夕子、西成区、花園町在住。 第56話       (お母ちゃんの事・・・)

 「お母ちゃん・・・お母ちゃんの事考えとったら、顔を見とうなったから来たんやけど・・・よかった・・・?」

「うん・・・それは、かまへんけど・・・」

「食べるもんなんか、別に、なんでもええし・・・」

「あっ、それやったら丁度ええわ、鳥の釜めしが残ってる・・・ふたつ在るから、昌幸くん呼んだってもええで・・・急には無理か・・・?」

「めっちゃ喜ぶわ~・・・実はもうすぐ来るはずや・・・うちかて嬉しい・・・ええ時に来たわ。」「うち、お母ちゃんの事考えて落ち込んでたから、マサに付き合うて欲しいて、誘うたんや・・・マサにしてもタナボタやで・・・」


 「夕子・・・私の事…何を考えて、落ち込んでたんや?」

「ううん・・・もうええねん・・・うちの期待が先走りしとったんや・・・一緒に正月が迎えられたらええのに・・・って・・・せやけど、しゃ~ない事やって判ってる・・・」

「夕子・・・」

「必ず帰って来てくれるんやろ・・・それやったら、無理は言わへん・・・いつでもお母ちゃんのええ時でかまへんから・・・。」

「・・・夕子…堪忍やで・・・今となっては私が悪いんですわ・・・お父ちゃんを責めたらんといてや。」

「うん・・・お父ちゃんが努力してるのは知ってるから・・・残ってるんは・・・あと一人か二人みたいや・・・それを無くしてしまわんとアカン。」「…せやから、やっぱり悪いのはお父ちゃんなんやろ・・・?」

「夕子・・・そうや無い・・・違うねん。お父ちゃんの事はもう、誤解してへんし、信用もしてる・・・どない言うたらええのんか・・・その~夫婦に戻るって事は、どう云うことか分かりますか…?」

「・・・えっ、それって・・・まあ解かるけど・・・元々はお母ちゃんとだけしてた事を、飛田のお姉ちゃんともしてしもうて、それで、お母ちゃんが怒ったんやけど…また、お母ちゃんとだけしかせえへんようになるって事・・・とちゃう?」

「・・・あんた、結構どぎつい事…こねくり回して、うまい事言うねんなぁ・・・まぁ、そうです・・・その意味も解かってますのんか…?・・・たとえば、どんなこと、するのんか…?・・・とか・・・」


「・・・あんまり判らへんけど・・・それで、赤ちゃんが出来るんやろ?・・・犬のヤツ見た事あるねん・・・」


「あ~~~~~っ、・・・夕子、それは・・・ちょっと・・・意味は、まぁ…おんなじですけど・・・することも…いや、それは違う…同じ事なんかしたら、ちょん切らんと・・・アカン・・・違う…まぁ…その・・・いややわ~~」

「お母ちゃん、じっとしてえや、なに…モジモジしてるん・・・?」


「・・・はっ・・・そう、そうです。・・・それって神聖なもんですねん・・・せやから、女の夕子には解かって欲しいんですけど、他の女の人に触った手で…触られるのが・・・おんなじ事されるのが・・・いや…って言うか・・・抵抗が在りますねん・・・意味が判りませんやろか・・・?」

「・・・解かってる・・・と思う、なんとなくやけど・・・うちが、お母ちゃんやったとしても、厭やと思うと・・・・・・・思うから。」


「…そ、そうか・・・ありがとう・・・。」



 「夕子・・・おばちゃん、お邪魔してもいいですか・・・?」

「はい、もちろんです。夕子から聞いてます・・・今日は、夕子も大好物な、鳥の釜めし食べさせてあげるから・・・夕子、今の話で取りあえずは、堪忍しといてね・・・さぁ、すぐに用意しますよってに。」

「うん、お母ちゃん有難う・・・マサもよかったな・・・大当たりやで。」

「めっちゃ嬉しい・・・棚から牡丹餅や~・・・おばちゃん、有難うございます・・・けど、ほんまに、ええんですか?」

 
 「かまへんよ~・・・気ぃ使わんとき。」

「へへっ・・・やった~」「夕子、有難うな、お前も元気が出たようやし・・・ほんまに良かったわ。」

「うちも、落ち込んだり、元気が無かったりしてるんは、マサにしか見せられへん・・・ゴメンやで・・・」

「そんな事は・・・けど、夕子は俺に、『マサはマサらしい、しとったらええ』って言うたやんか・・・俺もそう思うんやけど、今日の夕子も夕子なんやなぁ・・・」


 「マサ・・・」「そうや・・・めったに無いけど、こんな事も在る・・・これも、うちやねん。」


 「・・・うん。」


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夕子、西成区、花園町在住。 第57話        (昨日の釜めし・・・)

