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制服と割烹着(夕子と昌幸・青春篇) 第1話

(あらすじ)

このお話は【夕子、西成区、花園町在住。】と云う、私が書いた物語のタイトル通り青春編で在ります。

 前作では小学3年生だった主人公【夕子】(青田夕子)とその幼馴染のやんちゃ坊主【マサ】こと(藤川昌幸)が高校を卒業する処から4年後までを綴った物語で、母親の営む【居酒屋洋子】を継ぐ決心をした夕子と、警察官の採用試験合格を決め、今後は柔道でオリンピック出場を目指す昌幸との【恋のゆくえ】を含むやり取りを主軸として、二人を取り巻く様々な人々、特に夕子の父親【青田三郎】、母親【洋子】との軽妙な駆け引きなど、多くの人々が織りなす【浪速の人情コメディー】となって居ります。

 物語は、コテコテの大阪弁で語られる『会話』ばかりで進んでいきますが、幼稚園から小学校、中学校は勿論、高校まで同じ学校へ進学し、卒業を間近に控えた二人が在る約束をする場面から始まり、それぞれの後輩とのやり取りや、バレンタインデー騒動などを経て卒業し、それぞれの道に進み精進しながら、人々との交流を深めつつ、二人はお互いに大人へと成長して行きます。

 二十歳に成って初めて飲んだお酒の味、初めてのデート等々…そして、ごくありふれた日常の出来事を、これでもかと云うほどの『ノリと突っ込み』で、それぞれのキャラクターが演じてくれる中、2人は青春を大いに満喫かつ謳歌して行きます。

 こうして、次期オリンピック出場を目指す【昌幸】と応援しているのか、足を引っ張っているのか…微妙な【夕子】との4年間は過ぎて行くのでした。  悪い人なんて、何処にも出てこない、大阪の下町に繰り広げられる人情コメディーをお楽しみ下さい。 

 

    「うちは夕子やで…。」

  「そ、それは知ってる。 どっちか言うたら知り過ぎてる…と思う。」  
  
 「ふ~ん…知ってて言うてるんやな…?」                                                        「ほんなら、うちらの住んでる日本には…クリスマスが無いのは忘れとったんか…?」

 「忘れるか~! ここ数年…これはひょっとしたらと思える場面は、あちこちで見かける気はする…。」                    「俺とお前の周辺…と、言うより…青田家と藤川家には存在してないはずや。」

  「ほ~、せやのにバレンタインって…なにを眠たい事言うてるんや…?」

 「ちゃうやん… 俺は、ただ…もうすぐ高校も卒業やし、お互いの進路も決まったしやなぁ…記念にいっぺんぐらい…」

   「いっぺんぐらい…なんや…?」

 「お前からは毎年、ぎょうさんチョコレートはもろてるけど…。」                                          「おかげで家ではえらいモテモテやとも思われてるけど…。」

  「けど…けど…って何やねん…? 子供の頃から言うてるやろ…最後からしゃべり。」

 「…せやから、いっぺんぐらい夕子からのチョコレートも、在ってええんとちゃうかな~~と思うたんやないか…。」

  「あのなぁ、バレンタインデーの意味くらい、うちでも知ってる…マサかてそうやろ…?」

   「それは……せやからこそ……いや、せやから……と、云う訳でも……。」

 「1番の理由はそれや!」                                                                「2番目も3番目もそれや…うちはおそらく、死ぬまでチョコレートを買う事は無いと思う。」

   「なぁ、今は特別…本命やのうても渡したりするんが…流行りなんやで。」

   「そんなもん流行らんでもええし。だいたい…世間と、うちとは違うんや。」

  「そ~云うお前は、女やのに毎年…何十個ももろうて、俺にくれるやないか。」

    「それこそ、けったいな世の中や。」                                                      「せやけど…『憧れています』とか言うて、持って来てくれるもん…返す分けにも、ましてや捨てる分けはいかへんやろ…?」

  「まぁ、おかげさんで、うちの家では家族ぐるみで喜んでるけどな。」                                       「お母んなんか…『夕子ちゃんには内緒にせなアカンで…』とか言うたりしよって…困ったもんや。」

    「ほんま! 困ったもんや!」

     「…せ、せやな…。」

 「とにかく、うちは、甘いものなんか大嫌いやのに毎年毎年…バレンタインデーが近づいて来るだけで憂鬱なんや。」

   「まぁ、夕子みたいな奴自体が…たしかに珍しいわなぁ…。」

 「けど、うちが言うのもなんやけど…マサかて中々なもんとちゃうんか? 幾つかもらえるやろ…?」                      「うちのクラスでも、後輩の子らの中でも…カッコええって評判やで…?」

