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制服と割烹着(夕子と昌幸・青春篇) 第3話



 「お父ちゃん起きて……」

「……うん? あっ、居眠りしとったみたいやなぁ。」「今、帰ってきたんか?」

「そうやけど、こんな季節に風邪ひく…はずは無いけどなぁ…けど、気は付けや、いつまでも若こう無いし。」

「アホな事言うな。まだ40半ばやないか、中年と呼ばれるようには成ったけど心配いらんわ。」

「けど、どないしたんや? お婆ちゃんは?晩御飯は?」

「お婆ちゃんなぁ、昔からの友達のお見舞いに行ったきり、まだ戻って来んのや。」「急な話やったけど、大した事は無さそうやから、夕方には戻ると言うて出て行ったんやけどなぁ…俺もお客さんが途切れて、その後、転寝をしてしもうたみたいや。」

「ふ~ん。うちは今から『洋子』やけど、どないする…一緒に行くか?」「晩御飯、困るやろ?」

「そうやなぁ…お婆ちゃんは鍵も持ってるし、居場所も分かるはずしやなぁ…ちょっと起き手紙しといて、行こか。」

「うちはもう出かけるから、来るんやったら早めにおいでや。」

「よっしゃ。もうちょっと待って…6時までには行くから。」


 「お母ちゃん、今日は部活へ行ってたから、この時間やけど、学校が始まるまでは出来るだけ昼も、買い物も、何でも手伝うから。」

「有難う。嬉しいけど、専門学校とは云え、学生の間は、いらん気を使わんでもええんやで。夕子は、ほんまに子供の頃からいらん気を使う子やったから……」

「後を継ぐと決めたんやから、学校も手伝いも全部が勉強なんやで。マサが本気で頑張りよるんや。うちかて本気で頑張らんと…お母ちゃんこそ、気を使わんといて。」

「夕子、あんたの気持ちは分かりました。遠慮せんと手伝うてもらいますわ。昌幸くんに負けんように頑張って、一人前の女将になって頂だいや。」「けど、一人前と云うても、居酒屋の女将では、オリンピック選手とはつり合いが取れへんのとちゃいますか?」


「その時は・・・・・・お母ちゃん、何が言いたいんや?」

「せやから、オリンピックなんか、出られても出られんでも…こだわって、負担を掛け過ぎたらあきませんで。」
「それは分かってるつもりや…」「お母ちゃん有難う。けど、なんでそんな話を?」

「いえ…別になにも在りませんけど…」


 「……入ってもええか?」

「お父ちゃん…もう入ってるやん…」「聞いてたんか?」

「いいや…なんにも聞いてないで。」

「大丈夫ですやろ…お父さん、どないしたんや? こんな時間に…」

「ゴメン、お母ちゃんに言うの忘れてたわ…って、お母ちゃん、お婆ちゃんの事知らんかったんか?」

「知らんわけ無いやろ。一緒に居てたのに、それよりお前の言うように、オリンピックだけにこだわったら…あっ……」

「あんた…アホやろ……」

「ええよ、聞かれて困る話とは違うし。」

「…そ、そうやろ。夕子は人間が出来てる。オリンピックだけにこだわり過ぎたらアカン事は十分に分かってるんや。」

「…なるほど…あの、あほんだら…そう云う事か……」

「お父さん、あんたのせいやで。」

「えっ?」

「お父ちゃん。マサから聞いた話を、聞いたまま言うて。」

「さぁ…なんの事やろ?」

「誤魔化してもおそいで。」

「うちは知りませんで……」


 「毎度~さむい、さむい…ママ~お湯割りと土手焼きや。」「なんや、若女将にサブちゃんまで居てるやないか?」「外も寒いけど、ここの空気も寒いようやなぁ?」

「はい、ええとこへ来てくれましたわ。」

「ちょっと待って。森川のおっちゃん、うちになんか言いたい事ない?」

「うっ、どう答えたら正解なんや? 若女将は何を期待してるんやろか?」

「期待はして無い。せやから、みんなの顔色見ながら話をせんと素直に言うて。」

「それはやっぱり、昌幸の…」

「なぁ、今日はおっちゃん一人?」

「うん、定年してからは一人が多いのは若女将も知ってるやないか。」

「ふ~ん、それやったらしゃ~ない。ここに居てるメンバーはみんな…マサから何か聞いてるやろ?」

「うん。聞いてるけど…わしら、若女将のファンクラブの会員やけど、昌幸も応援してるもんやから……」

「森川さん、俺が言いますわ。こうなったらしゃ~ない。」「相手は夕子や…誤魔化す事は不可能やろ。」「どっちみち時間の問題や…悪い話とも違うしな。」「ええか、昌幸の話というのは『オリンピックの代表に選ばれたらと云う条件付きやけど、昌幸のプロポーズを夕子が受けた』…と云う話や。」