 「昨日の釜めし、美味しかったなぁ・・・今度はいつ、食べられるんやろ・・・いっぺん食べたら癖になってもうたわ~。」

「昨日は特別やで、あれは店の売りもんやし、たまたま、二人分残ってたんや。」

「そうか~・・・俺、正月になって、お年玉もろうたら、お客さんとして食べに行こうかなぁ。」

「やめてや。マサからお金は貰いにくいやろ・・・釜めしまで、お年玉になってしまうやんか。」

「え~っ、そうかなぁ・・・お金払うても食べたいんやけど・・・」

「そら、売りもんやからなぁ・・・。」

「ほんなら・・・」

「マサは、またの機会を楽しみにしとき・・・チャンスは巡ってくるから・・・」


 「う~ん・・・クリスマスプレゼントも受付中なんやけど・・・」

「・・・そら、良かったな~、うちの家では、『日本にクリスマスは存在せえへん。』…と、云い張って聞かへんおっさんが居てるんや・・・あんたの尊敬するおっさんやけど、どうする?」

「・・・青田先生がそう云うんやったら、日本にはクリスマスは無いんやろ・・・しゃ~ないやんか・・・だいたい、柔道とクリスマスなんか似合わんからな。」


「もともと、くっ付ける必要も無いけど・・・あんた、お父ちゃんの言う事やったら、何でもええのんか?」

「当たり前やろ、先生は男らしい上に、正義の味方なんやど・・・間違うた事を言うはずがが無いやろ・・・」

「・・・それで、女風呂かいな・・・?」

「・・・あ、あれは~~・・・ちょっとした・・・やなぁ・・・なぁ、もう忘れてくれ~・・・今もこれから・・・ちゃんと宿題はしてからやで、先生と約束があるんや。」


「ようするに、うちに来る訳やな・・・?」

「そう云う事になるわなぁ・・・」

「ろくでも無い相談やろけど・・・なんか、悪い予感がするわ・・・」

「アホな事言うな・・・男同志の大事な話やないか・・・たぶん・・・」

「・・・ふ~ん、そうか・・・勝手にしぃ・・・うちは知らん。」




 「先生、お邪魔します・・・昌幸です。」

「昌幸、ちょっとだけ待っといてくれるか、この人で最後や…もうすぐ終わる・・・。」

「はい、待ってます・・・あの~夕子は…?」

「出て行ったで・・・今はおらん。」

「あっ、・・・そうですか・・・。」



 「マサ、待たせたな・・・終わったぞ。」

「はい・・・いえっ・・・そんなに待ってませんから・・・それで、僕に話ってなんですか・・・?」

「うん・・・それなんやけどなぁ・・・お前、礼儀正しいのは、ほんまに褒めたる・・・別に、俺に対してだけや無いのも知ってる・・・ほんまに偉いぞ・・・」

「有難うございます・・・けど、やっぱり先生には特別・・・」


 「そこや!」

「えっ・・・」

「ええか昌幸、俺はお前に、嘘なんか言わへんし、悪い事も教えたりするつもりも無い。」

「そんなん・・・解かってます・・・当たり前ですやんか…先生・・・。」

「うん・・・ほんで、色々と話をするうちにや・・・なっ、話はおもろい方がええやないか?」

「それも、当たり前やと・・・」

「そ~~なんや。せやから、嘘とか悪い事とは別に、中には色々とおもろい話が混ざるわなぁ・・・ええか?」

「はい・・・。」

「・・・で、ここは、こないせんとアカンとか・・・こう、心掛けろ…とか、そんな話はや…そう云う部分は、よう聞いて、守ってほしい・・・けどな、ここは笑いを取るとこやな~と思うたら・・・そこは…ただ、笑っとたらええねん。」


 「・・・先生、風呂の話…してます?」

「・・・お、いや、何もかんも合わせての事やけどな・・・」「そうや、風呂の話や。」

「やっぱ・・・・はい。」

「…うん、あれは…マズイ、あれは~アカン・・・あそこが、ただ、笑っとったらええとこやったんや・・・分かるか・・?」

「はい・・・分かりますけど・・・ほんまに、ごっつい笑いました・・・けど、先生、真似したらアカンって言いましたやん・・・?」


 「せ、せやろ・・・言うたやろ~、言うたはずや・・・」


「・・・あの、真似したらアカンは・・・『真似してみぃ…おもろいで~~』と、しか・・・僕には聞こえませんでしたんですけど・・・・・」


「・・・?・・・?・・・なんで、なんで…そうなるんや~~~~~」


「なんで、って言われても・・・先生は『あれで何べんも楽しい思いをした』って、言うてましたやん・・・何べんも・・・って言うてるのに、真似したらアカン…言われても・・・」

「アホっ、俺は、見つかったり、バレたり…してへんから・・・ちゃうちゃう…何言うてるねん・・・・・アカンねん・・・」「ほ、ほんなら、あの日・・・いろんな話をしたわなぁ・・・体の鍛え方とか・・・重心の位置を見抜くんや…とか・・・」「・・・お前、次の日から、すぐに実行に移したって…ほんまか?」