 「そこや…俺には、夕子って彼女が居ていると、みんな知ってるもんやから……痛っ~~!…」                      「お前…久しぶりに本気で蹴ったやろ? 狙いすましたようにスネやないか…う~っ…」

 「ええか、あんたには彼女なんか、そもそも…居て無いんや。」                                          「それに…うちが言うのはおかしな話やけど…あんだけ、しょっちゅう『夕子が…』『夕子は…』って言うとったら、誰でもマサが好きなんは『夕子』って言う奴やと思うやろ…アホっ!」

  「そ、そんなに言うてるか~?」 「言うてたとしても…妹って事も在るやん…?」

   「あんたは18年間、一人っ子や。」

 「それは、お前もやないか、それに、俺が一人っ子やと…知らん奴かて居てる。」                                「結局は、なんと云うても、夕子…お前が超有名人やからやないか…いつも一緒に居てるし、それが原因やで。」

 「最後はうちのせいにする気かいな…?」「そろそろ、スネの痛いのも治まった頃とちゃうんか…?」

 「ちょっと待ってくれ…もう一発くろうたら…練習にも影響が出るやないか。」 「さっきのは…ほんまに痛かったど。」

 「それは、ゴメン……」「けど覚えときや…うちはマサが今更、何を言うても、何を思うても…もう慣れてる。」                   「人が噂するのにも慣れてるんや。」「せやから、それはもうええ…せやけど、うちに彼氏は居て無い…これが事実や。」

 「なんや、ややこしい言い方やなぁ…せやけど、要するに俺がお前を彼女って思うてる事も、人がそう噂するのも…夕子は厭や無いって事なんやろ…? これって事実上の…彼女って云う事とちゃうんか…?」

  「いや…それは…違うはずやけど……?…」「と、とにかく…人前でこの話はしたらアカンで。」

   「……お前、噂も気にならへんって言うたとこやないか…?」

    「きが…気が変わったんや!」

 「ちょっと考えてみぃ…ええか、俺の身の回りで…お前の周りでもそうや…。」                                 「俺とお前は、ただ仲がええだけで、付き合うたりはして無いと…思てる人間…誰か居てるか…? 居てへんやろ?」

    「……うち一人だけやろなぁ。」

  「逆になんでやねん…? 教えてくれ…?」

  「なんでもや! 絶対に認められへん…。」

 「……世間では、俺がお前を追いかけ回してるように思われてるけど…高校受験の時、俺は柔道で推薦入学が決まってたんやで。」「それを私立は学費が高いとか、遠いから交通費まで高いとか言うて…願書まで、自分が行くついでにもろうて来たんは夕子、お前やないか…。」「後から考えてみたら、俺の場合…特待生やから私立でも学費なんかいらんかったんや。」           「せやけどまぁ…、お前の特訓のお陰で合格したんは感謝してるんやけどな。」

  「ちっこい時から、しょうも無い事はよう覚えてるんやなぁ…」「感謝の気持ちだけ、覚えといたらええねん。」

   「しょうも無い事とは違うやろ…?」

 「ほな、あんた…うちと幼稚園から高校まで、ず~~と一緒やったんが…厭やと言うんやな…?」

   「……そんな事言うてないやん。」

  「ほな、良かったんか? 悪かったんか?」

    「…良かったけど……。」

   「それで、ええやないか…。」

    「……うん。」

 「だいたい、うちみたいにええ女がまったくモテへんのは…マサみたいなイカツイ奴がいつもそばに居てるからやで…。」

  「いや~~~~~ それは…それこそ俺のせいや無うて、別の理由が………」

   「ほ~~っ…どんな理由や…?」

 「気にする必要もない…どんな理由にしても…心配せんでもええって、子供の頃から…俺が責任をもって……」

   「アホっ! それが心配なんや!」

  「…そんだけ大きな声で言わんでも……。」

「なんや、近所でも…店の常連さんから、お父ちゃんやお母ちゃんまで…既成事実みたいに言いよる…ほんま、かなわんわ。」

 「そうは言うても…なぁ、よう聞いてくれよ…?もう、俺には他の選択肢なんか考えられへん。」 「警察官には採用されたし、今年のモントリオールはさすがに今の実力では無理やったけど、次のモスクワには実力で行って見せる…。」                    「お前、俺に愛情で表現する事があるとしたら、『頑張ったのにオリンピック予選で落ちた時と、事故かなんかで死にかけてる時だけや…』って言うてやろ? 覚えてるか…?」

