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制服と割烹着(夕子と昌幸・青春篇) 第43話


 「お邪魔します…ここよろしいですか?」

「はい、どうぞどうぞ…いらっしゃいませ。あれっ、もしかしたら…荒木さんとこの隆弘くんと違うのん?」

「あ~はい、そうです。」「取りあえずビールと唐揚げを下さい。」

「よっしゃ…お母ちゃん、隆弘くんやで。」

「…あら、ほんまに。お父さんにはお世話になって、昨日も来てくれてはったんやで。」

「はぁ…らしいですね。」

「はい、お姉ちゃんが注いだろ…いつの間に成人しとったんや?」 

「…ふ~っ、先月が誕生日で成人式は来年なんですわ。」

「そうやったんや。マサが酒に弱いのも聞いてるやろ? あんたは大丈夫なんか?」

「はい、修行中です。でも俺は藤川のお兄ちゃんよりは飲めそうですわ。」

「まぁ、あいつは特別やし…荒木さんとこはお爺さんからの付き合いで、家系的にも飲めそうやもんなぁ。」

「はぁ…その藤川のお兄ちゃんから、ここの唐揚げが旨い旨いと聞かされてたんで、二十歳になったら絶対食べようと決めてたんですけど、1回食べたら本当にハマってしまいまして…」「そう云う事でこれからは、ちょくちょく寄らしてもらいますので…」

「それは、心強いお客さんが増えて嬉しいやんか。」「せやけど…いつ1回食べたんや? 荒木のおっちゃんって持って帰った事なんか在ったやろか?」

「…実は、この前…ヘビメタの衣装で…」


「え~~っ!」「お母ちゃん、聞いてた?」

「はぁ、聞いてましたで。あれ隆弘くんでしたんかいな…今週のハイライトですわ。」

「うわっ、出た…歳がバレるっちゅうねん。」「まぁ、そんな事はど~でもええけど、ほんまに驚きやんか。」

「はい、その節は迷惑を掛けてすみませんでした。趣味でバンドを組んでるんですけど、びっくりさせようと云う気持ちと、どうせ僕やと分かると思ってたもんで……」


「全然わからんかったなぁ。顔に特別なメイクをしてた分けでも無かったのに…あんたも何か一言を言わんとアカンわ。」

「いえ…ほんまに御免なさい。」「空気が変わったんが痛いほど分かったんで、言いだすタイミングを逃してしもうたんですわ。山本さんらも帰りはったし、尚更……」


「そうか…ほんで隆弘くん、今日はゆっくり出来るんか?」

「はい、お詫びを兼ねてそのつもりで来ましたから…明日も休みですし。」

「ほんなら、マサが来るから一緒に飲んだってくれるか? 修行中には丁度ええ相手やと思うで?」

「丁度ええかどうかは分かりませんけど、嬉しいです。お兄ちゃんには子供の頃から可愛がってもらいましたから。」

「あんたもやっぱりな…良かったわ。この辺の子はええ子ばっかりみたいや。」「せやけど、こないだの格好はびっくりしたで…荒木のおっちゃんは知ってはるんか?」

「もちろん内緒でなんかしてませんよ。けどこの前、あの格好で来た事は内緒にしてますねん。」「出来るんやったら、このまま内緒にしといてもらえませんか?」



 「こら隆弘…未成年が酒飲んで何が内緒にしとってや? 現行犯逮捕じゃ。」

「うわっ、兄ちゃん違う…俺も先月で二十歳になったんや。」「そうでないと、夕子姉ちゃんかて飲ましてくれるかいな。」


「…うん、それもそうやな。」「俺にもこの組み合わせで頼むわ。」


「もう、兄ちゃんの場合、冗談が通用せえへんとこが在るから…俺らの世代には親より怖いんが兄ちゃんなんやから、あんまりビビらせんといてくださいや。」

「ほらみてみぃ…これが世間一般が感じてるマサへの評価なんや。肝に銘じて、これからは優しく生きて行くこっちゃ。」「はい、唐揚げは大盛りにしといたで。」

「…隆弘、怒れへんから正直に言うてくれ。俺と夕子とどっちが怖いと思う?」

「それは、お兄ちゃんに決まってるやんか。夕子姉ちゃんは、ほんまに優しかったしなぁ…ただ、昌幸兄ちゃんがビビってるのを知ってたから、何が在っても絶対逆ろうたらアカン相手やと…この辺の子供やったら誰もが全員、肝に銘じてたはずですけど。」

