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夕子、西成区花園町在住。  ― 最終話 ―

   「よっしゃ~夕子…用意はええか~?」                                                      「お前の事や~~もう、起きてるんは判ってる……周りは包囲されてる…早よう出てこい。」

「あのアホが…あのなぁ…なんぼなんでも早すぎるやろ……何を考えてるねん……アホっ…!ちょっと待っとき……。」
   「マサあんた…ゆうべ寝たんか…?」

 「8時間半…ばっちりや……7時に寝て、3時半に起きた。」  「着替えは枕元やろ…で、いま到着やないか…。」

   「…まぁ、入り……寒いわ…。」

「ちょっと早いかな~~とは…思うたんやけど……」                                                  「先生に…『明日は早いぞ、頑張って…起きて来い。』…って言われたもんやから……」                            「…晩御飯食べたら……牛になってもええつもりで寝たんや。」

 「牛になったら良かったのに…アホっ……みんなも、もうすぐ起きてくるやろ…しばらく、おとなしゅうしとき。」

 「そんな事言いながら…夕子もちゃんと着替えてるやないか…。」                                          「お前かて、おばちゃんも帰って来た事やし…嬉しいて早起きしたんやろ…?」                                       「ネタはあがってるんや…さっさと全てを白状したらどうや…楽になるで…。」  
        
 「また、しょうもない映画でも観よったな…?」                                                    「アホっ…嬉しいのは否定せえへんけど…うちには、マサがこれくらいに早起きして来る事は…元々、予想が出来てたんや…。」

   「…な…?…?……」

  「なんでやろ…?って…? 答えは、【マサやから】…に決まってるやろ…アホっ!」

  「なぁ、お前の場合、一年の最初のセリフも…最後のセリフも、『アホっ!』…と、ちゃうやろな…?」

   「…あんたに対しての限定やったら…そうかも知れへん。」

 「…今年の正月のことは…もう、忘れたけど………」                                                「お前の場合、『アホっ!』って云う単語が無かったら…ごっつい、文章が短かなると思うで…。」

  「アホっ! あんたさえ居て無かったら…『アホっ!』…と云う言葉自体がいらんのや…アホっ!」

 「…『アホっ!』で始まって…『アホっ!』で終わる…さすが夕子…見事や…けど、それはアカン………」                 「漫才が…出来へんようになるやないか…。」

  「…昌幸も見事や……これは、昌幸の言う方に軍配が上がったみたいやなぁ…夕子の負けや。」

   「お父ちゃん……勝手に、勝ち負けを決めんといてや~~~。」

    「…あっ先生、おはようございます。」

 「お父ちゃん、なんの勝ち負けやねん…? 『アホっ!』…についての事だけなんか…?」                         「…漫才の事やとしても…【夫婦漫才】の事まで踏み込んで来るんやったら…断固講義させてもらうで~~。」

 「…ん~~ 細かい事は、ちょっと置いとこか………」                                                 「とにかく、『アホっ!』が無い大阪なんか、考えられへんやないか……なぁ、昌幸…?」

  「…はい! もちろんです。」                                                                「使い過ぎる夕子がオカシイだけで…『アホっ!』は…大阪の文化です! いらんはずが無いですよね…⁈」

 (ボチボチ調子に乗ってきよったなぁ…)                                                        「うん、確かに…【アホのマサ】がおらんでも…無かったら困るわなぁ…使用頻度が変わるだけや…。」                  「そうなんや…『アホっ!』って単語は…【アホのマサ】の為だけに在るんとは違う… 漫才だけやのうて、日常生活にも必要なんや…!」

 「なぁ、夕子…【アホっ!】以外に、【アホのマサ】が…いつの間にか、しかも自然に出現してるように思うんやけど…気のせいか~?」

 「自然に出現した事が…不自然やと気が付いたわけやろ…?」                                           「その少しの進歩を…【気のせい】にせんと…大事にしたらどうや…?」

  「お前ら…なんにも考えんと、一直線に夫婦漫才を目指したらどうや…?…」


 「みんな早起きやねぇ……えらい盛り上がって……私は、お父さんを加えた【トリオ】がええように思えますけど…?」

   「あっ、おばちゃんも…お早うございます。」

  「はい…昌幸くんも、夕子もおはよう……今日は頑張ってもらわんとあかんよ。」

   「はい、わかってます。」 「そうか…【トリオ】も、ええですか…?」

 「お母ちゃんまで、いらん事言うたら…益々ややこしぃなるやんか……とにかく今日は…まかせといて…頑張るわ。」


   「よっしゃ~! 簡単やけど、おにぎりで腹ごしらえも済んだし…ぼちぼち掛かろか…。」

 「うん、まだ暗いうちやけど…気合い入れていくで~~マサは…?」 「漫才も…【トリオ】の事も思い出したらアカンで!」

 「あほ…思い出すやないか……」                                                            「心配いらん…気合は、十分すぎるくらいや…。」 「…なにより俺が居らんと…話に無らんやろ。」

