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制服と割烹着(夕子と昌幸・青春篇) 第10話


 「お父ちゃん…ちょっとこっちへ来て、これ食べてみて。」

「え~~っ、今度は大丈夫やろな? この前の奴は危なかったど……」

「危ない分け無いやんか。味は別として、食べられるモンしか出してへんやろ。」

「味は別とせんと、重視して欲しいんや…そこが問題やと思うで……」「うわっ…これはアカンやろ。始めからアウトやんけ。」

「始めからアウトはひどいやろ。せめて一口でも食べてからやなぁ……」

「その一口が無理やろ? せやからアウトなんや。見た眼だけでも怖いのに、台所に充満してるこの匂いが、俺に食べたら危険やと教えてくれてるやないか。」「労働者にとって、いかに休日が大切か、ちょっとは考えてもらわんと。」

「なにを大袈裟な事を…ちょっと焦がしただけやんか。早よ食べて意見を……」

「ちょっとでも、大袈裟でも無いやろ? 食べてみんでも……それが俺の意見や。」

「何を言うてるんや。マサが非番やったら食べさせるんやけど、今日ははお父ちゃんしか居てないやんか。」「せっかく作ったんやで…早よっ。」

「せっかく作らんでもええんや。」「昌幸もたいがい、えらい目に合されてるみたいやけど…そのうち、どっちか死ぬ日が来るど。」

「アホな事言わんといてや。お父ちゃんとマサが死ぬようなモン、お客さんに出されへんやないか。」

「夕子、お前…だいそれた事を考えたらアカンぞ。そんな事したら、大阪の食文化が根底から崩れてしまうやないか。」

「やかましいわ! なにが大阪の食文化やねん…アホっ。」「こないして、眼と鼻を押さえて食べたらええんや。観念して食べんかい…このくそ親父が………」

「こ、殺される~~」「……あっ、これはアカン…だいたい、なんて云う料理やねん?」「中には…なにが入ってるんや?」

「これはやなぁ、筑前煮が煮詰まり過ぎて、途中からきんぴらへと華麗なる変身をとげた……今日しか味わう事の出来へん貴重な一品なんや…なっ、生きてるやないか。」

「2時間後に死んだら、ど~するつもりや?だいたいやなぁ、なんで、無事に完成したモンを食べさせてくれへんのや~?」

「そこやねん。無事に完成したら自分でも食べるんやけど、中々…無事に完成してくれへんのや………」

「…自分で食べた事は在るんか?」

「……ない。」

「お前、料理学校に通いながら、努力の順番…間違うてるんとちゃうやろなぁ?」

「努力の順番ってなんやねん?」

「俺に詳しい事は分からんけど、普通は技術と味付けを並行して習うんとちゃうんか?」 

「う~ん…どうやろか? とにかく、まだまだ基礎的な事ばっかりやからなぁ。それに味付けも技術の内やないのんか?」

「それは、そうやなぁ。」「でもお前が器用なんは知ってる…しかし、それにしてもや、包丁さばきなんか、最初はど~なる事やと思うたのに、今やお母さんが驚くほど上手いやないか。なのに味付けときたら、幼稚園レベルや。これって、不思議やと思わへんか? バランスがおかしいやろ…?」

「それで、努力の順番ってか? 自分でも、おかしいとは思うけど、理由は分からへん。」「あえて言うなら、包丁を持ってる時は楽しいけど、包丁を置いたとたん、ど~云う分けか緊張感が緩むんや。」

「そ、それが理由やろ。一言で言うたら性格に問題が在るんや。」

「えっ、そうやろか?」

「それしか無いんとちゃうんか? 昌幸やお母さんはどない言うてるんや?」

「マサはこの前『今回は自信作やで』って食べさせたら、よっぽど嬉しかったんか、涙流しながら食べて、眼、どころか唇まで腫らして『もうちょっと辛さを押さえたら、ばっちりや』って言うてくれたから、お父ちゃんと都合が合う時に、二人に食べさしたるつもりなんや。」

「なぁ夕子、一週間ほど前なんやけど…昌幸の奴、真っ赤な眼と腫れた唇で、ここへ来てなぁ『先生、巻き込んですみません』って言うて帰りよったんやけど…今の話と合わせて、なんか関連が在るんとちゃうか?」

「それは無いわ。泣いて喜ぶほどやのに…マサが素直なんは、お父ちゃんもよう知ってるやんか。」

「……ほ、ほんなら、お母さんは…なんて言うてるんや?」

「マサとお父ちゃん以外には『食べさせたらアカン』って。他は…まぁ『ボチボチ頑張ったらええやん』と、それぐらいやで。」

「今のところは、週一の日曜日だけやから持ち堪えてるけど『ボチボチ頑張る』んも、ほんまにボチボチにしといてくれるか。」

「あっ、そうや。この『変身・筑前煮スペシャル・きんぴらバージョン』はちょっと失敗やったけど、晩御飯はマサと一緒にその『自信作』を食べさせたるわ。あいつ今日は、夕方に帰って来よるんや。」

「いや~残念やけど、俺、今日は茂ちゃんらと飲みに行く予定が……それに『変身…なんとか』の失敗はちょっとや無いど。」

「あっ、それやったら今から材料買いに行くついでに断っといたるから、心配いらんで。ほんで……マサとこにも寄って、おばちゃんに伝言たのんどいたら一石二鳥やんか。」「ほな、行ってくるわ。」

「…行ってらっしゃい………」「昌幸…一生恨むからな。」


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マサ、優しいなぁ、男やなあww

筑前煮って、簡単なようで難しい。
夕子の「実験」につき合わされても「美味しい」って言うマサが、けなげで笑えたwww
惚れてるんやなあ。男前はやっぱり強いだけじゃなくて、優しくないとな。
最初っから、キンピラ作ったら消防車呼ぶ騒ぎになってたなww
夕子を愛する男どもの哀愁が、おもしろすぎww

藤井美菜さん、いつも有難うございます。

9話の後お話したように、ここからが本編だと思って下さい。

夕子と昌幸の快進撃が続きますのでお楽しみを……

ま、ま、まさか・・・・・・・・・・・

実際に経験したことではないのでしょうね!
たとえば、奥さんとかが実際にこんな料理を作って食べさせられたとか・・・・・・・・・ゾッ!(笑)

ちかい事が在りました・・・

前作も含めて、物語の7割ほどは、似たような事を材料にしていますが……

この件につきましては、実の妹にほとんどこれに近い経験をさせられた事が在ります。セリフもほとんど物語通りだと思ってもらって結構かと……

この10話からが本編です、今後も夕子と昌幸の活躍を応援してやって下さい。

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