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夕子、西成区、花園町在住。 第35・36話     (夕子、悪行の数々…)

 「夏休み、運動会と終わってしもうたからな、次は冬休みと正月へまっしぐらや。どんな障害にも負けへんで。」

「アホ、どんな障害が在るって言うねん。」

「昔から、『もう、いくつ寝ると』って言う言葉が在るやろ。嬉しい事はやって来るまでに、時間もかかるけど、幾多の困難を乗り越えんとあかんのや。」

「・・・マサの言う事、最近、無理が目立ち過ぎやで。」

「少なくとも、俺はそう解釈してるんや。なっ、暇やと時間がたたんやろ・・・」

「ようするに、暇で退屈してるって事や・・・うちなぁ、退屈したら、猫の髭切りを思い出すねん・・・あんなおもろい遊び、ほかには在りえへんもんなぁ・・・長いこと、して無いわ。」

「お前あの頃、きんちゃく袋、いつも持ち歩いとったもんな。近所の猫、夕子を見たら逃げ出しとったで。もう、髭のある猫が居て無いようになってやめたんやろ?」

「アホ、違うわ。猫って、髭が在るから、狭いとこでも通れるか通られへんかが判るんやって、おばあちゃんが教えてくれたからや。猫って髭が無いと、不安になって、ごっつい困るらしいわ。」

「お前、かわいそうな事、しとってんな。」

「言わんといて。それに気付いたからやめたんや、もう二度とせえへん・・・けど、あんなおもろい遊びは、ほかに無いのも事実や・・・きんちゃく袋から頭を出した瞬間、このタイミングが命やねん。紐をキュッと絞めるやろ、あとは・・・」

「手も足も出えへん猫の髭を切るわけやろ。せやから、悪魔でも思いつけへんようなって言うんや。お前、ほんまは、矢印型のしっぽ、生えてるんとちゃうか?」

「生えてへん!。けど、矢印型のしっぽはおもしろいわ、マサにしたら久々のヒットやで。」

「せめて、ツーベースにしてくれへんか。」

「マサ、ど~したん?…今日、絶好調やん。」

「へっへ~、調子に乗ってるやろ?」

「波に乗ってるや!…調子に乗ったらあかんやろ、アホっ・・・だいたい誰のせいで、幼稚園辞めさせられたと思うてるねん。」

「えっ、それは・・・俺も悪いとは思うけど、自業自得というか・・・普段からのやな・・・おこないが・・・」

「あのなぁ、普段からヤンチャやったんは認めるけど、最後の実行犯はマサ、あんたやで。マサが幼稚園の池の鯉を捕まえて、まさみ先生にプレゼントしたいけど、手掴みでは無理やねん言うて、ずぶ濡れになって来たから、うちは、『それやったら、池の栓を抜いたらええやん』って言うただけやんか。」

「・・・池の栓抜くなんて、誰に教えてもろたんやって聞かれたから・・・夕子ちゃんにって・・・素直に答えただけやん。それに、あんな怖いあさみ先生、初めて見たし・・。」

「アホっ、完全に協同犯にされてしもうたやんか。せやのに、園長先生まで家に来て、もう来させないで下さいってやなぁ・・・なんで、うちだけやねん?。二人一緒やったらまだ解かるけど・・・。」

「そこが、俺と夕子の普段からのおこないの違いや。外でボール遊びやって、一旦根性に火が付いたら、誰がど~言うたって中へは入らへんし、歌も好きな歌しか歌わへんし、ウサギ小屋に爆竹は放り込むし、そこら中にビー玉の穴掘るから、みんな、つまづいて怪我はするし・・・言いだしたらきりが無いやんか。それにやで、持って来たらあかんって言われてるベーゴマ詰め込んで、何回もポケットに穴を空けるような奴、男でも珍しいで。また、あんだけ膨らんでたら、そら見つかるわ~、しょっちゅう怒られてたやないか・・・ふ~っ、息すんの忘れとった。」