「隆弘、ええ感じなんやけど…微妙な言い方やなぁ?」「もうちょっと決定的な…」

「アホっ! 何を無理やり交渉してるねん。いつも言うてたやろ。うちはマサとお父ちゃん以外には可憐な乙女で通ってたんや。」


「おい、おれも何回も言うて来たはずやけどな、お前『可憐』と『乙女』の使い方を根本的に間違うてるで…なぁ?」


「なぁ…って、俺には答えられませんわ。」

「隆弘くん、こんなアホにビビらんでも素直に言うたらええんやで。」

「いや~ぼ、僕は『可憐』も『乙女』も学校で習い忘れたみたいで…あっ、丁度その日、風邪引いて休んでたんですわ。」


「やった~ええぞ隆弘…俺の勝ちや。」

「ふっ…マサは別として、あんたええ度胸してるやないか? 今晩からこの辺うろつく時は注意するんやで。」

「兄ちゃん…俺、ほんまの恐怖ってモンが分かってきたように思いますわ。」

「よっしゃ、それが分かって来たら大人の証拠や。ほんで、それを丁寧に教えてくれるんが、この店とこのお姉さんや。」

「じっくり人生勉強させてあげるで~」

「はい…下手な漫才より、よっぽど面白いですわ。」


「そら、一時は夫婦漫才を目指した事…」

「…事なんか…1回も無い! アホっ。」

「せやったかなぁ…そ、そうか隆弘も二十歳になったんか…なるほどそれで早速、唐揚げと云う分けや。どや、旨いやろ?」


「はい、それはもう…味にも、店にも完全にハマりました。」「お兄ちゃん、一杯注がせて下さい……」

「おう、お前もいけ……んっ…これからも宜しく頼むで。」

「はい、それはもう……」


「なぁマサ、この前の『セキセイインコ』やけど…この隆弘くんやったんや。」

「ごふっ! う~っ~~」


「きたないなぁ…あんただけは、ほんまに。」

「痛いど~鼻からビールや…」「お前こそ、完全にタイミングを狙うてたやないか…ビールは効くで…け、けど、ほんまなんか?」


「はい、実はそれを白状しに…けど『セキセイインコ』って云うのは、もしかしたら俺の事なんですか?」

「せや、見てない俺に説明する例えが、ヘビメタの格好に頭は『セキセイインコ』やったんや。自分で聞いてどない思う?」

「いや~上手い表現やと思いますよ。グループ名も『レインボー・バード』ですから。」

「お~っ、云い得て妙とはこの事やなぁ。」「せやけど、なんで誰も『隆弘』やって気が付かへんかったんや?」

「それやねん。この子もなんか言うたら良かったんやけど…うちらも、まさか隆弘くんとは思わへんやろ? まぁ、それだけ特異な格好やと云う事や。」「ええか、あの格好でここに来たんは、お父さんにも内緒にしとくけどな、結局はあの格好が許されるんは、ステージだけやと云う事やで。」


「はい、世間一般では受け入れられない事が良く分かりました…これからは、ステージだけにしておきます。」


「それがええやろ…見てない俺は、ちょっと残念やった気もするけどな。」

「残念がらんでもええ…日本人には黒い髪が一番なんや。」


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時代背景のせいもあるけど、うーん、それはロックじゃないな(笑)

ロッカーがご近所の視線を気にしてどうする!(外野は気楽である(^_^;))

ポール・ブリッツさん・・・いやいやその通りですよ。

この実在の人物は現在家業を継いで散髪屋さんを営んでおります。

いまだにバンド活動を頑張ってるのは立派だと思って登場して頂きました。

いよいよあと数話で完結を迎えますが最後までお付き合い下さい。

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