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制服と割烹着(夕子と昌幸・青春篇)  第27話

 「まだまだ暑いなぁ…毎年の事かも知れんけど、いつになったら涼しく成るんや…ホンマ、ええ加減にして欲しいわ。」

 「あんたこそ、毎年の事やで…この時期になったら…必ず同じ事言うてる…ホンマ、ええ加減にして欲しいわ…。」

「そ、そう言われたら…そんな気もする……。」                                                    「この時期、お前の誕生日と、運動会が終わらん事には…涼しくは成らん…と…記憶にしっかりと刻まれてるんや…。」

「あんたも【人生の記憶大辞典】の有難みと…使い道が解って来たみたいやなぁ…。」                           「とにかくマサは、運動会の為に一年間を生きてるような子供やったからな…この時期だけは…特に敏感なんかも知れへんなぁ。」 
「そうやった…体の芯から燃えて来よる、あの…独特の感じが好きやったんや…お前にだけは、勝った事が無いけどなぁ……。」 「そして今、9月と言えばお前の誕生日しか残って無いけど…これは、運動会と違うて…これからも無くなる事がないからな…。」

「それやけどなぁ…うちの誕生日に、頼んだ覚えの無い…高島屋の商品券が届いたんや……マサ、あんたの名前で……。」   「あんたと、ネズミ小僧の関係は知らんけどな【外出用のジャージ】と【礼服用のジャージ】と【パーティー用のジャージ】…。」    「…すぐには、もう思いつけへんけど…買える限りのジャージでも買うとけ…と…解釈しといたらええんか……?」

  「あのなぁ…ジャージを何着も買うために、わざわざ商品券を贈る奴なんか…居てるはず無いやろ…?」

「ほんなら、何のために送って来たんや…?腹いっぱい、酒を飲めって事でも無さそうやし…不思議な事もあるもんや…。」

  「あのなぁ、不思議な事とは違う…買い物は思いつかへんのんか…?」

「あれだけの金額やから…タコ焼きやったら…いくつ食えるんか…想像もつかへんしなぁ…?そうか…あんた、もしかしたら…?」 「元手はマサでも…高級料理でも食べたいんやろ…うちの財布で…ほれ、言うてみ…何が食べたいんや…?食べさせたるで~」

 「あのなぁ…高級料理もいらんけど……夏のボーナスを吐き出したのに…タコ焼きを喰われたら…たまらんやろ~~?」

   「なんや、タコ焼きも喰うたらアカンのんかいな…?」

 「た、食べてもええよ……ええけど、おつりで喰え……おつりで…。」

  「せやから、何を買うたおつりやねん…?」

「今になって…もう、婚約指輪の代わりやとは言わんけど…そうやとしたら、給料の3ヶ月分が相場なんやと聞いた…。」      「俺は…先生のスーツを貰ったりしたけども…お前も、近々…友達の結婚式に呼ばれてるらしいやないか…?」

  「ほんで…これを衣装代にしろって…言うんか…?」

 「まさか、いくらお前でも…披露宴にジャージで行く訳には…いかんやろ…?」

 「それは当たり前や…せやけど、一日だけやったら貸衣装もあるし、お母ちゃんの着物って…云う手も在るんやで…?」

「着物だけはやめとけ!忘れたんか…?」「成人式で、おばちゃんに…綺麗に着せてもろたんは良かったんやけど………。」   「歩き始めてすぐ…3歩目で草履が脱げたまま…しばらくは素足になったんも…気が付かへんかったやないか。」

 「あんた、そんな気の遠くなるほど大昔の…取るに足らん、くだらん話を……サッサと忘れた方が…身の為やと思うで…。」

 「今年の話や。」「…俺の記憶…… せや…【人生の記憶大辞典】によると…たしか…1月……15…日…やったような…。」

  「半年以上は大昔やと……なんかのニュースで見た覚えが在るんや………。」

 「お前も、困った時のリアクションは…俺や先生と、基本的に変らへんようやな…安心したで。」

「アホな事言わんといて…あんたらと一緒にされたらええ迷惑やわ。」                                      「あんたとお父ちゃんに限っては、実の親子と思えるほど似てるけどな…うちは、あんたらのような単細胞生物とは違うんや。」

「単細胞生物って…そんなムキにならんでもええやないか…それに俺かて、厳密に言うたら先生とは…あちこち違うはずやで。」

「いいや…あんたとお父ちゃんは、子供の頃から今までの人生…やってきた事すべてが…コピーのようにそっくりやないか。」  「あえて違う処を探したとしても…納豆の好き嫌いと…酒が飲めるかどうか…それだけやと思うで…。」

「そう言われて気が付いたけどな、確かにお前を…俺や先生と一緒にしたらアカン……恐れ多い話やったわ。」            「俺と先生は、確かに似てる処も多いかも知れへん…せやけど、お前だけは…これまでにやってきた実績が…違い過ぎる……。」「とても、とても…単細胞生物と比べるなんて…とんでも無い話や……お前の悪事を働く細胞は…億単位や…間違いない…。」

   「アホっ!やかましいわ!」

「いや、そんなお前の実績を考えたら…俺や先生なんか足元にも及ばへん……。」                             「そんな達人が、俺たちと…変わらん言い訳をした事実を…素直に喜んで…【人生の記憶大辞典】に追加記入しとく事にするわ。」

 「ややこしい言い方で…話を戻しよったなぁ…。」「ほな、うちも話を戻すけど、あれだけの金額…本気で言うてるんか…?」

  「言うてるも何も… もう、夕子の手元に在るやないか……。」

 「正直な話…うち、こんなに使われへんで……スーツやワンピースでも…10着やそこら買えるんとちゃうやろか…?」

「買うたらええやないか…俺の気持ちとしては、婚約指輪の代わりなんやから…靴やコートなんかも揃えてくれたらええんや。」  「お前の口から…『そのうち、考えてみるぐらいはええかな』って聞いてから1年…考えた形跡すら感じられへんやないか…。」    「…俺としては……なんて言うんか……期待を込めた贈り物なんやど……。」

  「わかった……けど、買い物には一緒に行ってもらうで…。」

   「えっ…そんなん喜んで行くけど……ええん………」

  「言うとくけど、あんたの好みや意見は…受け付けへんで。」

   「ほんなら…なんの為に俺は………。」

   「アホっ!荷物持ちに決まってるやろ!」

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