「あんた、次から次へと・・・しょうもない事、よう覚えてるなぁ。」

「そんなん、まだまだ在るで、だいたい最後の池だけでも色々あるやん。寒い日に、『池に氷が張りましたけど、絶対に乗ったらいけません。』って先生が言うた5分後にはハマってたやんけ。」

「あっ、あれはアカン。あんな事言うたら、乗りなさいって・・・うちには聞こえてしまうんや・・・」

「・・・まぁ、あれは俺もそう聞こえたわ・・・お前が早すぎただけで、十分後には俺がハマってたと思うけど・・・ちがう、ちがう・・・お前、いろんなモン捕まえてきては、池に放してたやろ・・・カメ、カエル、この辺まではまだ良かったんやけど、ザリガニや、ザリガニ・・・大漁や言うて、百匹以上は放り込んだやろ・・・腐ってしもうて、幼稚園の外まで臭かったやないか。」

「・・・あれか~あれなぁ・・・いつもやったら、どっちかは優しくしてくれるはずやのに、あの時はだけは、さすがにお父ちゃん、お母ちゃん両方から無茶苦茶に怒られたわ・・・たぶん、今までで一番やった・・・」

「その後、全滅した池を綺麗にして、鯉まで飼うてたのに、あれをやってしもうたんや。」

「うちかて、池には懲りてるから、手伝う気も無かったんやで・・・ずぶ濡れのマサ見てたら、ふと思いついてしまったんやけど、あんたも素直に実行せんでもええのに・・・」

「素直なんが俺のトリエやから、夕子の名前まで、素直に言うてしまったんや。」

「・・・そうか・・もうええ。解かったわ。考えてみたら、うち、結構ひどい事してたんやなぁ。」

「そんな謙遜せんでも、結構どころか、ごっついひどい事いっぱいやって来てるで、俺が証人や、心配いらん。」

「なにが謙遜やねん。なにが心配いらんねん。・・・いつか、マサがおる事自体、うちの心配になる時が来そうな気がする。」

「その時は、俺が嫁はんにもろたる。それも心配いらん。」

「今のうちに、将来の不安を取り除くって事も大切やと思わへんか・・・?」

「そろそろ、ひどい事をする事自体、やめるべきではないかと、僕は思うんですけど・・・。」

「アホっ。このタイミングでそんな風に言われたら・・・まぁ、今日のところは、そう云う事にしといたるわ。」

「よかった~。やっと、いままでの悪行の数々を悔いて真人間に生まれ変わる時が来たようやな。」

「・・・もう、怒る気にもならんけど、ええかげんにしときや。だいたい本気でビビってるんでも無いくせに、ちょくちょくビビってるような事言うのもやめとき。人が聞いたら本気にするやんか。」

「半分以上は本気やで。喧嘩も夕子とは6回やって5敗1分け、謝ってるのに一方的なボコボコがプラス1回なんや。」

「アホな事言いな。それに、一方的なボコボコってなんやねん。」

「喧嘩は、何回やっても負けてるんやけど、1回だけ引き分けが在るんや。ただ、あの時・・・あの蠅たたきが無かったら、やっぱり負けてたんやと思う・・・それを卑怯モンとか言うて、謝ってるのに後でボコボコにしたやないか。」

「あんた、しょうもない事は、ほんまによう覚えてるなぁ~。うちも思い出したわ、あれはほんまに痛かったんや。マサの前では泣けへんかったけど、家に帰って鏡みたら、うちのほっぺた網目になってたんやで。」

「それは悪かったと思うてる、けど次の日、おんなじ目にあわせたる言うて・・・お前のんは2日で消えたけど、俺は左右両方、3日間消えへんかったやないか。」

「・・・それも思い出した、ゴメン・・・けど、ほんまによう覚えてるなぁ・・・それだけ痛かったって事やろな、マサ、ほんまにゴメンやで。」

「実は、いまでもその蠅たたきが残ってるんや。その蠅たたきを見る度に俺の両ほほが・・・痛い痛いとうめき声を・・・夕子、お前はほんまに罪な女や。どうせ、嫁には行かれへんやろうから俺が・・・」

「アホっ!。それを、調子に乗ってるって言うんや!。」

「・・・波に乗りたいです。」
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