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制服と割烹着(夕子と昌幸・青春篇) 第1話


 「うちは夕子やで。」

「そ、それは知ってる。どっちか言うたら知り過ぎてる…と思う。」

「ふ~ん…知ってて言うてるんやな?」「ほんなら、うちらの住んでる日本にはクリスマスが無いのんも知ってるんか?」

「当たり前やないか。」「ここ数年、これはひょっとしたらと思える場面を、いたる所で見かける気はするんやけどな…俺とお前の周辺には存在してへん。」

「ほ~、せやのにバレンタインって…なにを眠たい事言うてるんや?」

「ちゃうやん。俺は、ただ…もうすぐ高校も卒業やし、お互いの進路も決まったしやなぁ…記念にいっぺんぐらい…」

「いっぺんぐらい…なんや?」

「お前からは毎年、ぎょうさんチョコレートはもろてるけど。おかげで家ではえらいモテモテやとも思われてるけど…」

「けど…けど…って何やねん?子供の頃から言うてるやろ…最後からしゃべり。」

「…せやから、いっぺんぐらい夕子からのチョコレートも、在ってええんとちゃうかな~と思うたんやないか。」

「あのなぁ、バレンタインデーの意味くらい、うちでも知ってる…マサかてそうやろ?」

「それは……」

「1番の理由はそれや。」「2番目も3番目もそれや、うちはおそらく、死ぬまでチョコレートを買う事は無いと思うで。」

「なぁ、今は特別…本命やのうても渡したりするんが流行りなんやで。」

「そんなもん流行らんでもええし。」

「そ~云うお前は、女やのに毎年…何十個ももろうて、俺にくれるやないか。」

「けったいな世の中や。せやけど『憧れています』とか言うて持って来てくれるもん、返す分けにも…ましてや捨てる分けはいかへんやろ?」

「まぁ、おかげさんで、うちの家では家族ぐるみで喜んでるけどな。お母んなんか『夕子ちゃんには内緒にせなアカンで』とか言うたりしよって…困ったもんや。」

「ほんま!。困ったもんや!。なぁ!」

「…せ、せやな…」

「とにかく、うちは、甘いものなんか大嫌いやのに毎年毎年…バレンタインデーが近づいて来るだけで憂鬱なんや。」

「まぁ、夕子みたいな奴もたしかに珍しいわなぁ。」

「けど、うちが言うのもなんやけど…マサかて中々なもんとちゃうんか? 幾つかもらえるやろ?」「うちのクラスでも、後輩の子らの中でも、カッコええって評判やで?」

「そこや…俺には、夕子って彼女が居ているとみんな知ってるもんやから…痛っ…た~…お前、久しぶりに本気で蹴ったやろ? 狙いすましたようにスネやないか…う~っ…」

「ええか、あんたには彼女なんか居て無いんや。」「それにこれも、うちが言うのはおかしな話やけど、あんだけ、しょっちゅう『夕子が…』『夕子は…』って言うとったら、誰でもマサが好きなんは『夕子』って言う奴やと思うやろ…アホっ!」

「そ、そんなに言うてるか~?」「言うてたとしても、妹って事も在るやん?」

「あんたは18年間、一人っ子や。」

「それは、お前もやないか、それに知らん奴かて居てる。」「結局は、なんと云うても、夕子、お前が超有名人やからなぁ…いつも一緒に居てるし、それが原因やで。」

「最後はうちのせいにする気かいな…」「そろそろ、スネの痛いのも治まった頃とちゃうんか?」

「ちょっと待ってくれ…もう一発くろうたら練習にも影響が出るやないか。」「さっきのは…ほんまに痛かったど。」

「それは、ゴメン……」「けど覚えときや…うちはマサが今更、何を言うても、何を思うても…もう慣れてる。人が噂するのにも慣れてるんや。それはもうええ。せやけど、うちに彼氏は居てへん…これが事実や。」

「なんや、ややこしい言い方やなぁ…せやけど、要するに俺がお前を彼女って思うてるのも、人がそう噂するのも、夕子は厭や無いって事なんやろ?」「これって事実上の彼女って云う事とちゃうんか?」

「いや、違うはずやけど……」「とにかく人前でこの話はしたらアカンで。」

「……お前、噂も気にならへんって言うたとこやないか?」

「気が変わったんや!」

「ちょっと考えてみぃ、俺の身の回りで、お前の周りでもそうや、俺とお前がただ仲がええだけで、付き合うたりはして無いと思てる人間…誰か居てるか?居てへんやろ?」

「……うち一人やろな。」

「逆になんでやねん?」

「なんでもや! 絶対に認められへん。」

「……世間では、俺がお前を追いかけ回してるように思われてるけど、高校受験の時…俺は柔道で推薦入学が決まってたんやで、それを私立は学費が高いとか、遠いから交通費まで高うつくやとか言うて…願書まで自分が行くついでにもろうて来たんは夕子、お前やど。後から思うたら、特待生やから私立でも学費なんかいらんかったんや。」「せやけどまぁ、お前の特訓のお陰で合格したんは感謝してるけどな。」