「・・・・・・」

「お前の気持ちはよう分かる。すでに勝負は始まってる。自分が応援したら昌幸の気合も入る…『すごい愛情を感じました』と云う昌幸の言葉にみんな感動したんや。」

「みんな…すごい愛情…感動って…」「なぁ、みんなって誰と誰?」

「みんな云うたらみんなやないか。」「花園町や萩之茶屋界隈は当たり前として…せやなぁ、ざっと半径2キロ以内で知らん奴は居てへんやろ。なんせ、お前ら有名人やから。」

「・・・・・・なんや眼がかすんで来たわ…なぁ、お父ちゃんは当然、マサから直接聞いたんやろ?」

「そうや。」

「俺もやで。」

「おっちゃんも…お母ちゃんは?」

「私も昌幸くんからですわ。なんや昼を済ませて、『いまから部活です』って言いながら入って来て……」

「この店に? 誰か居てた?」

「居てたも何も、隣のお店は勿論ですけど、薬局とその隣の雀荘までは聞こえたんとちゃうやろか…勝ちゃんと茂さんなんか聞き直しに来はったから…」

「……あのハ虫類、そんな大きな声で…」

「選手宣誓みたいでしたわ。」

「宣誓って…あのアホ……」

「爽やかで、カッコ良かったで。」

「ほんで、うちが『代表に選ばれたら結婚したるから気合入れて頑張りや』って言うた事になってるんやな?」「それを聞いたマサが『愛情を感じました』って言うてる訳やねんな?」

「ちょっと違う…『すごい愛情』って云うとった。それに感動させられたんや。」

「わしも一緒や。」


 「わても、そう聞きましたで。」

「お婆ちゃん……」

「昌幸ちゃん、製麺所まで挨拶に来てくれてなぁ…よっぽど嬉しかったんやろ。」「製麺所中で拍手喝采や…梅乃さんなんか涙ぐんではったわ。」

「…たまらんなぁ……」

「お義母さん、お帰り。」「桜井さんはどうでしたんや? 晩御飯は?」

「なんの心配も要りませんわ。話し相手に呼んだやないかと思うほど元気で…気が付いたら、えらい長話をしてしもうてましたんや。」「晩御飯なぁ…まだですねんけど、ここら辺のモンを適当に盛り付けてくれたらよろしいわ。それから冷でええから2合ほど…」「森川さん、久しぶりでっけど、若いもんが湯割りなんか飲んで……」

「若いって、一つか二つぐらいしか変りませんやんか。」

「一つや二つの事にこだわっとったら、あきまへんで…」

「もう、かないませんわ…どっちがこだわってますねん。」「まぁ、とにかく若女将が飲めるようになるまで、お互いに元気で頑張りましょうや。」

「それは楽しみですけど、まだまだ老けこむ歳や在りませんがな…後、2年ですやろ? わても、70までは製麺所で働くつもりやさかい。」

「2年か…うちは、4年後が怖いわ…」


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みんなが応援してるのがいい!!

町内にふたりの横断幕が出そうな勢いwwwマサの押しの強さが笑えるww最高!!

藤井美菜さん、いつも有難うございます。

励みになるコメント、本当に有難うございます。

内容を明かせないのは残念ですが、夕子と昌幸の活躍はまだまだ続きます。
今後とも二人の応援を宜しくお願い致します。

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このコメントは管理人のみ閲覧できます

お米を届けに。

ちんぱんじーの件について、あのコメントの下に書いておきました。
Facebookや、Twitterには昔の写真が残っています。自分のブログのインパクトを優先して、ごめんなさいねww

こちらこそ失礼しました。

ちんぱんじーの件については失礼しました。
近いうちに Facebook や、Twitter でもお邪魔させて頂きます。
その時は宜しくお願いしますね。

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