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制服と割烹着(夕子と昌幸・青春篇) 第23話


 「とうとう夕子も飲める日が来たな。これからは、みんな一緒に飲める分けや。」

「マサ、あんたの場合、飲めるとは言わへん…舐めるや。」

「お前かて、今これから、飲んでみんと判らんやないか?」

「それはそうやけど、あんたより強いのは、飲まんでも判ってるんや。」「ただ、誕生日は今日やけども、金曜日やからな…マサのような事にならんために、今日のところは様子を見ながらにしとくわ。いけそうやったら、明日の土曜日に、ちょっと頑張ってみるつもりやねん。」

「そうやな、その方がええわ。」「日曜は俺も休みやからな、俺も明日に、ちょっと頑張ってみる事にして、今日はいつものビール1本にしとくわ。」

「うん、うちもその方がええと思う。とにかく、お父ちゃんが来るまでは、これでも食べて腹ごしらえをして待っとき。飲むのはそれからや。」

「昌幸くん、これも食べたらええわ…昼の残りやけど天麩羅の盛り合わせ。」

「えっ、これはまた豪華な代物ですやん…ええんですか?」

「かまへんよ。盛り合わせって言うたら、聞こえはええけど、ほんまのところは寄せ集めなんや。二度揚げも出来んから常連さんのサービス品にしか使われへん。遠慮せんと食べたらええで。」

「もう、夕子は…いくら昌幸くんとは云え、なんでもかんでも…ほんまに。」

「いえ、俺には十分ですわ。量も多いし、先生と一緒につまみます。」

「その先生ですけどなぁ…6時を過ぎた頃になるそうですわ。もうすぐですけど、今日だけは待ってあげてや。」

「待つもなにも、餌さえ与えといたら、マサにとって酒は『おあずけ』にはならへん。」

「ほんまに夕子は、『おあずけ』なんて、言い方がヒド過ぎですわ…なぁ?」

「い、いえっ…でも、どうせフォローするんやったら…そこは『餌さえ…』の方が正しいように思うんですけど………」



 「夕子ごめんやで、またせたなぁ…なんや、餌を前にしておあずけをくらっとたんか?」

「まるで話を聞いてたような、見事なフリやけど、食べる方は始まってる…待ってたのは飲む方だけやで。」

「それや。待たせてしもうたけど、なんと云うても、夕子の二十歳の誕生日や…まずはみんなで乾杯して祝うたろやないか。」


 「ふ~、美味しいやん。なるほど、マサの言うてた『これがビールか?』は名言やったんや。」「けど、これは美味しいで。」

「夕子、無理して言うてないか?」

「アホっ。無理する理由も無いやろ。」「マサこそ、これを半年掛かって、旨いと思わんと云う事は一生、旨いとは思わんのとちゃうか?」

「いや、1年間は保証期間のはずやから。」

「アホっ、相変わらず、なに訳のわからん事言うてるんや…」「…んっ……唐揚げに無茶苦茶合うやんか。甘いモンは元々好きや無いけど、これはもう、ジュースなんか飲んでる場合や無くなったわ。」

「ええんかどうかは別として、夕子は間違い無く、私ら夫婦の子供ですなぁ…遺伝子は正直ですわ。突然変異なんか滅多な事では起きへんのですなぁ。」

「そうやな、後はアルコールに対しての反応と抵抗力がどうかやなぁ?」

「うん、うちもそれを気にして、今日は様子を見る程度にするつもりやったんやけど…今のところ何の反応も感じられへん。」

「おい夕子、俺の経験から言うとな、急に来るんや…調子に乗ってたら気を失うど。」

「あんたに、その紅ショウガより赤い顔で言われても、何の説得力も無いやろ…まだビールも半分残ってるし……」

「半分、飲んだと云う事やないか。」

「アホっ、偉そうに言わんとき。」「よっしゃ、いくら何でもこのままでは終わられへん。マサは焼酎のロックにチャレンジしたけど、実は匂いにクセが在るやろ。うちはウィスキーの匂いが好きやったんや…お父ちゃんの角瓶飲んでもええやろ?」

「もちろんや。自分で口に合うように調節したらええ…参考までに言うとくと、10%がベストやと思うで。」

「10%やな…まずはそれでいってみよか。」「角瓶が40%と云う事は……まぁ…こんなもんやろ……」

「えっ、俺の焼酎はロックやったけど、濃いと思うたわ…それが原因やったんとちゃうんかなぁ?」

「絶対に違うやろ。最終的には体に入ったアルコール量の問題やからな。昌幸、今のお前にはビール1本が限度やと思うで。」

「はぁ、けど夕子、俺にも味見におんなじ物を一寸だけでええから作って欲しいわ。」

「よっしゃ、ちょっと待ちや…」「うわ~、これはビールなんかと比べモンにならんほど美味しいで。」


 「はい、マサの場合まずはこれだけにしとき。」

「うん、ほんまや、ええ香りやなぁ……」

「マサ、明日は仕事やで…それと最初のビール1本の範囲で正気を保つんやで。」

「わ、判ってるわ…だいぶ効いて来たからなぁ。もう2度と気を失うたりはせえへん。」

「学習機能が身に付いて来たようやなぁ。よっしゃ…うち、次は日本酒にいってみるわ。1杯目はやっぱり冷やな。」

「おいおい、2杯目の燗も予定に入ってるんか?」「俺はボチボチ限界やど。」

「予定では、最後は焼酎も味見して終わりなんや。」「せやけど、あんたは、ほんまにその辺にしときや。顔色が赤から青へ変りかけてるわ。うち、長年お客さんの様子を見て来たから判るんや。」

「冷…酒や無うて、水をくれるか……」


 「はい……これも学習機能か?」


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