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夕子、西成区花園町在住。 第19・20話       (おっ、若女将…)

      「まいど。 おっ、若女将。」

   「あっ、公務員軍団いらっしゃい。」

 「若女将の夕子ちゃんから…その公務員軍団って言われるの、厭やないんやけど、家も近所で名前も知ってるんやから、たまには森川のおっちゃんとか呼んで欲しいわ…。」

  「そんなことしたら、山本さんや、北村のおっちゃんも…みんな一人ずつに挨拶せんとあかんやんか。」               「けど、考えとくわ。 うちかて、タコって呼ばれるのは厭やねんから…。」

 「なぁ、北さんや山ちゃんはええけど、藤島って飛ばされた俺は…ごっつい悲しい思いしてるんやけど。」

  「ゴメン!忘れてた訳やないんやで、ゴロの問題でそうなってしもうただけで…ほんまやで。」                       「気ぃ悪うせんといて、郵便局の藤島さん…まぁ、ビールどうぞ…。」

   「おっとっと。  ふ~っ…なんや、仕事まで覚えてくれてたんか?」

「こう云うことは商売人やったら…いっぺん聞いたら忘れへんもんや。」                                   「特に、おっちゃんの場合、勤めが区役所前の郵便局…せやのに鶴見橋商店街の自宅も郵便局なんやから、ちょっと印象的やってん。」 「…はい、みんなもどうぞ。 …一杯目だけやで。」

 「ほんまや、まぁ、珍しいかもなぁ。 …しかし、夕子ちゃん、若女将はしっかりしるなぁ~いつもながらに、びっくりや。」              「ママ~~土手焼き人数分やで~」

       「解ってますがな…はい。」

  「これやこれっ…これで一杯が飲みとうて来てしまうんや。」

 「なぁ、おっちゃんらは、仕事はまぁ言うたら、一つ隣の駅やんか?」                                      「家が近所で来てくれるんは解るんやけど…土曜日やのにこの時間まで…公務員は半ドンとはちがうの?」

 「いや、昼までや。 でも、なんて言うんか、書類尽くめで、整理が大変でなぁ。」                               「とは云え…することは一緒やから、土曜日や云うても昼までには終わらへん。」                               「…気がつたらいつもの時間になってしもうてるんや。」

      「ふーん、そうか、大変なんやなぁ…。」

 「でも、帰ろうと思うたら帰れるんやで。 特に若いうちは仕事もそんなに溜まらへんし、山ちゃんなんかは、正直言うて、ここに来るために残業してるようなもんや。 …どやっ、図星やろ?」

 「えっ、森川さんそれはひどいですわ。」 「たしかに、自分の仕事はたいして在りませんけど、僕は、小さい頃から可愛がってくれた、森川さんや先輩らと、こうやって飲むのがほんまに楽しいから、ちょっとでも早く終わるように仕事手伝うてますねんで…おかげで仕事も覚えられるし。」

 「そないムキにならんでもええ、冗談や。でも、初めて連れて来たった時に、ママに一目惚れしたしたんは事実やろ? ママの顔見て、ポカーンとしとったんが何よりの証拠や。」

 「まぁ森川さん、それはワシらも似たようなもんや。 あんなカッコ良うて二枚目の旦那さんが居てたら手も足も出えへんだけで、ママの笑顔とこの土手焼きが目当てなんやから。」

 「もう、北さんまで…若いもんと私まで一緒にからかわんといて。」                                      「それに、山本さんかて、うち見たいなオバサン、いらんわ…なぁ?」

    「いえ、ママはほんまに綺麗で…でも、せやから言うて…。」

 「分かってます…山本さんには自分の年に合うた、ええ人が…そのうちきっと見つかりますよってに…。」

 「若女将かて、あと10年ほど経ったらビックリするような超べっぴん…間違いなしやで……。」                     「ママ、ビールと土手焼き、おかわりや…こいつ、若いもんの中では断トツや。仕事も出来るし、人としてもええもん持ってる。」  「子供会の世話役やっとって、よう、歩こう会とか連れて行ったもんや。」                                   「せやから言うてるんや無いで…無いんやけど、なんや可愛いてなぁ…ワシ、子供に恵まれへんかったしなぁ。」