「・・・はい・・・あの話、聞いてから・・・他の事は考えられへんように・・・」

「・・・昌幸~、お前…ほんまに他の話は、何にも・・・」

「いえ、洗面器をピラミッドみたいに積み上げて・・・云うやつは、まだ・・・実行には・・・」


「するな~~~~~。せんでもええ~~~」


「あれは、僕一人でも・・・良文を誘わんでも出来るから・・・」

「出来んでええ~~~ねん!」

「先生…二度と、バレるような事は・・・」

「するな~…したらアカンぞ、絶対や…」



 「なにが・・・二度と、バレるような事やねん?・・・絶対したらアカン事ってなんやねん・・・?」

「あっ・・・夕子さん…お帰りなさい。」

「二人でハモって・・・悪い予感は、当たっとったみやいやなぁ・・・」

「なぁ、夕子・・・誤解したらアカンで、俺はちゃんと、昌幸に一言、釘をさして・・・なぁ、昌幸?」


「はい。」「・・・夕子、ほんまやど、先生は『俺はバレへんかったから、良かったけど、お前はバレたんやから、二度と・・・それに、もうひとつ教えたやつも、やったらアカン、するな…絶対に。』って言うのが・・・お前も聞いた、今の会話やったんや。」


「昌幸~~~~~お前なぁ~~その通りなんやけど・・・他に言い方が・・・なんぼなんでも、素直過ぎるやろ~~」


 「マサ!」

「はいっ・・・?」

「帰り!」

「えっ・・・はい、お邪魔しました。」

「なぁ昌幸、まだ早いで、もうちょっとええやろ・・・」 


「マサは、帰るんや!」

「なぁ、一人にせんといて・・・くれ・・」

「先生、失礼します・・・」


 「お父ちゃん!・・・」

「はいっ・・・」


  「・・・●□▼◎・・・・!!!!!」


夕子、西成区、花園町在住。 第58話     (ちょっと一杯飲ませて…)

 「・・・ちょっと一杯飲ませてくれるか・・・?」

「あら、サブちゃん…丁度、暖簾をはずすところですわ・・・」



 「・・・ふ~~~っ」

「どないしましたんや・・・?」

「こっぴどく、夕子に怒られた・・・」

「・・・それは、大変でしたなぁ…鬼の三郎も夕子にはタジタジですか・・・」

「こてんぱん、や・・・」

「気にはなるけど、何で怒られたんかは…聞きませんわ。夕子がそんだけ怒るって事は・・・今の状況で、私の耳に入ったらマズイ事なんですやろ・・・?」

「その通りや・・・」

「けど…実際には大した事や無い・・・」

「その通り・・・」

「大した事や無いから、ここに来た・・・」

「・・・なんでも解かるんやなぁ・・・その通りや・・・」

「私らには笑えても、夕子の年頃には大変な事・・・今、私の耳には入れたく無い事・・・女に関する話・・・この前からの流れ・・・お風呂やね・・・」


 「・・・・・・」

「もう…言葉も出ませんか・・・?」 


「そ、その通り・・・」

「他のセリフも、聞かせてぇな・・・」

「ほんまに、恐ろしいわ・・・びっくりや」

「・・・夕子は私には絶対に内緒にしたい、せやのに・・・まさかサブちゃんの口から、私の耳に入ってるとは・・・」

「そうやな・・・けど、夕子の本気さが、いじらしいて・・・お前に聞かせたくてなぁ・・・この間も、今日もな・・・あいつ、こんな話がお前に知れたら…って、俺に、本気で説教するんや・・・」


「・・・それに、こんな話を私に聞かせたら・・・私の気持ちも刺激出来る・・・」

「・・・そ、それは・・・・」

「その通りですやろ・・・?」

「…その通り・・・せやけど・・・夕子の気持ちを利用するつもりとは違う・・・そんな夕子の気持ちを、お前が知らんと終わらせる訳にはいかんと思うて・・・」


「わかってます・・・サブちゃん、有難う。」

「・・・うん。」


 「狙いは・・・外れてませんで・・・」

「ほんまか・・・?・・・それで・・・?」

「この間、夕子と・・・ちょっと大人の話をしましたんやけど・・・どこまで、ほんまに解かってくれたんかは疑問なところもありますけど、『お父さんの事は信用してる、今は、誤解もして無い…』って・・・」


 「うん、・・・それで・・・?」

「あとは・・・私の気持ちの問題やと・・・せやから、お父さんを責めたらアカンよ…って・・・今はもう、悪いのはお母ちゃんの方なんやから…って。」


「・・・いつから、お前の方が悪うなったんや・・・?」

「それは・・・もうちょっと、内緒にさせといて・・・夕子に聞けるんやったら・・・別に、口止めはしてませんけども・・・」


「いや、お前の口から、聞きたい・・・」

「・・・はい・・・その時が、私の戻る時やと思います・・・。」

「家に戻って来てくれるんや・・・」「ここまで来たら、もう、慌てへん・・・ゆっくり待つ事にするわ・・・」


「戻るんは・・・家や無うて、あんたの胸です・・・忘れんといて。」


 「洋子・・・」

「・・・はい・・・」

「・・・よ・う・こ・・・」


 「アホっ!・・・まだアカン!」

「えっ・・・?・・・なんで・・・」

「なんでもや!…それが、理由なんや!」



「・・・それが・・・理由・・・?」

「そう・・・それが・・・」


「・・・そろそろ・・・帰った方が良さそうやな・・・」


「・・・はい・・・お休み・・・」


    
      (サブちゃん・・・ゴメン)



夕子、西成区、花園町在住。 第59話       (おーい、夕子・・・)

