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制服と割烹着(夕子と昌幸・青春篇) 第27話


 「毎年の事かも知れんけど、いつになったら涼しく成るんや。ホンマ、ええ加減にして欲しいわ。」

「あんたこそ、毎年の事やで…この時期になったら、必ず同じ事言うてるわ。」

「そう言われたら、そんな気もする…この時期、お前の誕生日と運動会が終わらんと涼しく成らへんと記憶に刻まれてるんや。」

「マサは、運動会の為に一年間を生きてるような子供やったからな、この時期には特に敏感なんかも知れへんなぁ。」
 
「そうやった。体の芯から燃えて来る感じが好きやったんや…今はお前の誕生日しか無いけど、これは忘れる事がないからな。」

「それやけどなぁ…うちの誕生日に、頼んでも無い高島屋の商品券が届いたんやけど、よそいきのジャージを何着か買えと云うふうに解釈しといたらええんか?」

「あのなぁ…ジャージを何着も買うために、わざわざ商品券を贈る奴なんか居てるはず無いやろ?」

「ほんなら、何のために送って来たんや?腹いっぱい酒を飲めって事でも無さそうやし…不思議な事もあるもんや。」

「あのなぁ、不思議と違う買い物は思いつかへんのんか?」

「あれだけの金額やからなぁ…タコ焼きやったら、いくつ食えるんか……想像もつかへんなぁ? あんたは何か食べたいモンでも在るんか?」

「あのなぁ…夏のボーナスを吐き出したのに、タコ焼きを喰われたらたまらんやろ?」

「なんや、タコ焼きも喰うたらアカンのんかいな?」

「た、食べてもええよ……」「ええけど、おつりで喰え……おつりで。」

「せやから、何を買うたおつりやねん?」

「婚約指輪の代わりやとは言わんけど、給料の3倍が相場らしいやないか…俺は先生のスーツを貰ったりしたけどやなぁ、お前も友達の結婚式に呼ばれてるんやろ?」

「これを衣装代にしろって言うんか?」

「まさか、なんぼお前でもジャージで行く訳にはいかんやろ?」

「それは当たり前や…せやけど、一日だけやったら貸衣装もあるし、お母ちゃんの着物って云う手も在るんやで。」

「着物だけはやめとけ。」「忘れたんか? 成人式でおばちゃんに綺麗に着せてもろたんは良かったけど…3歩目で草履が脱げたまま、しばらく素足になったんも気が付かへんかったやないか。」

「あんた、そんな昔のしょ~も無い事、いつまでも覚えとらんで、早よ忘れや。」

「今年の話やで?」

「半年以上は大昔やと…なんかのニュースで見た覚えが在るんや………」

「お前も困った時のリアクションは俺や先生と基本的に変らへんようやな…安心したで。」

「アホな事言わんといて…あんたらと一緒にされたらええ迷惑やわ。」「あんたとお父ちゃんに限っては、実の親子と思えるほど似てるけどな、うちは、あんたらのような単細胞の生き物とは違うんや。」

「単細胞って…そんなムキにならんでもええやないか。」「それに俺かて、厳密に言うたら先生とはあちこち違うはずやで。」

「いいや。あんたとお父ちゃんは、子供の頃から今までの人生、やってきた事、すべてがコピーのようにそっくりやないか。」「違うとしたら納豆の好き嫌いだけやと思うで。」

「そう言われて気が付いたけどな、確かにお前を一緒にしたらアカンわ。俺と先生は似とっても、お前だけはやってきた事が違い過ぎる…似てるなんてとんでも無い話や。どうも失礼しました。」

「アホっ、やかましいわ。」

「いや、お前の実績を考えたら、俺や先生なんか足元にも及ばへん……そんな達人が、似たような言い訳をした事実を…素直に喜んどく事にするわ。」

「ややこしい言い方で話を戻しよったなぁ……うちも話を戻すけど、あれだけの金額、本気で言うてるんか?」

「言うてるも何も…もう、夕子の手元に在るやないか……」

「うち、そんなん使われへんで。」「スーツやワンピースでも10着やそこら買えるんとちゃうか?」

「買うたらええやないか。」「俺の気持ちとしては、婚約指輪の代わりなんやから…靴やコートなんかも揃えてくれたらええんや……お前の口から『そのうち、考えてみるぐらいはええかな』って聞いてから1年…全く考えた形跡も感じられへんやないか。」「期待を込めた贈り物なんやど……」

「わかった…けど、買い物には一緒に行ってもらうで。」

「えっ…そんなん喜んで行くけど……」

「言うとくけど、あんたの好みや意見は受け付けへんからな。」

「ほんなら、なんの為に俺は………」

「アホっ、荷物持ちに決まってるやろ。」


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