   「もう、最後にはしんみりした話になってしもうて。」                                              「うちと藤島のおっやん、蚊帳の外やんか…うちが飲めたら付き合うたるんやけど。」

 「若女将のその言葉だけで十分や…おんなじ公務員でも俺だけ郵便局やし…。」                              「こうやって酌までしてくれて…若女将は俺が独占させてもろてますよってに、そっちはそっちで好き勝手にやって頂だい…俺の場合、子供は出来たけど、今は相手もしてくれへん…。」

   「もう、あちこちでしんみりせんと、みんなで楽しい飲んでえなぁ…うち、もうすぐ帰る時間やで。」

   「若女将から小学生の夕子ちゃんに戻るんか? 宿題やって、風呂入ってお休みやな。」

「うち、宿題とか、やらんとあかん事は絶対、さきに片づけるねん。 後はおっちゃんの言うとおり、風呂行って寝るだけや。」    「そうや!……おっちゃんらはどうなん? 悲しいならへんの…?」

         「……?……」

        「…?…?…?…」

 「あしたの日曜日、祭日と重なってしもうて、休み1日損したやんか。 連休の時はごっつい嬉しいけど…ちょっと悲しいねん。」

  「ものすご~く、気持ちは伝わってきたわ…でも、こればっかりはなぁ……。」                               「夕子ちゃん、学校嫌いか?勉強は良う出来るって聞いてるで。」

  「うち、学校はすきや。勉強も楽しいとは思わんけど嫌いやない。 けど、それとこれとは別の話なんや。」

 「うん、うん。若い俺には、夕子ちゃんの気持ち良く理解できるで。 俺も子供の頃はよう思うたもんや。」                「…いや、今でもや。 明日の事も、そう言われてみたら悲しいわ… 戦前生まれのオジサン達とは感覚が違う。」

     「おいおい…山ちゃんかて戦前生まれやないか。」

「僕は生れは戦前…戦中ですわ…せやから記憶は戦後しか無い年代や。 夕子ちゃんとそう云うとこは一緒なんですわ。」

  「お前、若女将に点数稼いで、ママから鞍がえするつもりとちゃうやろな…10年後を見込んで。」

      「そんなぁ…北村さん…俺…そんな事しませんよ…。」 

   「ほんなら…全員、ママ一筋で団結や……邪魔なんは、結局サブと言うことか……。」

 「もう…その辺にしといて頂戴なぁ……こんだけ言われたら嘘でも嬉しい…あまり物やけど、これはサービス……」

      「作戦成功や……ママ、ご馳走になるわ…おおきに…。」

 「なぁ…おっちゃんら、ほんまの女将のお母ちゃんにはママって呼ぶのに……なんでうちは若女将やのん…?」

      「えっ……」     「そ…それは……」

      「なぁ……」     「…なんて言うか………」
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コメント

あめま~(∵)

うちもな、道頓堀にツレと行く炉端ふうの店あってん。
それがな5~6年前、急になくなってチェーン店みたいな居酒屋に変わっててん。
むっちゃショックやったわ~
日本のひとがやってた店ちゃうけど、気のええおっちゃんやってん。
どないしてはるんやろ?って、弘さんのお話読ませてもろうて懐かしい感じしたわ~

大阪弁…完璧やん!

あめちゃん、何処の生まれかは知りませんが、大阪弁…完璧やん!
居酒屋にかわっててん…ここがミソですね。ほんまもんや。
今度、大阪へ来た時には、是非是非…芳月のアイスクリームを食べて欲しいなぁ…おじさんが生きている間に・・・。花園町、弘治小学校の目の前です。
大阪で美味しいお店は、今は東心斎橋や北浜、天神橋あたりに多いですよ。
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