 「お~い…夕子、待ってくれや~・・・」

「・・・夕子ちゃん、昌幸くんが・・・」

「し~っ・・・恵子ちゃん…ほっといたらええ・・・振り向かんといくで。」

「お~い・・・なぁ夕子って・・・」

「・・・あんた…誰?」「・・・恵子ちゃん、いくで・・・」

「えっ・・・夕子・・・なんで・・・?」

「気やすう、人の名前、呼ばんといて。」

「…夕子ちゃん・・・昌幸くん・・・かわいそうやん・・・」

「せやど、どないしたんや・・・ほんまに・・・」

「どないもせえへん・・・知らん人とは口を聞いたらアカンって、学校の先生かて、いつも言うてるやろ。」

「そんな・・・知らん人って・・・昨日、俺が帰ってから、先生とどんな話をしたんや・・・?」


「・・・先生?・・・先生って、うちに一人居てる、スケベなおっさんの事か・・・?」

「・・・・・」

「なぁ、夕子ちゃん…わたし、先に帰るから・・・バイバイ・・・」

「うん、ゴメン…バイバイ・・・」「アホ!、みてみい、恵子ちゃんに気ぃ使わせてしもうたやんか。」

「・・・そ、そんな事・・・何をそんなに怒ってるんや・・・?」

「アホ~~っ!・・・うちにとって今、一番大事なんは、お母ちゃんに、一日でも早よ帰って来てもらう事なんや。」「それを邪魔する奴は許されへんのや・・・」


「え~っ・・・そんな事、全然・・・」

「一番悪いのは、お父ちゃんか、マサなんかは…ややこしいけど、お父ちゃんには、昨日、ボロカスに言いたいだけ言うたから、ちょっと、スッキリしたんや・・・あとは、あんたしか居てへんやろ・・・」

「スッキリするんやったら、ボロカスに言うてくれ・・・たのむわ~」


「素直なんもええけど・・・マサは、とにかくいらん事をせんといて・・・」「ちょっとでも・・・お父ちゃんが、お母ちゃんに嫌われる事があったら…アカンねん、困るねん。」

「・・・俺は・・・別に・・・」

「そうや・・・あんたは、お父ちゃんにも、お母ちゃんにも好かれてる・・・怒ってるのは、うちだけや・・・」「なぁ、もう一つ、教えてもろた事って・・・?・・・勇気が在るんやったら、やってみるか・・・?」


「・・・なんの話か、知りませんけど・・・仮にそんな話が在ったとしても・・・絶対にやらない自信が在ります。」


「自信なぁ・・・」「壁の向こうに居てるんは・・・今田のお姉ちゃんかも知れへんで~~・・・」

「ゴクっ・・・仮の仮の話・・・万が一の時には、僕では無く、もう一人の僕を怒って下さい・・・」


「アホっ!」「・・・やっぱり風呂の話やったんやなぁ・・・」

「はっ・・・!・・・」


「ほんまに、あんたら…しゃ~ない生きモンやなぁ・・・アホがほんまに・・・」「それになぁ、マサ・・・あんた、この頃…そのアホにさらに、磨きが掛って来たらしいやないか・・・」「せやから…ちょっと、あんたと仲がええって、言われるんが恥ずかしいなって来たんや・・・」


「え~っ・・・アホは認めるけど、磨きなんか掛かってへんやろ・・・」

「それやったら言うけど、こないだの社会のテスト・・・人の名前を聞かれてんのに「あの人」とか「女の人」とか書いて・・・最後は、聖徳太子って書くとこ『お札の人』って書いて、坂口先生にごっつい怒られたんやろ・・・?」

「いや、あれはやな…テストって時間が決まってるやないか・・・『あの人~~~』って、ここまで出て来てるのに、間に合わへんかったんや…聖徳太子もそうや…『お札の人~』って…なっ、ほんで…『ん~時間が無い~』・・・書くしか無いやないか・・・」


「・・・素直に・・・?」


「そ、そうや・・・素直に…なっ、もう俺の代名詞なんや・・・気楽に「素直なマサ君」って呼んでくれたらええで。」


「アホっ・・・とどめは授業中に地図の名前を聞かれてんのに…『五万分の一』って、わざわざ手まで挙げて答えて、大爆笑にはなったけど、廊下に立たされとったやないか・・・これはもう、学校中で有名な話や。」


「うっ…せやけど、思いついたら、言わんとしゃ~ないのが俺とお前の性格や・・・廊下には立たされたけど、先生も『センス在るやないか~』って、一緒に爆笑しとってんど・・・」「けど…『ふざけたらアカン!』って最後は立たされたんや・・・」


「センスは在る…確かに…。」「けど、うちまでマサと一緒にせんといて、なにが、『思い付いたら、言わなしゃ~ない』ねん。」

「ほんならやで・・・お前、おんなし場面で『五万分の一』って、頭に浮かんだら…ど~するねん・・・?」


「・・・・・」

「なっ、俺とお前は一緒なんや。」

「・・・悔しいけど、認めるわ・・・」

「せやろ~・・・なぁ、ついでに機嫌も直してや・・・おばちゃんの事は・・・ゴメン。先生の事も、なんでもかんでも真似するんはやめるから・・・ええとこだけを見習うようにするし・・・なっ・・・。」

