤川、お前ら幼馴染は解るけど、昼休みまでいっしょに居るって、実は相思相愛なんちゃうか。」「うわっ。」「いきなり靴飛んでくるか~。」

「おい、今、言うたんどっちや?斎藤か、井上か。まぁ声の感じで斎藤って判ってるけどな。」

「マサ、ほっとき。」

「ええっ、ゆ、夕子っ、ど~してん。いつもやったら、俺より先に動いてるやん。お前がそんな事言うたら、俺の靴の立場はどうなるねん。こいつら避けよったから、もうちょっとで水たまりまで行ってるやん。」

「ほな、入ってないねやんか。はよ、ひろといで。」「あんたらも、構わんとって。」

「お前ら、今日は夕子の元気が無うて助かったなぁ。いつもやったらボコボコやで。俺は、俺はまぁ、ええねんけど、あいつこんな話、一番嫌いよる。相手が俺の時はなおさらや。・・・俺は別に・・・いたっ!」「お前、後ろ向いてる人間にそれは無いやろ。」

「いつまでも、しょ~もない話してるからや。さっさと自分の靴と、うちの靴ひろて帰っといで。」

「俺の怒りは、お前ら2人に付けとくからな。はよ、どっか行け。」

 「ほい、お前この靴、お気に入りのやつやないか、投げたりしてええんか?」

「たまにはマサも、ええつっ込み出来るやんか。投げたりしたんはアカンけど、お母ちゃんが誕生日に靴買うてくれてん。せやから、そっちがよそいきで、この靴は学校にも履いてくるようになってん。」

「ふ~ん、嬉しそうやな。」

「めっちゃ嬉しいねん。」(投げたりして、ゴメンナサイ)

「えっ、なんか言うた?」

「なんでもない。さぁ、5時間目は体育や。」

「どっちにせよ、夕子の元気が戻ってよかったわ。・・・きのう、小遣いもろたから、帰り道、芳月のアイスクリーム買うて帰ろ。」

「マサのおごり?」

「ふつう、そのつもりや無かったら、言わへんやろ。」

「そんなん言われたら、マサの事ちょっと好きになるやんか。」

「百点満点で言うたら?」

「2点。」

「もともと、なん点やったんや・・・」

 「おっちゃん、大きいの二つ。」

「はいよ。藤川君のおごりみたいやな、いょっ、男前。」「いつもおおきに。」

「歩きながら食べたら怒られるから、マサんとこ寄って食べていってもええか?」

「噛みついたり、襲ったり、せえへん?」

「いま、ここで襲うたろか!」

 「マサはそのまま、かぶりつくタイプやったなぁ、うちは、こうやって、もなかの皮をはがして、皮ですくいながら食べるんや。」

「どないして食べても、味は変わらん。」

「変わる!」

「・・・変わるような気もする・・・けど、やっぱり、芳月のアイスは最高や。」
「うん。」 


(マサ、ありがとう。いつか、うちも、野口のお好み焼とセットでおごったるから。)

夕子、西成区、花園町在住。 第12話    (お~い、開けてくれ~…)

 「おーい、開けてくれ~。

「・・・・・」

「おーい、おれや~開けてくれ~。」

「お父ちゃん、どないしたん。うわっ、お酒くさっ。いったい、いま何時なんや、えらい酔っぱろうて、はよ、入って。」「夜中の1時やんか・・・・・はい、水。」

「ふ~。ありがとう、夕子。」「そんなに酔うてる訳やない。ただ、鍵が、家の鍵がどこを探しても見つからんでなぁ。」

「もう、しゃあないお父ちゃんやなぁ。鍵なんか無くしたら・・・どこの店で飲んでたん?」

「あほ、こんな時間からお前に行かせるわけにいくか。」

「アホはお父ちゃんや、誰も今から行くなんか言うてへん。寝たら忘れるやろ、記憶の在るうちに聞いとかんと。どこの、なんて言う店やのん?」

「・・・わかった。正直に言う。・・・明日は休みやから、まずはいつものメンバーと松喜寿司で飲んだんや。」

「正直に言うって・・・松喜寿司やな、誰と飲んだんや?果物屋のおっちゃんか?・・・ツジタのおっちゃんか?」

「わんっ。どっちもや。」

「・・・正解って意味のつもりか?ほんで、それから?」

「洗濯屋のシゲまで来よってなぁ、盛り上がってしもうて、旭町のバーへ行ったんや・・・ちょっと水・・・ほんならそこで昔から知り合いのヤクザが3人、いや4人かな・・・またまた大盛り上がりや・・・」

「ヤクザって誰?・・・勝っちゃんのおっちゃんか?・・・なぁ、寝たらあかんて。」

「あかん。限界や。」「まぁ、あした、今の話したら、なにか思い出すやろ。」「うちも寝とかんと、・・・明日が日曜日でよかったわ。」

 「お父ちゃん。おとうちゃんって。」

「まいった。俺の負けや。聞こえてるから大きな声だけは出さんといてくれ。実はちょっと夕べ飲み過ぎたみたいで、二日酔いなんや。」

「どこまで、覚えてて、どこから記憶が無いんや?・・・家の鍵は?」

「???・・・家の鍵?」「あっ、とっと・・・急に起きたら頭が・・・無い、鍵が無い。夕子なんで・・・?・・」

「まぁ座り。松喜寿司は?」

「ああ、覚えてる。果物屋と、ツジタと、・・・シゲが後から来よって・・・え~っと」

「いつも通りに盛り上がったんやろ?」

「うん。うん。」

「それから?」

「・・・・・」

「やっぱり、この辺が限界みたいやな。これもいつもの通りや。なぁ、いつも言うてるやろ。1軒目は・・・1軒だけやったら、記憶無くしてもどうにかなるんや。2軒目、3軒目になったら限度を考えて飲まんとあかんて。」

「わかってるって。」

「わかってへん!」

「・・・わかってませんでした。」

「・・・ええか、松喜寿司で盛り上がって、旭町のバーへ行ったんや。そこで、昔から知り合いのヤクザ、3人か4人かと合うて、また大盛り上がりした。と、うちが聞いたんはここまでや。ここで、お父ちゃん力尽きて寝てしもうた。」

「面目ない。でも、ちょっとは思い出したわ。勝の親父らと合うたんや。あと、剛が居ったような、気が・・・」

「やっぱり。」「だいたい元警官がなんでヤクザの友達ぎょうさん居てるねん。」

「元警官やからかもしれへん。・・・警察関係で付き合い在るのは、あの串カツ屋の辻先輩ぐらいや。ヤクザの方が断然多い。現役もOBもいてる。みんな仲のええ友達ばっかりや。夕子はそんなお父ちゃん嫌いか?」

「ぜんぜん厭とちゃう。ちょっと不思議に思うただけや。刺青さえ見せびらかせへんかったら、ほんまにええ人ばっかりや。とくに、そんな人らのおばちゃんがええ人そろてる。とにかく、これをヒントに鍵、探しといでや。次は家に入れたらへんで。」

「わかった、昼からな。心当たりは出来たし、もうちょっと寝る。」

「あと、20分で12時。もう、りっぱな昼や!起きっ!」

「あっ、まくら。夕子、そんなっ、まくら・・・。」

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弘と書いてひろむと読みます

Author:弘と書いてひろむと読みます
主人公の夕子と昌幸は作者と同級生と云う設定。          ディープな町、西成区花園町の世界を御堪能下さい。

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