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夕子、西成区花園町在住。 第49話   (マサ~いくで…遠足 前編)

  「おはようございます。」  「……マサ~いくで~~起きてるか~?…」

  「ちょ…ちょっと待ってくれ~ すぐに行く~~  ………。」

   「…… …あ~あぁ……遠足かぁ~~ ……」

「マサ、あんたの得意分野やろ…?」                                                           「当日になって何言うてるんや…昨日までなんにも言うて無かったくせに…なんや、えらい厭そうやないか…?」

 「…別にそんなに厭な訳でもないんやけど…なんて言うんか…もうひとつ……。」

 「もうひとつ…なにが必要やねん? …なにが足らんって言うんや? …どっちにしても早よしぃ…いくで。」

    「……うん、行こ…。」

「運動会ほど燃えるはずが無いのは判るけど…ほんまに…どないしたんや…?」                              「ゆうべワクワクして寝られへんかったとか…折角の遠足やのに、腹の調子が悪いとか…ど~せ、そんなとこやろ…?」

  「う~~っ…さすが夕子と言うたらええのか……半分は当たりや…う~虫歯や……。」

    「…むしば…?」

  「歯が痛いんや…虫歯や……虫歯が…痛い…ねん…。」

   「そんなん、急になったんかいな…?」

「ゆうべ、遠足のおやつに…手を出してしもうたんやけど………。」                                       「…グ…グリコや…… 奥歯のつめてるやつが取れて… ツ~ンと来たら最後…治まれへん…。」

  「…ほんで、痛い上に寝られへんかったんか…?」

 「俺の……俺の心臓は、今…ここに在る…最悪や…仏滅なんや…。」

 「運動会では左手…外に曲がっても辛抱したくせに、虫歯くらいで…どないしたんや…。」

 「虫歯ぐらい…? …痛さの種類が…違う… ぜんぜん違う…。」

  「…『う~遠足か~~』…って言うぐらいやったら、我慢せんと…休んで歯医者に行ったらどうやねん…?」

 「そ…それはあかん。 おれの信条に反する…夕子が女のくせに、人形遊びなんか絶対せえへんのと同じや。」

 「なに訳の解からん事言うてるねん…たしかに、ままごとも人形も嫌いやけど…。」

「せやろ…俺は、幼稚園から今まで休んだ事なんかあらへん。」                                         「一年の時、体中にブツブツが出来て、厭や言うてるのに…無理やり先生に帰らされた時だけや。」

  「…うちが染した水疱瘡やな……そら、帰らされて当たり前やないか。」

「何が在っても休んだりせえへんのが俺の信条なんや。」 「それに水疱瘡なんか、虫歯とは比べもんにならへん。」         「そして、なによりもや…医者は医者でも、歯医者は仮面を被った悪魔や…と…俺は思うてる…。」                    「…思うてると言えば…お前にはえらい目にあわされてきたなぁ~水疱瘡に続いて…これも夕子の呪いとちゃうやろな…?」

   「アホ! …虫歯忘れるぐらい、他に痛いとこ作ったろか!」

「…ちょっと作ってもらおかな~って、思うぐらい痛いんや…。」                                          「おい…ほ、ほんまにしたらあかんで…おまえ今、ちょっと…用意せんへんかったか…?」

  「ええかげんにしいや! そんだけしょ~もない事言えるくせに…元気と違うんのんか…?」

「こんな事でも、言うてたら気がまぎれるねん…ほんまに痛さの種類が違うんや。」                              「今日一日付き合うてくれ…そうしてくれたら、夕子が望むんやったら…ままごとでも、人形遊びでも付き合うたる。」

  「マサ、あんたほんまに調子悪いんか…?…段々調子に乗って来てるやないか。」

   「えっ、調子に乗ったらあかん…怒られるんやろ…?」

    「…なんにも怒ってへんやんか。」

  「ほんなら、調子やのうて…波に乗ってるって言うてくれんと……。」

「……ん? 調子がええ…か… あんたほんまに…まあええわ…。」                                      「それより、うちとマサはクラスが違うんやから…別行動やないか。」

「そこや~~でも…集合と移動の時だけやろ…電車も車両は一緒のはずやし、昼の自由時間も問題あらえへんはずや。」

「あのなぁ、約束してる訳や無いけど……。」                                                      「遠足の時なんかは、まゆみちゃんや恵子ちゃんと、お昼は一緒に食べるって決まってるんや。」

   「今日だけは特別や、…俺もまぜてくれ…たのむわ~~。」

   「うちはかまへんけど…マサかて友達ぎょうさん居てるやないか…。」

   「アホっ、今日の俺は…機嫌が悪いに決まってるやろ…。」

  「…わかった。 まゆみちゃんと恵子ちゃんにはうちから頼んどく……あんたの友達がかわいそうや。」

   「…別に喧嘩なんかする気は、無いんやけどな…。」

 「せやから、わかってるって…あんたが機嫌悪いだけで…周りは迷惑なんや。」

   「お前に言われるんだけは…ちょっと…厭やけどな…。」

     「……んっ?!…なんか言うたか!…」

     「……よろしくお願いします…。」

                            遠足 後編へ続く・・・
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