「それは、もうええ・・・恵子ちゃんと一緒やったから、ちょっと…いちびっただけや・・・」「ほんでもみんなから、あんまりマサと、仲がええ、仲がええって言われるのんも、ちょっと恥ずかしいねん・・・あんた、ほんまに…ええ加減、アホな事ばっかりすんのやめてや・・・お父ちゃんもお父ちゃんやけど・・・」


「おう、まかしとかんかい・・・特に先生の事は、お父さんと呼ぶ日がくるまで・・・」

「ぜったい!…そんな日は、け~へん!…」「ごきげんよう、さようなら・・・」


「じょ~だんやん・・・なぁ夕子・・・」


 「・・・あんた、誰…?・・・」

 「そんなぁ…」「逆戻りや~~~」
 

 「アホっ、バイバイ・・・」

 「うん…またあしたなぁ~」
 

 「わかった・・・またあしたや…」

 「ほな、あしたは・・・普通に・・・」


  「しつこい!」


夕子、西成区、花園町在住。 第60話    (ただいま…お父ちゃん…)

 「ただいま・・・お父ちゃん・・・居て無いんか・・・?」


 「夕子~、台所や・・・お帰り~」


 「何してるんや・・・?」「おばあちゃんは・・・?」

「見たら解かるやろ・・・料理や。」

「・・・たしかに・・・けど、なんで・・・ごっつい魚やなぁ…グレやんか、どないしたん?・・・2尾も・・・50センチ以上あるで・・・」

「クリーニング屋が持ってきよったんや・・・『サブ…大漁や、大漁~』って叫びながらな・・・ヨイショ…ん、いっちょあがりや・・・もう一尾は刺身でいこか・・・」

「へ~ぇ・・・上手いもんやなぁ…美味しそうやんか・・・」

「まかさんかい・・・お前が生まれた前後は、お婆はんと俺とで、どんだけ店の手伝いやったか…お前、知らんやろ・・・。」

「…それも『へ~ぇ』やけど…そら知らんわな…うちは・・・」

「・・・と、とにかく・・・そう云うこっちゃ・・・味も洋子仕込みやから、間違いないで~」

「うん…それは、うちかて見ただけで美味しいのんは解かるで~大したもんや・・・」

「せやろ、せやろ~」

「煮物は、色・ツヤ・匂いで味まで解かる・・・お母ちゃんの決まり文句や・・・うちかて解かるで~これは旨い・・・ほんで、もう一尾はお刺身にするんやな・・・ほんでも、こんな大きなグレ、見たこと無いで…食べきれへんやんか・・・」

「それも、考え済みや・・・其の一、マサも呼んだるんや・・・其の二、煮付けの半身と刺身も適当に『洋子』へ持って行く・・・其の三、店からたまり醤油とワサビをもろてくる・・・どや・・・?」


「今日のお父ちゃん…中に他の人…入ってるんとちゃうやろな・・・?」

「・・・アホっ・・・其の一や、マサ呼んできたれ・・・早よ行ったらんと、藤川さんとこかて都合が在るやろ・・・」


「せやな!・・・うち、行って来るわ。」


「…その間に刺身も完成や・・・お婆ちゃんもそろそろ帰ってくるやろ・・・あれっ・・・夕子…は?」


 「わかった~・・・聞こえてるで~」

 「はやっ!」



 「こんにちは~昌幸くん、居てますか~」

「・・・あっ、夕子ちゃん・・・約束してたんか・・・?」

「いえ、急にちょっと・・・」

「・・・もう、帰って来る頃やけど、良文くんとお風呂行ってるんよ・・・もう、アホな事はせえへんと思うけど、なんや早よ行くクセが付いたとか言うて・・・」

「・・・え~っと、私が来た事は黙ってて下さい・・・お邪魔しました。」


 「あの、アホっ・・・ほんまに・・・」

「…お~い、夕子~・・・どないしたんや・・・?」

「何でも無い!・・・だだの散歩や!」

「ちょ、ちょっと待ってや・・・俺の家から出てきとったやないか・・・?」

「・・・あんたの見間違いや…ほなっ。」

「ちゃ、ちゃうやろ~まだ、怒ってんのんか~・・・」


 「アホっ・・・そんなもん、とっくに忘れてるわ・・・新たな疑惑や・・・」

「ちょ、ちょっと待て・・・新たな疑惑て・・・風呂か…?、風呂やな…?、違うんや、なんぼ俺でもそんなアホな事はせえへん・・・クセになってると言うんか・・・良文が迎えに来よるもんやから・・・なっ・・・分かってや~~~」


 「・・・分かった。」

「えっ、ホンマ…?」


「もう一つ、教えてもろうた事にチャレンジしてるんとは…違うやろな・・・?」

「違います。」


「・・・早よ帰って、おばちゃんに、今日の晩御飯は夕子の家で食べるって…言うておいで・・・」

「・・・?・・・」

「イヤなんか・・・?」



 「・・・おかん~~・・・今日の晩御飯・・・・」


   「・・・アホっ・・・」



      …61話へ 続く・・・・・
      

夕子、西成区、花園町在住。 第61話       (60話~の続き・・・)