   「…それも予想通りや……。」


「よ~頑張った……おせちの方も順調そうやし、これで正月の準備は整うたな…昌幸も流石にちょっと疲れたやろ…?」

  「はい…いえ、ちょうどええトレーニングになりました。」

 「無理すんな…仕上げは手伝うたけど、藤川家の2臼は…自分でついたやないか…。」                              「多少はふらついとったけど、大したもんや。」

「ほんまや…マサが、『やらして下さい』って、言うた時は無理やと思うたけど…やっぱり、さすがは男の子やと見直したわ。」    「マサ…カッコ良かった……あっ、勘違いしたらアカンで…思うたんは、ほんのちょっと…ほんの一瞬だけやからな、一瞬…わかってるやろ…?」

「なんか言う前に、そんだけ言われたら…ホメられてるとは思いながらも…なんぼ俺でも、素直には喜ばれへんやないか…。」

 「昌幸、お前のとりえや…素直に喜んだらええ…『俺がついたんやぞ』って、胸を張って持って帰ったらええんや。」

 「はい、そうします。 先生、有難うございました。」                                                    「とりあえず、今日はつきたてを、いくつか持って帰ります……残りはまた…。」

  「うん、そうしたらええ。 残りは冷えて形が落ち着いたら、明日にでも…俺が届けたる。」

  「えっ…はい、お願いします。 今日はこれで一旦…失礼します…。」

   「一旦、うん…いつでも来たらええ……夕子も待ってるわ…たぶん…。」

   「うちは別に待ってへんで……来るなとは言わんけど…。」

    「…有難うございました……また来ます。」



  「さて、昼からは…久しぶりに3人で出かけるか…?」 「…あぁ…昌幸が来るんやったか…?…。」

  「ほんま…? 賛成や、さんせ~~。」                                                        「マサの事なんか…この際ど~でもええ…帰ってから、【ボール投げて…取ってこさせる遊び】にでも付き合うたるから…。」   「なぁ、どこに行く…? お母ちゃんが戻るまで置いといた動物園か? 瓢箪池でボートもか…?」

 「もう、また夕子の悪い癖やで…慌てたらアカン。」                                                  「それに、あんたら2人…どんな事して遊んでますんや…冗談やとは解ってますけど……な、なんにしても…私は、あんたらとは違うて、こんな季節にボートなんか乗ったら…風邪ひいてしまいますわ…。」

 「お前が風邪ひいた記憶も…俺には無いけどな……。」                                              「まぁ、動物園とボートは春休みに置いといて……夕子、俺が出かけよかって言うのは…年末年始の買い物や。」           「餅とおせち以外にも必要なモンがあるやろ…? 正月は5,6日ぐらいからしか店も開かんしなぁ…。」

 「そうか……とにかく、うちは…3人で出かけられたら、行くとこなんか何処でもええねん……」                         「せやけど、なぁデパートか?…難波?…天王寺…?」

   「せやから、慌てなさんなって……。」

    「…ごめん 嬉しすぎて…。」

 「天王寺やな。」 「行きは地下鉄…帰りはぶらぶらと歩いて帰ろやないか……串カツでも食べて…どうや…?」

    「やった~~~!」

   「決まりましたなぁ…。」



   「わ~っ、何処に行ってもすごい人やなぁ…。」

   「せやなぁ、 さすが、年末って感じや。」

  「普段から、人出の多いところですよって…尚更ですわ…。」 「ちょ…ちょっと、お父さん……?」

    「……⁉……」
 
  「…ちょっと、あんた…って……。」


  「ご家族でお買いものですか…?」

 「はい、カミさんと娘の夕子です……年内は御世話に成りました……また来年も、ご贔屓にお願いします。」

 「奥さんも戻りはって……ちょっと羨ましいですけど、良かったですわ…。」 (…ほんまに羨ましいわ……)

