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制服と割烹着(夕子と昌幸・青春篇) 第32話


 「おい夕子、おばちゃんのジーパン姿、目茶苦茶カッコええやないか。俺はとしては、着物よりええと思うんやけどなぁ……」

「直接、お母ちゃんに聞かせたってくれるか…当分の飲み食いはタダにしてくれると思うで。」

「いやいや冗談とちゃうで。たとえば昼はジーパンにエプロン、着物は夜だけにするとか…なっ、お客さんも絶対に喜ぶわ。新しいファンが増えるんも間違いないで。」

「ええやないか…それも追加して聞かせたら、半年はタダになるはずやわ。」

「おいおい…とにかく、エプロンを買いに行くのに付き合わされたけど、こう云う狙いがあったんやな。」

「せやねん。急に何を思うたんか、ジーパンにお揃いのエプロンって言い出したんは、お母ちゃんからやで。」

「あっ、ほんで、ジーパンは1本やったのに、エプロンは2枚買うたんか。」

「あの時買うたんは、実はうちのジーパンなんや。『買うてきたろか?』って聞いたんやけどな…ど~しても自分で買いに行く言うて、お母ちゃんは自分で買うてきたんや。」

「えっ、そうなんか…おばちゃんジーパンなんか初めてやろ?」

「なんでやろなぁ…その理由を喋る勇気は無いけどな、あんたが褒めとったと聞いたら喜ぶ事だけは確かや。」

「まぁ、褒められるんは誰に褒められても、嬉しいやろ? けど、お前が喋るのに勇気がいるような理由が…俺には想像も出来へんけどなぁ……」

「想像もせんまま、忘れたって。」

「わ、わかった…」「ただ、お前のジャージに割烹着姿は…違和感と言えばそうかも知れんけど、俺としてはユーモラスな可愛らしさが在って好きやったんやけどな。」「二度と見られへんと成ると寂しい気もするわ。」

「実はうちも、違和感を持ちながらも気には入ってたんや。白い割烹着に黒い顔がアンバランスでなぁ…それが、マサの言う、ユーモラスに見えたんかも知れんわ。」

「うん…ほんまや、そんな気がする。」「しかし、ジーパンはおばちゃん自身も気に入ったんやろなぁ…今日は休みやのに、着てはったもんな。」

「あんたに見て欲しかったんやと思うで。」

「えっ、ほんまにか…なんでやねん?」

「あんたが来ると聞いて、着替えたからや…それまでは、いつも通り着物やったんや。」「先週の日曜日に買うて来て、初めて着たんが一週間後の今日やと思うで。」

「ええ~、喜んでええのか、不思議と云うたらええのやろか……」

「喜んだらええやんか。不思議な事もあらへん…お母ちゃんはマサのファンやから。」

「おっと…先生、ごめんなさい……」

「アホっ…ようするに、うちとお父ちゃん以外の誰かに褒めて欲しかったんや。真っ先に思い当たるんはマサしか居て無いやんか。」

「うん…まぁ、そうやろなぁ。」

「なっ。これでマサがさっき言うてた事を伝えたったら…さっそく明日の昼から、ジーパンと揃いのエプロンで営業開始や。」

「それこそ、ええ感じやないか。」

「まぁな…うちも楽しみにしてるんや。」「子供の頃は、お父ちゃんが自慢で、カッコええと思うてた。」
「今が違うとは言わへんけど、実はお母ちゃんが、なんて云うんか…今回のジーパンもそうやけど、歳を取るどころか若返ってきてるように思えるほどなんや。」


「なるほどなぁ…先生は確かに、おっちゃんに成ってきたと思えるけど、おばちゃんは全然、変ってへんもんな。」「ほんまに綺麗なおばちゃんのまんまや。」


「ええ感じやで…これで年間無料席ご案内は確実になったわ。」

「ぜひ、正直にそのままお伝え下さい。」

「まかしとき…って、アホっ。」

「ほんでも、確かにおばちゃんは年を取らへんな。知らん人には、お前と親子には見えんのと違うやろか?」「初めてのお客さんなんか、どう思うてるんやろな?」

「何回もある話やけどな…お母ちゃんの場合、嘘をついたり、誤魔化したりする気は無いようやけど『姉妹やろ』って言うてくれたお客さんには、過剰なサービスしてるんを…うちは見逃したってるんや。」


「ええやないか。」「おばちゃん、乙女してはるんや…これからも見逃したってくれ。」

「あんたらしい発想やけど…うちも全く同じ意見や、安心しとき。」


「よっしゃ、それには安心しとくわ。」「せやけど、ついでにもう一つ、安心させて欲しい事が在るんやけど…かまへんか?」


「えっ、何を思い出したんか知らんけど、急になにやねん?」

「いや~実は、ずっと前から思うてる事なんやけどな、お前こそ、その格好なんとかならへんのんか?」

「意味が判らへん…どこが気に入らんねん?いつもの格好やないか。」

「せやから、ずっと思うてる事やと云うたやろ。お前、夏になったらその格好やけど、今からお好み焼きでも食べに行くとなったら、その格好では行かへんやろ?」

「アホっ。当たり前やないか。それもいつもの通りやろ…この上に、ジャージ、もしくはTシャツとジーパンやないか。なにが言いたいんか知らんけど、知恵熱でも出たんか?」


「ほんまに、いつもの事やけどな…その上にジャージやろ?」

「しまいに怒るで…なにが言いたいねん?」

「今のお前って、ほぼ…下着やろ?」


「あ……アホっ…スポーツブラとランパンやないか?」「ちょっ、ちょっと待ちや…スポーツブラは、もしかしたら…100人に聞いたら何人かは下着と答えるかも分からんけど、ランパンはちゃうやろ? この下にまだ、ちゃんとはいてるし………」

「結局のところ…お前冬でも、今は脱いでるそのジャージを着てるだけの事やろ?」

「そ、そうや。」「けど、それはええやないか…なんもおかしい事あらへんやろ?」

「うん、それはええんや。そのまま表を歩けるやろ? 問題はそこや……」

「ちょっと待って…今日はスポーツブラやけど、競技用のセパレートの時も在るで。これは完全にアウトドアやないか?」

「競技場で見る分にはな。競技用のハイカットショーツなんかビキニより際どいやないか。そんなモンで商店街を歩いてる奴、見た事ないやろ? 在る意味、ドッキリやど。」


「もうええ、これで表を歩く分けとは違うんやから…ようするに、あんたはそのドッキリが厭なんか?」

「…いや、そんな事は…全然………」

「ほんならかめへんやないか…いらん事考えんと、あと2年辛抱しとったらええんや。」



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