  「あんたほどや無いけど、それは覚えてるで…せやから…?」

 「せやから…!」 「オリンピック代表になれたら…その時は観念して、俺の嫁はんになってくれ。」

  「あ…アホっ! いきなり、なに言うてるんや? 冗談はやめときや…。」

   「俺は、いたって真面目や!」

  「あ、アホっ…… これって、直球ど真ん中のプロポーズやないか…?」

    「うん、せやで。」

 「せやで…って、高校の卒業もこれからや言うてるのに…なに…アホな…事を……⁉…」

 「卒業はまだでも、その先は決まってるやないか。後は結果が付いてくるかどうかやろ…?」                        「お前が『うん』って言うてくれるのと…言うてくれへんのとでは、俺の気合の入り方が違うてくる…それは分かるやろ…?」

   「そんなん、うちには関係……関係…在るやろなぁ……あんたの場合……。」

 「なっ…と云う事は…道が決まった以上、勝負は始まってるんや… 嘘でもええから、『うん、わかった』と言うてくれ。」

 「…道が決まった以上…勝負は始まってる……説得力は在るやないか。」                                    「いやいや、そうは言うても…こればっかりは……。」

   「せやから、嘘でもええからって言うてるやないか。」

  「なぁ、嘘でもええから……って、嘘やないやろなぁ……?」

   「嘘や無い…たのむわ。」

   「オリンピック代表やな…?」

    「そうや!」

   「モスクワって…それは…もう決まってるんか…?」

 「そんなもん、早ようから決まってるで、工事や準備に時間が掛かるやろ…その次もモスクワまでには決まるはずや。」

   「代表になれた時だけやな…?」

    「そうやで…。」

   「落ちた時には…あきらめるんやな…?」

    「俺からは2度と言わへん!」

  「そ、その時は…約束やから、愛情をもって慰めたるわ…うん!」

 「うん、その時は頼むわ。 けど、お前が『うん』と言うてくれたら…落ちた時の心配なんか…必要ない!」

「妙な気迫が………なぁ、それって、返事と…事と次第によっては…マサの嫁はんになるって事なんか…?」

   「そう云う事に…なるかも知れんなぁ…。」

  「…けど、嘘でもええから…言うて欲しいんやろ…?」

   「嘘でもええ…言うてくれ。」

   「代表になれた時だけ………」

     「早よ、言え!」

  「うん、わかった。」 「……あっ、今のは……」

   「ありがとう…しっかり聞いた!」

    「せやから、今のは……」

「夕子がこう云う場面で、嘘を言うはずが無いのは判ってる…俺の人生で、一番気合の入った4年間になることは間違い無い。」

   「そうか……… まぁ、せいぜい頑張ったら、ええんとちゃう…?」

    「もう、お前は俺の嫁はんや……。」

 「誰か…悪い夢やと………まぁ、夫婦漫才が無くなっただけでも、今日のところは良しとしとこか……。」

 昭和51年、夕子と昌幸が18歳で迎えたバレンタインも間近な早春の出来事。

 まさか4年後、オリンピック・モスクワ大会を、日本が…ボイコットによる不参加を表明する事など、知る由もない2人の物語…【制服と割烹着(夕子と昌幸・青春篇)】はこうして始まります。

 2月に入ったばかりですが、昌幸は警察官、夕子は料理の専門学校へと、それぞれ採用や合格が決まっていた。夕子に誘われるままに名門府立高校へ進学した昌幸。大学受験に苦しむ友達をしり目に、明るい将来を信じて疑わない二人なのでした。


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コメント

イケズな夕子

昌幸のまっすぐなところが良くもあり、悪くもあり、ほろ苦い青春篇ね。
はたして、夕子の心は、どう動くのか。続きを楽しみにしています。

おっ! 始まりましたね。

ふたりに明るい将来が来ることはわたしも疑っておりません。

それなりの紆余曲折はあると思いますけど(^^;)

藤井美菜さん、有難うございます。

いつも御訪問有難うございます。

先の事を述べる訳にはいきませんが、子供の頃の話より笑える事は確実だと思います。 

夕子と昌幸の今後をどうか応援してやって下さい。宜しくお願い致します。

ポール・ブリッツさん、有難うございます。

コメントを頂き、本当に嬉しく思って居ります。

先の話は出来ないと言いつつも、悪い人なんか出て来ないコメディーとなれば、将来は明るいと想像はつきますが、ハチャメチャな夕子と昌幸の活躍を応援してやって下さい。

今後とも、宜しくお願い致します。

御目出度う御座います

明けましておめでとう御座います^^
続きが始まりましたね^^
読まさせて戴きます。
今年もガンガン書いていきましょう!

綺羅星さん、有難うございます。

あけましておめでとうございます。

こちらこそ、今年も宜しくお願い致します。

愈々佳境!

愈々佳境!
微笑みながら読ませて戴いています。

            ヒゲ爺

ひげ爺 良兵衛さん、有難うございます。

こちらこそ、いつも他に類の無いブログを楽しませて頂いて居ります。

夕子と昌幸、二人の活躍を今後とも応援してやって下さい…お願い致します。
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