  「はぁ…なんもかんも、上手い事治まって…ほんま良かったです…。」

 「責任感じてましたから…正直、ホっとしました……ほんま良かったと思うてます。」                              「一言、奥さんと娘さんに挨拶してもよろしいやろか…?」

  「…はぁ、それは勿論……洋子、琴美さんや…… 一言挨拶を……。」

 「琴美です……今更やとは思いますけど、御主人には助けてもらいまして……。」                                 「お陰で奥さんや、娘さんにまで迷惑かけてしもうて………」

  「…いえ……こちらこそ、贔屓にして頂いて…今後とも、宜しくお願い致します。」

「はい、それは…先生ってほんま型物やから…最初の1回だけで、後は指圧以外…何にもしてくれませんでした…。」        「あくまでも仕事やからって……あんな事、他の男の人には無理ですわ…ホントに感謝してますねん。」                           「……それでは失礼いたします…。」

   「……⁉……はい、失礼いたします…。」

   「こ、琴美さん…そ、そんな………」

  「はい…先生も、娘さんも…失礼いたします……良いお年を……。」

   「…こと……」 「…いや……よう………」

     「…あんた~~!」

  「ち…ちがうで~~ うそやで~~ 今のは、全部うそやで~~ 何かの間違い…勘違い………」

 「なんの間違いでも…うそでも……勘違い…? そんなもん…知らんわ~! 取りあえず一発かまさんと……。」

   「あっ、お母ちゃん…アカン………」

    「…ち、違うって………」

  「やかましい!」  「いっぺん、生まれ変わってこ~~~い!」

   「うわ~~カバンの角…まともや………。」

    「…うっ…う~~~~っ……。」

( 夕子…心の声 )  ( 良かった~! お父ちゃんは、ほんまに痛そうやけど……二人とも笑うてる…大丈夫や…!)                  ( これで…ほんまに、なんもかんも片付いた気がする… マサ~帰ったら遊んだる…待っときや~~ )


   (…ちょっと意地悪が過ぎたやろか…)
                    ( 琴美 )


                              ― 完 ―
 
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コメント

お疲れ様でした。面白かったです(^^)

琴美はんもまたきついことを……(^^)

ポール・ブリッツさん、本当に有難うございます。

ポール・ブリッツさん、本当に有難うございます。

今後は、年明けから、続編 『制服と割烹着 (夕子と昌幸 青春篇)』を連載予定です。

良ければ、引き続き応援をお願い致します。

大変面白かったです!

はじめまして。
ずっと拝見していました。
話のテンポといい、内容といい楽しく拝見できました。
私は昭和40年生まれなので、とても懐かしい雰囲気にいつも笑みがこぼれていました。
残念ながら私の育ったのは埼玉の、巨大な新興団地だったので、大分雰囲気は違いましたが。
でも、人情のあふれる光景はあまり変わらなかったと思います。

毎回ずっと楽しみにしていました。
続編が楽しみで仕方ありません。
ありがとうございました!

ヒデ王さん、本当に有難うございます。

年明けからの続編 『制服と割烹着 (夕子と昌幸 青春篇)』も応援して下さい。

実は、これが本編なのです。子供の時代を先に描く事でよけいな部分を省いて書きました。

ですから、続編だけを読んでも楽しめるとは思いますが、夕子、西成区・・・を読んで頂いた方には何倍も楽しんで頂けると思っています。今後とも、宜しくお願い致します。

ひと区切り、ですかね^^

会話だけで話を進めていくのって凄いですよね。
しかもとても自然で
楽しく読ませて頂きました♪

昌幸の真っ直ぐさと
女の子の方が少し早く迎えるであろう思春期に
夕子の気持ちが少しずつ変化していくのを
とても微笑ましく思いました^^

引き続き、これから先のお話も読ませて頂きますね♪
凄く楽しみです。

最終話まで有難うございました。

> ひと区切り、ですかね^^
>
> 会話だけで話を進めていくのって凄いですよね。
> しかもとても自然で
> 楽しく読ませて頂きました♪
>
> 昌幸の真っ直ぐさと
> 女の子の方が少し早く迎えるであろう思春期に
> 夕子の気持ちが少しずつ変化していくのを
> とても微笑ましく思いました^^
>
> 引き続き、これから先のお話も読ませて頂きますね♪
> 凄く楽しみです。


最終話まで、有難うございました。
続編は矢印型のシッポを持つ夕子が成長し、高校卒業からの4年間の話です。
成長した夕子と昌幸の掛け合いを是非、楽しんで下さい。


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