 「お父ちゃん、行ってきたで~、お母ちゃんも喜んでたわ・・・『グレなんか、市場ではなかなか手に入らへん…』って言うて・・・『ちゃんとお礼言うといて…』とも言うてたで・・・なぁ…マサは・・・?、まだか・・・?」「ん…?・・・来た!」

「うわっ!・・・びっくりするやん・・・なんで分かったんや・・・?」「あっ、今晩は…お邪魔します。・・・え~今日は御招きに・・・」


「昌幸!」

「はい!…」

「早よ上がってこい…」

「・・・はい。」


 「マサ…あんた、全速力で走って来たやろ・・・?」

「…来たけど・・・?」

「玄関の前で一旦とまって・・・一息ついたやろ・・・それで分かったんや。」

「・・・ホンマ・・・に?」

「昌幸、どないしても夕子には…今のところ、かなわんようやな・・・?」

「・・・はい・・・ようです・・・」

「なぁマサ、素直に認めんといて・・・あんたみたいな『やんちゃもん』がそんな事言うから、うちの評判が下がるんやで・・・ほんまに・・・」

「えっ、評判…上がるんとちゃうんか…?」


 「男の子やったらな・・・」

「え~先生…今日は何を食べさせてもらえるんですか・・・?」

「ふっ…魚料理や・・・グレやぞ。」「まだ年末とはいえ…そろそろ油も乗って旨いはずや・・・煮付けと刺身やけど、腹いっぱい食べて行け。」「御飯はお婆ちゃんが、特別にかやくご飯を作ってくれた・・・麺類とちゃうんやど、今日は・・・」


「いつも麺類で悪おましたなぁ・・・もう、ちょっとで炊けまっせ…」



 「・・・旨い!」

「・・・ほんまや~」

「はい、めっちゃ旨いです・・・僕、この魚食べるの初めてやと思います。」「あっ、かやくご飯も、めっちゃくちゃ旨いです。」

「昌幸、お前ほんま、ええ奴っちゃな・・・せや・・・魚屋ではまず見かけへんわなぁ・・・ほんまに、よう礼を言うとかんとアカン・・・無理やり洗濯もん作って、持って行ったろか…?」


「そんなアホな事・・・かえって失礼でっせ・・・」

「うん、お婆ちゃんの言う通りやで・・・他の事、考えたほうがええと思うわ。」

「アホっ、冗談やないかい・・・なんぼ俺でも解かってるわ。」

 「えっ、冗談やったんですか・・・?」


「これや~!、これが問題なんや…マサ、あんた…ほんまに・・・」

「…うん、どうやらそのようやな・・・昌幸、ここもただ、笑うとったらええ処なんや・・・分かるやろ~・・・ほんまの話・・・」


「・・・いや~、さすが先生や…ええ考えやと思うてたんですけど・・・」「クリーニング屋さんに洗濯もん持って行くんやから、大正解ですやん・・・ラーメン屋に持って行っても、お礼には・・・不向き・・・」

「に、決まってるやろ!・・・昌幸、お前なぁ…」「お前・・・オリンピック選手になれんかったら、漫才師しか道は残ってへんぞ・・・」


「やめて、お父ちゃん!」「マサ、本気にしたらアカンで…」「あんた、今…眼…キラリとさせえへんかったか・・・?」

「…えっ・・・いや…一生懸命頑張って…それでもオリンピック選手になられへんかったら・・・そうか、漫才師になったら…ええんかなぁ…なんて・・・」


「アホっ!警察官はどこいったんや」


「あっ・・・」

「アホっ、なにが『あっ』やねん・・・柔道…オリンピック…警察官…や、ええか、オリンピックがアカンかっても、この順番からオリンピックが抜けるだけなんや・・・うちは絶対、夫婦漫才なんかせえへんからな。」


 「えっ・・・?」

 「えっ・・・・・・」


「アホっ、仮の話や!」「・・・お、お父ちゃん、よう分かったやろ、マサには特別、気を付けてしゃべらんとアカンねん・・・もう、なんべんも言うてるのに・・・」



 「・・・夫婦漫才も…面白そうやけどな・・・昌幸はどない思う・・・?」

「うわ~お父ちゃん!・・・やめて・・・」

「・・・・・」

「マサ~、真剣に考えたらアカン。」


「…僕は・・・やっぱり警察官を目指して・・・ほんで・・・」

「ほんで…アカン時には・・・?」


  「…夫婦漫才。」


 「うわ~・・・」「えらいこっちや…」



夕子、西成区、花園町在住。 第62話       (いらん事言うたら・・・)

