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夕子、西成区、花園町在住。 第38・39話    (もしもし青田整骨院…)

 「もしもし、青田整骨・・・」

「あっ、サブ…いえ、先生…春駒です。あした、私と紫ちゃんとお願いできますやろか?」

「え~っと、いや、あしたは午前中からお年寄りの予約が続いてて悪いんやけど・・・」

「なんやのん、またそんな事言うて、午前中は優先してって先生言うてたやんか。もう10日以上も空いてますのに。」

「いや~、ほんま、すいません。」

「ほんなら、いつやったらよろしいの?」

「いや~…今週はもう・・・」

「え~っ・・・私らも忙しいて、疲れがほんまに溜まってますのに。」

「あっ、それやったら、朝は予約が入ってますけど、明日の昼からやったらどうです?」

「昼からでもええんですか?」

「いや、だから、普通の指圧だけになりますけども、それでよければ。」

「えっ・・・そうですか・・・まぁ、仕方ないですわ。昼からやと、2時か、2時半でお願い出来ますか?」

「はい、2時からやったら、ふたり続けてで構いませんけど。」

「紫ちゃんは残念がると思うけど、とりあえず、それでお願いしときますわ。」

「はい、判りました。ほな、あした。お待ちしてます。」「・・・やれやれ・・・」


 「春駒姉さん、確かに疲れがたまってるようですけど、相変わらず忙しいんですなぁ。」

「無茶苦茶ですわ・・・それでも私なんかより、そこの紫ちゃんや琴美ちゃんなんかもっとやと思いますど・・・そこは、ちょっときついですわ。弱くして・・・ふぅ~・・・なぁ先生、私でもまだまだ女盛りやと思てますけど、紫ちゃんや琴美ちゃんのような若い子には出来る事なら普通の恋愛して、普通の男さんと所帯を持って欲しいと思いませんか?」

「もちろん、思いますわ。春駒姉さんかて、まだまだ捨てたもんや無いですやんか。」

「アホっ。解かってるくせに・・・出来る事ならですわ…出来へんから言うてますねん。」

「・・・はぁ・・・」

「疲れた体はこうやって指圧も出来ますけど、ボロボロの気持ちには何の手立てもありませんのやで・・・先生のような人が必要ですねん。誰にでも頼める事や在りませんやろ?。何回か指圧に通ううちに、先生、ええ男やよってに・・・こんな男さんに、と思うたのが最初やった。こうやって先生の手を・・・」

「あっ、春ちゃんそこは・・・」

「ふっ、その時もそう言わはった・・・けど商売としてお願いしたら、お金が欲しかったんや無い事は解かってます・・・でも、それ以上の事はなんにも聞かんと、お願いに答えてくれましたやろ・・・嬉しかった・・・。」

「・・・春駒姉さん、俺は、あくまで仕事と割り切って・・・役に立てるのやったらと思うて・・・。」

「そう云う人や、先生は・・・。それで、今は先生ですけど、警官やった頃のサブちゃんは知ってる子も多いし、男前やったのも覚えてるから、仲の良い子の中で、同じような思いを持ってる子を誘っては連れて来るようになりましたんや。あっという間に口コミで広まってしまいましたけど。」

「姉さんには感謝してます。」

「嘘をついたらあきません、奥さんが出て行ったんもこれが原因に決まってますやんか。」

「・・・それは・・・」

「子供さんかて、女の子やしなぁ・・・実は申し訳ないとは思ってました。思ってましたけど、私らには、唯一とは言いませんけど、楽しみやったり、心の支えでも在ったもんでよってなぁ。せやけど、今日で良く判りました。だいたい私には、これからは電話で予約制にすると聞いた時から、家族の事も考えてやろうけど、薄々気が付いてましたんや。」

「はぁ、有難うございます。」

「ここでお礼は可笑しいですやろ。」

「はぁ、すんません。」

「もう、謝る事もありませんがな。」「これからは、私は、残念ですけどよろしいわ、普通の客に戻ります。私から始めた責任も感じてますしなぁ。だから新しい人も誘いません。せやけど、この後の紫ちゃんにも、その他の人にも、急には無理でも、自分でなんとかして下さいね。多かれ少なかれ、みんな先生に惚れてますのやから・・・特に琴美ちゃんはそこそこ本気やと思います。身寄りの無い子やし、徐々に…旨い事、考えて挙げてくださいね。奥さんには早く帰って来て欲しいと思いますけど。」

「・・・はい、気をつけてやらせてもらいます・・・時間はかかるかも知れませんけど・・・」

「タイミングも悪かったんやね・・・」

「はぁ、カミさんに出ていかれて、これは何とかせんとマズイと思うてた時と、亭主のふりをして欲しいと頼まれたんが重なって・・・タイミングが良かったのか、悪すぎたのか・・・また、その旦那さんがカミさんの店のお客さんで・・・」

「女将さんの耳にも入ってしまいましたんやろ・・・それでは、奥さんかて、帰るどころか、悩みの種が増えたようなもんですやん。」

「とにかく、琴美ちゃんの方の話が本当やって事にと・・・カミさんには後で謝ったら済むやろうと、その時は思いましてん。」

「ところが、そう…うまい事はいきませんわなぁ・・」

「・・・ところが、カミさんんにはお見通しやったみたいで、話を聞いただけで、俺の対応が読めたらしいですわ。」

「それやったらなんで・・・どっちにしても賢い奥さんですなぁ。」

「そうですねん。せやから、琴美さんの事については、あんまり怒られてません。けど、元々のコレが誤解されてしまってるのと、これからの琴美ちゃんへの対応が問題やと思うてるんですわ。」

「それやったら心配なんかいりませんで。琴美ちゃんかて、本気で先生と所帯が持てると思うてる訳が無いのやから。淡い期待ぐらいは在ったかも知れませんけど・・・」「後は奥さんに、何にも無かったとほんまの事を信じてもらうだけの事ですやんか。」

「それが難しいのですわ。それと、琴美ちゃん、本気でカミさんと別れて一緒になれると思い込んでるような感じが・・・出て行ったんもカミさんの方からやし・・・。」

「それこそ琴美ちゃんの淡い期待の現れですわ。私の口から言うのはおかしいですけど、決して本気や在りません。タイミングが良過ぎて、自分のために奥さんが出て行ったと思いたい気持ちは・・・解かりますやろ?・・・なによりも、あれこれ聞きもせんと、頼みを聞いてくれる先生が頼りになって、嬉しかっただけの事ですわ。」「私もそうやけど、これだけの苦労をしてきた人間には、誰が味方で、誰が敵なのかが直感で判りますねん。それと期待とが重なった結果がこれやと思ってやって下さい。」

「そんなもんですか・・・。」

「はい。私ら、法律が変わって自由に成りましたんや・・・だから、世間の中には、好きでこの仕事を選んだと思ってる人もいてますやろ・・・でも、一度こんな仕事に身を沈めると誰かの助けが無いと、自分一人では抜け出せません。私やったら、琴美ちゃんの話、断ったりして無いかも知れません・・・琴美ちゃんの場合は、自分に嘘をついてまで・・・って考えて、先生に思いを重ねたんやないですか。」

「そんなもんですか・・・」

「そんなもんです。」

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