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夕子、西成区花園町在住。 第34話    (今日も夕子来てたん…)

     「今日も夕子、来てたんやろ…?」

  「えっ、サブちゃん会うてませんのか?  それに、こんな中途半端な時間に来て…。」

 「うん、夕子が帰るまでに出かけて、飲み友達と一杯飲んでたからな………。」                              「…満席やったら遠慮しょと思うたけど、このくらいやったら勘弁してや…… おふくろが起きてる間に帰るようにしてるんや…。」  「せやないと、今は鍵…持ってへんしなぁ……。」

   「それは良ろしいけど、まだ…いろんな話は出来ませんで…。」

  「それも解かってる。 それに、話の先は見えてるんやろ… 俺もちょっとは、気が楽になったわ。」

  「図に乗って、甘えたらあきまへんで…… はい、とりあえずビールと土手焼き。」

    「おっ、有難う。 …どうや、お前も飲まへんか…?」

  「…今日は結構、飲んでますんやで… でもまぁ、一杯は付き合いますわ…。」

  「ほんまや、ほとんど食べるもんは残ってないわ。 忙しかったんやなぁ…。」

 「まぁ、あした休みや云うのも在りますけど…適当に盛り付けときます。 あっ、せや紅鮭焼いたげるわ。」

  「うん、有難う。 なんでもええ…在るもん片づけるで。」

 「はいっ、シャケはもうちょっと待ってや。 中田さんらも、これ残りもんで悪いですけど…食べて下さい。」

 「ああママ、いつもスマンなぁ… そうなったら、ビールもう一本貰わんとな… マー坊はど~する?…熱カン付けてもらうか…。」

   「いや、冷でええわ。 ママ~冷で一杯。」

 「はい、ビールと冷とね…これでお勘定で宜しいやろ。 暖簾はしまいますけど、あとはノンビリしていって下さいね。」        「はいな、サブちゃんシャケ焼けましたで。 まだこんな時間やのに…今日は、もう…な~んにも残ってませんわ。」

  「俺も、もう一本もらうわ。 あとで、片づけもん手伝うし、お前も一息ついたらどうや。」

 「助かりました。 片づけどころか掃除までさせてしもうて。 土曜日やからよけいに助かりましたわ。」                 「どうします、もう一本空けましょか…? そろそろ…お義母さん寝る時間やと思いますけど……。」

   「そやなぁ、二人で一本飲んでくれるか? …それで帰るわ。」

     「よろしいなぁ…はい、どうぞ。」

    「うん…おっと、俺にも注がせてくれるか……まぁ、お疲れさん。」

  「…サブちゃん、琴美さんの話ですけど、私の予想通り…亭主のふりをして欲しいと言われましたんやろ…?」

 「その通りや。 亭主がいてると何回言うても、信じてもらえんから言うて…頼まれたんや………。」                   「中井さんやったかなぁ…ええお客さんやったのに、気に入られ過ぎて…突然、『仕事辞めてワシの嫁はんに…』ってなぁ……。」  「…後は洋子、お前の…言う通りの展開や…。」

  「なんて言うか…よくある話では無いけど… まぁ読みやすい展開やったからねぇ。」

 「飛田みたいな処では、ちょくちょく起きる事らしい… たしかに十年前やったら、亭主がいてるなんて…在りえん話や…。」     「けど、買春禁止法が出来て、時代も変わった… とは言うても、やっぱり亭主が…籍の入った亭主がいてる女なんか、まずおらんやろ…ただ、一番大きな違いは、辞めたかったら、辞められるようになった事や…出来る事なら…そら、辞めたいやろ…。」

    「あんたの言いたい事も…想像はつきますわ…。」

 「マッサージに来てるうちに、この話を聞いたんやけど、俺なぁ、最初のうちは、悪い話と違うやないか…って言うてたんや。」   「そら、親子以上に歳も離れてるし、好みのタイプでも無いかもしれん。 それでもこんな商売、いつまでも続けてられへんしなぁ…」

    「琴美さんの人生は、琴美さんのもんですから……。」

  「そう云う事らしい………。」                                                             「ええお客さんとは云え、それは仕事やからで…仕事でなかったら絶対厭や…って相手とは、やっぱり一緒にはなられへん…。」   「なにより…『自分が言うのもおかしいけど、こう云う処に出入りする人は信用出来へん。』…とも言うてたわ……。」              「……なるほど、女心なんやろなぁ……。」

 「女ごころ、ですか…男の人かてそうですやろ。 私は、人として当たり前の事やと思いますわ…。」                   「なにより、因果な商売ですなぁ…… 女やったら、一番やりとう無い仕事ですやろに…女の私にはよく判ります…。」

 「戦争で父親を… 伊勢湾台風で、残った家族を失くしてしもうたらしい………。」                             「それで、頼れる親戚も居て無いんで、転々としながら…此処へ流れてきたそうや…。 」                           「同じような理由や、境遇の子が…たくさん居てるとも聞かされたわ………。」

 「すごい被害が出ましたもんねぇ…… 私らには、同じ台風でも、その後の第2室戸の方が怖かったですけど……。」         「なんにせよ、そんな話を聞かされてから頼まれたら… サブちゃん…あんたには断る事なんて…出来んかったんやろね…。」

   「せやねん。  …例のマッサージと一緒や…。」

    「アホ!、それとこの話を一緒にせんとき!」

  「うわっ…急に怒って大きな声を出さんといてくれ…本気でビビるやないか。」

 「マッサージの事なんかは、無かった話やったとして…おまけに、私が出ていった事も無かったんやとしても……。」        「琴美さんの旦那さんのふりをしてあげたらよろしいやんか…… これに対しては、私は怒ったりしませんで…。」

    「洋子…お前やったらそうやろな…。」

 「あの胡散臭いマッサージだけは…あれだけは…どない考えても仕事やと言いながら………。」                     「アホっ!…… 思い出したら腹が立ってきたわ…!」

   「あの~~…では、そろそろ、母が待ってますので…ご馳走さま、お休みなさい…。」

     「…この、あほんだらが……。」
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