 「いらん事言うたらしばくで・・・」

「・・・いきなり睨みつけて・・・どないしたんや…?」「まだ、なんにも言うてへんやないか・・・?」

「そのまま、だまっとり…」

「なぁなぁ…俺が言う事、分かってるんか・・・?」

「…口がしゃべりたがってるやないか・・・内容はあんたの事やから、大体の想像はつく・・・」

「えっ~そんなん…分かる訳、ないやろ~」


 「わかるんや!・・・」

「ほな、確かめてみようや・・・」

「たしかめんでもええ・・・判ってる。」

「なぁ…頼むわ~確かめさせてくれ~」

「・・・・・」

「どんだけ考えて来たと思うてるねん・・・ゆうべ、寝られへんかったんやで…」


「今ので、うちの考えが正しい事が証明された・・・絶対に言うたらアカン。」

「そんなぁ~・・・」


「それから、とうぶんの間、うちの家には出入り禁止や・・・忘れたらアカンで…」

「え~それも~」「…そんなぁ~・・・」

「そんなぁ~も、ヘッタクレもあるか!・・・お父ちゃんとマサが揃うたら、ロクな事が起きへんやないか・・・ホンマ・・・」

「なぁ、今日だけでもええから・・・いや、それも困るけど・・・なぁ、頼むわ~この話は先生にも聞いてもらわんと・・・」

「・・・・・」

「なぁ・・・今、ちょっと面白そうやなぁ・・・と、思うたんとちゃうか・・・?」

「違うわ、アホっ!」

「俺かて、お前の事は…色々と判るんやで・・・『今日だけでええから・・・いや、それも困る』って言うたとこで、ちょっと、ウケとったやろ…こらえた時に鼻ふくらんどったど・・・」

「…クソ~っ・・・そんなに、おもろい事も無かったのに・・・なんでやろ・・・?」

「なっ、ルール上、笑わしたら勝ちなんやから…ええやろ・・・?」

「アホッ!そんなルールあるかいな・・・」

「ここは・・・大阪やで~」

「・・・・・」「…アカンアカン…なに言うてるんや・・・」


「今かて、一瞬・・・なぁ、最初の質問だけでも聞いてくれへんか・・・?」

「・・・最初の・・・質問・・・?」「質問やったんか・・・?」

「せやで・・・。」


「・・・いや、絶対に内容は『アレ』のはずや・・・」「そんなに言いたいんか…?」

「うん。」


「・・・一応聞いたろか・・・?」

「うん、うん。」


「言うてみ・・・」

「漫才のコンビ名…何にする・・・?」


「・・・頭、クラクラしてきたわ…予想では『おい夕子、コンビ名、考えて来たったど。』・・・これしか無いと思うてたんや・・・」「けど、マサの事やから…ど~せ五つぐらい考えて来たんやろ・・・夜も寝やんと・・・」

「お・お・当たり・・・」


「ほんで、それが言いとうてしょうが無いんやな・・・」

「お・お・当たり・・・」


「たまらんなぁ~、その為に、うちに遊びに来るんか・・・?」


 「お・お・当・・・」

   「もう、ええ!」

       「たり・・・」


「あんなぁ、面白いのはええんやけど…あんたの場合…本気やったりしたら厭なんや・・・あくまでも、盛り上がりと乗りとでの話やで・・・判ってるやろなぁ・・・?」

「わかってるって…大阪に生まれた運命やと諦めんとしゃ~ないやろ・・・」

「言うとくで・・・第一に、五百万歩譲ったとして…漫才はあっても、夫婦は無い。第二に、オリンピックは頑張った結果や…アカン時は仕方が無い、けど、真剣に柔道やって、警察官を目指す、一旦そう決めたんやから・・・くじけたりしたら、夫婦どころか友達でも無くなるからな…覚えときや・・・」


「・・・覚えとく…五百万歩か・・・」

「それは漫才の場合や・・・」


「夫婦の場合・・・は・・・?」

 「譲りようが無い・・・」

 「なんで・・・?」


  「ゼロやからや!」

夕子、西成区、花園町在住。 第63話        ( ただいま~・・・)

 「ただいま~」

「おう、夕子、お帰り・・・」

「今日も仲良う、マサと帰って来たんか・・・?」

「・・・腹の立つ言い方せんといて、毎日の事や・・・明日からやめよか・・・?」

「おいおい、そんな事言うな・・・昨日は美味しい上に、おもろかったし・・・昌幸のこっちゃから早速・・・なんか・・・」

「お・お・当たり・・・や・・・」

「お前も昌幸みたいな・・・」


「マサが言うたセリフや!」「あいつ、夜も寝んと考えた事が在るそうや・・・宿題終わったら来るわ・・・」「お父ちゃん、全然判ってへんやろ・・・?」「ほんまに、マサにしょうも無い事言わんといてや…あいつの脳みそ、ハ虫類レベルなんやから・・・」

「・・・ハ虫類って・・・」

「お父ちゃんは、ただ、面白がっとったらええんやろけど、困るんは、うちやからな・・・ほんまに、たのむで~」

「いや俺も、昌幸には驚かされてるし、お前に怒られるんで困ってる・・・」


「それやったら・・・」

「ん~~とにかく、おもろかったらええ…って性格してるもんやから・・・」

「…それは、うちもや・・・」

「・・・昌幸もやろ・・・?」

「せやけど、あいつの場合・・・脳みそが・・・」

「なんぼなんでも、ハ虫類は可哀そうや・・・ごっついええ奴っちゃで…そう思うてるやろ・・・?」

「それは、まぁ・・・マサよりええ子は見た事無いけど・・・せやから、今日も、せっかく寝んとまで考えたんやから、付き合うたろかなぁ~と思うて・・・」

「うん、来るのが楽しみや。」「もちろん、話は・・・あれ、やろなぁ・・・?」

「マサやで・・・他にないやろ・・・宿題してくるわ。」



 「お邪魔しま~す。」

「おう昌幸、待ってたで…まぁ、上がれ。」

「はい、え~この頃、毎日のように・・・」

「うん、かまへん・・・おい夕子~、昌幸、来たど~」

「上がって来て~」

「おいおい、夕子が降りて来て3人で盛り上がろうやないか・・・なぁ、昌幸・・・?」

「はい是非、先生にも聞いて・・・」

「アホっ・・・まずはうちが・・・」「いや、ええわ・・・降りて行く。」



 「え~もしも、もしも…警察官の夢破れた場合、残された道は、夫婦漫才しか無いと云う先生の言葉を深く受け止め、コンビ名を考えかけたら夜も眠れず、つきましては本日・・・」

