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夕子、西成区、花園町在住。 第30話         (運動会当日 前編)

 「ハッハッハッ~。天気まで俺の味方や。太陽とゴールテープと映画までが俺に手招きしとる・・・きょうは家族の期待と、なによりも自分の目的のために全力で頑張るんや。」

「・・・・・」

「なぁ、夕子。一言でもなんか言うてくれんと・・・寂しいやんか・・・ええ一言を期待してる分けでもないんやから・・・」

「・・・いや、文句の付けようが無かっただけや。じゅうぶん意気込みも伝わってきたし、将来、スポーツ以外にも道は在るかも知れんと思うてたんや・・・ただ、あんまり、あほらし過ぎて・・・それに、サンダ対ガイラはおとといの金曜で終わったはずやで。」

「・・・うそっ・・・も、もしも、それがホンマの話やったら、運動会終わるまで教えて欲しなかったわ・・・夕子、嘘でもええから、嘘やって言うてくれ。」

「嘘や。」

「…あかん、ほんまの話や~」

「・・・ややこしい奴っちゃなぁ。」

「・・・いや夕子、ありがとう。前もって判って良かったんや。新たな目標を見つけたらええねん。たしか鶴見橋でガメラの新作をやってるはずや。」

「バク転以外にも、いや、それ以上やな、立ち直りの早さ、こっちは死ぬまで、真似できんと思うわ。」


 「夕子、速かったな~。勝つのは判ってたけど、ぶっちぎり方に磨きがかかってきたやないか。昼からはリレーや、個人戦とは違うけど夕子やったら楽勝や。さぁ、しっかり食べて昼からに備えるんや。」

「あんた、騒ぎ過ぎです。ゆうべ言いましたやろ、主役は夕子であんたや無いって。」

「お母ちゃんの予想的中、お父ちゃん、お店に行ったんやな。」

「こう云う事には、期待を裏切らへんのがお父ちゃんです。」

「どんな事でも、俺は期待に答えてるつもりやで。」

「女の人のお願いにはそうかも知れませんなぁ。お父さん優しいから・・・さぁ、お腹一杯食べなさいよ。・・・あんた、どうしたんや、喉に詰まったんか、咽てからに・・・」

「・・・なんやお母ちゃんて、底の深い迫力を感じる時がある・・・今も、そうやった。」

「うっ、うん・・・うん。」

「はいお父ちゃん、お茶。」

「・・・・・ふ~、死ぬかと思うた。」

「何を大げさな事、言うてますねん。はい、残さんと食べてや。」

「じゅうぶん食べてるで、昼からの事考えたら、あんまり食べ過ぎてもあかんねん。」

「おう、そうやなぁ。夕子はどないしても負けへんとは思うけど、残りはお父ちゃん、頑張ったるわ。」「それより、昌幸のやつ大丈夫やったんか?、人間ピラミッドで崩れた後、保健室に運ばれとったど。」

「ちょっと頭、打っただけやろ。頭良うなってええんちゃうか、悪うなる心配は無いねんし・・・なにより、今日一日にかけるマサは、本気度全開や、かりに怪我しとっても、絶対に勝ちよる。一年を運動会のために生きてるような奴やねんから。」

「お父ちゃんには解かるで、そう云う奴に悪い奴はいてへん。根性も在って男らしい、けど、人には優しいって奴なんや。」

「夕子がもう一人知ってる言うてた二人が揃いましたんやなぁ・・・けど、気にはなりますがな、夕子、藤川君の様子、ちょっと見て来てあげなさい。」

「うん。絶対、大丈夫や思うけど。」

 「・・・サブちゃん、誰にでも優しいのも考えもんでっせ。」

「俺、この一件片付くまでに胃を壊しそうやわ。」

「そんな冗談言えてるうちは、まだまだ大丈夫ですわ。覚悟しときや・・・」

「・・・う、う・・・」

   後編へ・・・
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