「ちっこい時から、しょうも無い事はよう覚えてるんやなぁ…」「感謝の気持ちだけ覚えといたらええねん。」

「しょうも無い事とは違うやろ?」

「ほな、あんた、うちと幼稚園から高校までずっと一緒やったんが厭やと言うんやな?」

「……そんな事言うてないやん。」

「良かったんか? 悪かったんか?」

「…良かったけど……」

「そんで、ええやないか。」

「……うん。」

「だいたい、うちみたいにええ女がまったくモテへんのは、マサみたいなイカツイ奴がいつもそばに居てるからやで。」

「いや~それは…それこそ俺のせいや無うて、別の理由が……」

「どんな理由や?」

「どんな理由にしても…心配せんでもええって、子供の頃から…俺が責任を…」

「アホっ! それが心配なんや!」

「そんだけ大きな声で言わんでも…」

「なんや、近所でも、店の常連さんから、お父ちゃんやお母ちゃんまで、既成事実みたいに言いよる…ほんま、かなわんわ。」

「そうは言うても…ええか、もう俺には他の選択肢なんか考えられへん。」「警察官には採用されたし、今年のモントリオールはさすがに今の実力では無理やったけど、次のモスクワには実力で行って見せる…」「お前、俺に愛情で表現するんは『頑張ったのにオリンピック予選で落ちた時と、事故かなんかで死にかけてる時だけや』って言うてやろ? 覚えてるか?」

「あんたほどや無いけど、それは覚えてるで……せやから?」

「オリンピック代表になれたら…その時は観念して俺の嫁はんになってくれ。」

「あ…アホっ! いきなり、なに言うてるんや? 冗談はやめときや…」

「俺は、いたって真面目や。」

「あ、アホっ……これって、直球ど真ん中のプロポーズやないか?」

「うん、せやで。」

「せやで…って、高校の卒業もこれからや言うてるのに…アホ…な事を…」

「卒業はまだでも、その先は決まってるやないか。後は結果が付いてくるかどうかやろ? お前が『うん』って言うてくれるのと言うてくれへんのとでは、俺の気合の入り方が違うてくる…それは分かるやろ?」

「そんなん、うちには関係…在るやろなぁ……あんたの場合…」

「なっ…と云う事は、道が決まった以上、勝負は始まってるんや…嘘でもええから『うん、わかった』と言うてくれ。」

「……道が決まった以上…勝負は始まってる…説得力は在るやないか。」「いやいや、そうは言うてもこればっかりは…」


「せやから、嘘でもええからって言うてるやないか。」

「なぁ、嘘でもええから…って、嘘やないやろなぁ?」

「嘘や無い…たのむわ。」

「オリンピック代表やな?」

「そうや。」

「モスクワって…もう決まってるんか?」

「そんなもん早ようから決まってるで、工事や準備に時間が掛かるやろ…その次もモスクワまでには決まるはずや。」

「代表になれた時だけやな?」

「そうやで…」

「落ちた時には…あきらめるんやな?」

「俺からは2度と言わへん。」

「そ、その時は…約束やから、愛情をもって慰めたるわ…」

「うん、その時は頼むわ。けど、お前が『うん』と言うてくれたら…落ちた時の心配なんか必要ない。」

「…それって、返事によっては…マサの嫁はんになるって事なんか?」

「そう云う事になるかも知れんなぁ。」

「…けど、嘘でも言うて欲しいんやろ?」

「嘘でも言うてくれ。」

「代表になれた時だけ……」

「早よ、言え!」

「うん、わかった。」「あっ、今のは…」

「しっかり聞いた。」

「せやから、今のは……」

「夕子がこう云う場面で、嘘を言うはずが無いのは判ってる…俺の人生で一番気合の入った4年間になることは間違い無い。」

「そうか……まぁ、せいぜい頑張ったら、ええんとちゃう?」

「もう、お前は俺の嫁はんや…」

「誰か…悪い夢やと……まぁ、夫婦漫才が無くなっただけでも、今日のところは良しとしとこか…」


 昭和51年、夕子と昌幸が18歳で迎えたバレンタインも間近な早春の出来事。
まさか4年後、オリンピック・モスクワ大会を日本がボイコットによる不参加を表明する事など知る由もない2人の物語『制服と割烹着(夕子と昌幸・青春篇)』はこうして始まります。
 2月に入ったばかりですが、昌幸は警察官、夕子は料理の専門学校へと、それぞれ採用や合格が決まっていた。夕子に誘われるままに名門府立高校へ進学した昌幸。大学受験に苦しむ友達をしり目に、明るい将来を信じて疑わない二人なのでした。

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イケズな夕子

昌幸のまっすぐなところが良くもあり、悪くもあり、ほろ苦い青春篇ね。
はたして、夕子の心は、どう動くのか。続きを楽しみにしています。

おっ! 始まりましたね。

ふたりに明るい将来が来ることはわたしも疑っておりません。

それなりの紆余曲折はあると思いますけど(^^;)

藤井美菜さん、有難うございます。

いつも御訪問有難うございます。

先の事を述べる訳にはいきませんが、子供の頃の話より笑える事は確実だと思います。 

夕子と昌幸の今後をどうか応援してやって下さい。宜しくお願い致します。

ポール・ブリッツさん、有難うございます。

コメントを頂き、本当に嬉しく思って居ります。

先の話は出来ないと言いつつも、悪い人なんか出て来ないコメディーとなれば、将来は明るいと想像はつきますが、ハチャメチャな夕子と昌幸の活躍を応援してやって下さい。

今後とも、宜しくお願い致します。

御目出度う御座います

明けましておめでとう御座います^^
続きが始まりましたね^^
読まさせて戴きます。
今年もガンガン書いていきましょう!

綺羅星さん、有難うございます。

あけましておめでとうございます。

こちらこそ、今年も宜しくお願い致します。

愈々佳境!

愈々佳境!
微笑みながら読ませて戴いています。

            ヒゲ爺

ひげ爺 良兵衛さん、有難うございます。

こちらこそ、いつも他に類の無いブログを楽しませて頂いて居ります。

夕子と昌幸、二人の活躍を今後とも応援してやって下さい…お願い致します。

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