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夕子、西成区花園町在住。 第10話    (夕子、新世界へ…後篇)

 「美味しかったわ~お父ちゃん有難う。」 「あっ、お父ちゃんカラーテレビや。」

「ん、どこ…どこや…?」 「ああ、電気屋さんか…売りもんやろうけど、どんな人が買うんやろなぁ…。」

 「まだ学校でもどこでも、カラーテレビを買うたって話は、まだ聞いたこと無いわ。」

 「そんなん、黙ってるだけで…判らんやろ…。」

 「いや、うちやったら絶対自慢する。 …黙ってると言うこと自体無理な話や。」

「確かに、俺もそう思う。」 「お婆ちゃんも無理や、うちの家族で黙ってられるんは洋子だけやな…なぁ、夕子、そう思わんか?」

 「…家族って……」 「…なぁ、家族に戻って……戻りたい……。」

「…ん、が、頑張る…」「せや、昔、3人でよう乗ったボートに乗らへんか?動物園もええな。…そうや、どっちも行こか。」

   「…お母ちゃんといっしょに行ける時まで置いとくわ。」

  「…せ、せやな…頑張る…」


  「夕子、ええなぁ、串カツ行ったんか。」 「美味しいもんなぁ…羨ましいなぁ…お前って、お母はんの「洋子」も在るし、美味しいもんばっかり食べてるんちゃうか?」

 「あほ!お婆ちゃんが製麺所でパートしてるの知ってるやろ。…うちの主食は基本、うどんか蕎麦や。」「それは、お母ちゃんが居てた頃から変わらへん。…家と店とは別なんや。」

 「…俺とこなんか、この辺では珍しい鉄工所勤めのサラリーマンやから…なんて言うんか…毎日の生活に変化が無いねん。」

 「そんな事を思てるんはマサだけや、変化が無い言う事は安定してる言う事やし…だいたい休みも、毎週決まって日曜日やろ…串カツかて連れて行ってもらえるやん。」 「それに…マサはしょっちゅう大阪球場へ野球の試合観に行ってるやんか。」

 「あれは南海ホークス子供の会に入ってたからで、外野席が実質タダで観られたんや。来年からは体操クラブに通わせてもらうんで、もう行ってへん。」 「なにより、この頃は鉄工所の仕事が忙し過ぎて、朝から夜遅うまで働いて、おとんもバテバテで休みの日は寝てばっかりや。」

 「ホークス子供の会も体操クラブも、考えたら贅沢な話やんか…そうや…ホークス子供の会はいっぺん練習観に行ったけど、みんな背番号19番ばっかりで、後ろから観てたら誰が誰か判らへんかったわ。」

   「この辺の子は、ほとんどが野村のファンやからそうなってしまうんや。」

 「世間では、巨人、大鵬、卵焼きって言うてるのに、南海の野村かいな…まぁ、うちのお父ちゃんの場合は…極端な阪神ファンで、巨人の事になるとボロカスに言いよるけど…… ふう、とにかく、今のうちにはど~でもええ話や……。」
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