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制服と割烹着(夕子と昌幸・青春篇) 第30話


 「なぁお母ちゃん、この頃気になるんやけど、いつまでもジャージに割烹着って訳にもいかへんのとちゃうやろか?」

「せやねぇ、私は着物が当たり前に成ってますけど、あんたには動きにくいやろし、かまへんのとちゃいますか?」

「せやけどお母ちゃん、ちょっとは色気も必要やと言うとったやんか。」

「色気は服装だけで出て来るモンやありませんで。あんたがこの頃めっきり女らしく成ったんも、昌幸くんからプレゼントしてもらったスーツやワンピースのお陰とは違いますんやで。」

「えっ、せやけどアレがきっかけで……」

「そう、きっかけでしたんや。」「あんた自身が目覚めたと言うた方が正しいんやろけど、『ジャージのままでええんやろか』って思うのも同じ事ですわ…夕子の中の女が弾けたと云うことやね。」

「そうか…後輩からも色んな事を言われてきたけど、なんやかんや云うても、気にして無かった。」「せやけど、面倒くさいと思いながらも、鏡に映ったスーツ姿の自分を見て『うわっ! これがうちかいな……中々、イケてるやん』と正直なところそう思うたんや。」

「それこそ、そこが夕子の中の女が弾けた瞬間やった訳やね。」

「うん…なんや気恥かしい感じもするけど、それが良かったと思えるわ。」

「一番喜んでるのは、なんと云うても昌幸くんやと思いますけどね。」

「それについては、うちもそう思う。あいつの狙い通りやと思うたら腹も立つけど、これに関しては良しとしとくわ。」

「とにかく、そう云う気持ちを持ってるんやったら、ジャージでもええんやないかと思いますねん。動きやすいし、あんたには、これはこれでよう似合うてますからなぁ…そうや、エプロンにしたらどうですやろか? 割烹着って着物を想定したものやからね。」

「そうかも知れへんなぁ…当たり前のように割烹着を着てたけど、なんか違和感を感じとったんや。それに、うちに着物は…ちょっと無理があるしなぁ。」

「そう云うことやね。今の夕子は、男の子や無うて、ちゃんと女の人に見えますからねぇ…しかも、えらいべっぴんやし。せやから、清潔で小奇麗な格好やったらよろしいんや。」「良かったなぁ…私に似てて。」


「……素直に喜んどくわ。」「でも、なんか納得がいったわ。メニューと一緒で、何がなんでも和風にこだわる必要もないのかも知れへん。お母ちゃんは着物に割烹着、うちはジャージにエプロンでもええんや。」

「そうやね、逆に私が、着物ばっかりや無うてジーパンでもはいてみよか? お揃いのエプロンも面白いかも知れませんで。」

「それ…ええやん。お母ちゃんのジーパンも絶対似合うわ。うちも見てみたいし、お父ちゃんをびっくりさせたろ…うちの方が背は高いけど、サイズはそんなに変らへんやろ? 今度の休み、エプロンと一緒に買うてきたるわ。」

「そうやね、夕子のセンスに任せますわ。けど、ジーパンはスリムにしてや。」

「スリムなんやな…まぁええわ、ほんでサイズは?」

「…ジーパンは自分で買いに行く事にしますわ……エプロンだけ買うてきて。」

「娘に恥ずかしがってどないするねん。」

「私は女に目覚めてから、まだ起きたままなんや。それに、あんたの買い物って一人で行くんとちゃいますやろ?」

「それって、黙って付いてくる専属の荷物持ちの事を言うてるんか?」

「その荷物持ちにバレて、夕子と比べられたら恥かしいやんか。」

「そんなん誰も比べるかいな。仮に比べた処でどうなるんや?」

「私に対して持ってるイメージを大切にしてやらんと…ただでさえ最近は私のファンが減って、あんたの方へかたよってきてるんやから……」

「お母ちゃん、変なとこで、うちをライバルにするのんはやめて欲しいわ。」

「いいえ、ライバルとは思うてません…単純に悔しいだけですわ。」「若いお客さんは分かりますけど、不思議な事にお年寄りも、ほとんどが夕子のファンですやんか…私のファンって、ごく幅の狭い40~55ぐらいの年代だけやないの……」

「お母ちゃん、そんなとこまで分析してるんか? ライバルどころか、うち…ねたまれてるんとちゃうか?」

「いや、ねたんでる訳でも無いんですけど、なんや悔しいんですわ。」

「なんか『女に目覚めてから起きたまま』って言う一言に説得力を感じる展開やなぁ。」

「私は、夕子と張り合うつもりなんか、全く無いんやで、せやのにどこかで……なんて云うんか…そう云う事なのかも知れませんなぁ……」「さぁ、すっかり遅うなってしまいましたやんか。夕子は、まだ何かする事が残ってるんですか?」

「いや、あさってが休みやから、こんなもんで十分や。お母ちゃん…帰ろか。」「ほんで、あさってには荷物持ちも休みやから、趣味のええエプロン探してくるわ。お母ちゃん、ほんまにジーパンはええのんか?」


「……気持ちは嬉しいんですけど、やっぱり自分で買いに行く事にしますわ。」


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幸せな女は美しく見える。

薄倖な女も美しく見える。

もしも美しく見えない女がいたとしたら、それは神がそうお造りになられたのだ。

 ― バーナード・ショー


……ウソです。

ポール・ブリッツさん、いつも有難うございます。

神は女性そのものが美しく見えるように創られた……by ミロのビーナス … 嘘です。

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