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夕子、西成区花園町在住。 第33話  (おっちゃん軍団いらっしゃい…)

 空襲で焼け残った数少ない地域…戦前から続く料理屋…と言えば聞こえはイイが、いわゆる…何処にでもある食堂造りだ…L字のカウンターと四人掛けのテーブルが下町情緒を駆り立てる。  
 そんなお店を昼は…どちらかと言えば食堂、夜には…どちらかと言えば居酒屋として一人で切り盛りする夕子の母親【洋子】…店名もそのままに…今宵も忙しい時間となりまして… そうそう…今夜は土曜日、洋子一人じゃない…若女将の出勤日………。

  「…森川さん、藤島さん、山本さん、北村さん…公務員のおっちゃん軍団いらっしゃい。」

   「なんか、ややこしいて疲れる挨拶やわ… いつも通りに戻してくれるか…。」

   「せやろ~? うちもそう思うし…まぁ、その日の気分で……。」

 「いやいや、俺は一人ずつ順番に…顔を観ながら名前呼んでもらえて嬉しかったで…。」                           「座りかたによって、呼ぶ順番も替わるって事や。」

 「まぁ、人それぞれやろ。 俺は短い方が好きやけど、若女将の気分で決めてくれたらええ。」                       「それより、まずは土手焼きで一杯や。」

   「まずは……せやな…。」

     「はい、お疲れ~~」

 「なぁ、森川のおっちゃんって、ゆうべも来てくれてたやん。 お店的には、毎度おおきに~なんやけど……。」

 「なんや、気ぃつこうてくれてんのかいな。 そんなん、自慢やないけどおとといもや… しかも嫁はん連れで。」            「うちは二人だけやから…週に1、2回は晩ごはん自体をここで済ますねん。」                                 「それに俺の場合…地下鉄降りて歩いてるうちに、気が付いたら…ここに座ってる事まであるわ。」

    「森川さん、それ、もう病気ですやん。」

  「病気って…、まぁ、いつやったか…考え事もしてたけど、ほんまに家とここがややこしぃ成ってなぁ……」              「…あれっ…? うちの嫁はん、いつの間にこんな若こうてべっぴんになったんやろって…思うたことも在ったわ。」

    「いやいやいや…それは、完全に病気ですわ。」

  「なんて言うか、不思議な事に、いっぺんここに寄ったら…家までの帰り道を思い出せるんや…。」

 「えっ、それまでは帰り道忘れてるっ事なん?… そしたら、森川のおっちゃん、ほとんど毎日来てくれてるんや。」

   「せやな、6日のうち、5日ってとこやな。 そこに、山ちゃんが3日くらいや。 …なっ?」

    「なんか…俺まで、病気に聞こえますやんか。」

 「なんや、うちの店は病人の集まりでしたんか…うちは医者やありませんで…。」                             「はい、これ…イワシ炊きましたんやけど、みんなで味見して頂だいね………。」                               「…包んどきますよって、森川さんは持って帰って…奥さんにも食べてもらって下さい。」

  「ありがとう、いつもスマンなぁ… こないだの炊きこみ御飯も美味しかったで。」

 「そんなぁ、奥さんにはお世話になってますから…この間も、ほら今年から【体育の日】って祭日が出来ましたやろ…。」       「その時の区民体育祭のお手伝いでも、奥さんが…いちばん頑張ってはりましたわ~。」

     「新しいもん好きやねん。」

   「…それは…ちょっと違うような……。」

  「…せやな…とにかく、賑やかなんが好きやねん。 特に子供が集まるようなとこには喜んで行きよるわ。」

  「子供さんにあげる、飴やお菓子まで用意してはりますもん…よっぽど子供が好きみたいですわね。」

  「好きなんはほんまやけど、出来んかった事がよっぽど残念やったんや思うわ。」

 「こればっかりはなぁ、うちなんか3人も出来た替わりにみんな女の子や。 1人でええから…男の子も欲しかったで。」

 「性別かぁ、それも在るわなぁ… 実の事言うと、うちにも出来たんやけど、流れてしもうたんや…。」                  「その後それっきりでなぁ…あかん、しんみりしてきた…… 今日は早よ帰って、嫁はんと飲み直すわ…。」               「ママ、お勘定しといて…… これ空けたらかえるよって、みんなは…ゆっくり飲んどいてや…。」

  「そうか…俺は、まぁ…もう一本飲んでから帰るわ…。」

   「北さん、俺らも付き合うで、なぁ山ちゃん…?」

  「はい…。 僕はこんな時間に帰っても仕方ないんで……。」

 「森川さん、おおきに。 これ、云うてたイワシ…包んどいたから…… これをおかずに奥さんと飲み直して。」

   「ありがとう。 ほな…みんな、ゴメンやで。」

     「お疲れさん。 …また来週。」

   「さぁ、こっちも残ったメンバーで…飲み直しといこか…。」

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