「昌幸、ちょっと待て・・・いつも・・・」

「いつも通りや・・・普通にマサや・・・しょ~も無い事ほど…漢字でしゃべりよるんや・・・ハ虫類の持ちネタやねん・・・」

「・・・いろんな事言われて来たけど、ハ虫類は初めてやど・・・どこがハ虫類やねん・・・・?」

「昌幸、顔とかの話とは違う・・・場所を特定するんはやめとけ・・・」

「?・・・??・・・はい。」

 「なぁ、マサの事やから、ベスト5とか云うて・・・1位から5位まで用意してるんやろ・・・?」「・・・5位から、いってみよか・・・?」「降りて来てやったけど、お父ちゃんが一緒やから云うて…どつかれへんと思うたら間違いやからな・・・」


「・・・発表の日時は改めてと云う事でよろしいでしょうか・・・?」

「…やっぱりな・・・うちが怒る事、判ってるのに、いっぺん思いついたら…どないしようも無いって…そんな内容なんやろ…?」「5位からや・・・早よ!」

「・・・・・」

「あんたの頭で、一晩かかったモンが、すぐに作りかえる事なんか出来る訳無いやろ・・・せいぜい順番の入れ替えを、考えてるんやろうけど・・・無駄や・・・早よしぃ!」

「いや、・・・当たってるけど、図星やないで・・・一番は…一番は、不動の一番を考えてあるんや・・・」

「・・・それは楽しみやんか・・・ほな、5位から2位までいってみよか・・・」

「うん昌幸、ここまで来たら観念せえ・・・いざとなっても…助けられへんけどな…」

「…せんせ~・・・」


「5位や!」

「・・・『カマキリ』…。」

 「・・・・・・?・・・」「???」

 「まず僕が…『カマキリのオスで~す』…続いて夕子が『メスで~す』・・・」


「・・・・・・」「・・・お~っ、意表を突いてくるや無いか~…想像して無かったパターンやで・・・カマキリはメスがオスを食べるって話やな・・・昌幸、なかなかの出来やど…なぁ、夕子・・・?」

「・・・まぁええ、・・・たしかに予想して無かった・・・このくらいでは怒れへん。」

「よかった~『ノミの夫婦』も考えたんやけど、大人になったら、たぶん俺の方がでかく成ってると思うし…」

「あんたの頭…しょうも無い事しか考えられへん構造やろ・・・」「4位は・・・?」

「…『蛇と蛙』…」

「・・・マサ、あんた路線変えて来たなぁ・・・まだ、大丈夫やで・・・次、3位や…」

「…『昌幸君とキングギドラ』…」


「…待ってた訳や無いけど、予想通りや、このくらいやったら、全然、大丈夫やで。」「けど、これが3位やと云う事は…1位、2位って・・・?」「2位は・・・?」

「良かった~、ほな、もう大丈夫や。」

「うそやん、ど~いう事やねん…2位は?」

「そんなん、普通に『夕子と昌幸』やんか・・・」

「え~っ・・・あんた、一番はとっておきやて言うてたなぁ・・・アカン、今日はうちの予想がついていかれへん。」


「うん、楽しみや・・・昌幸、1位はなんや・・・教えてくれ。」

 「…『制服と割烹着』…」

「・・・・・」


「・・・・・ええやないか・・・なぁ夕子・・・」

「・・・・・うん・・・」

 「けど、コンビ名には、もう一つや・・・漫才自体もやりとう無い・・・制服姿がカッコ良かったら…うちが女将しながら、このタイトルで小説でも書いたるわ・・・」


夕子、西成区、花園町在住。 第64話      (ほな、おっちゃんら…)

 「ほな、おっちゃんら、後はのんびり楽しんでいってや~…うち、そろそろ帰るじかんやし・・・」

「えっ、もうそんな時間かいな・・・ほんまや、もうちょっとで8時や・・・あっと言う間やなぁ・・・有難う若女将、お疲れさんやで。」

「森川さん、あっという間と言えば…一年も、ほんま、あっと言う間やったと思いませんか・・・もう年末ですよ・・・年末。」

「山ちゃん、ほんまや・・・早かったな~・・・年末や、すぐに正月や・・・年取るはずやわ・・・定年も近いで・・・」

「もう、せやから年寄りは嫌いなんや、なんか言うたら、すぐ、しんみりした話になってくるし・・・そうなる前にうちは帰るで・・・」

「おい、おい、若女将…まだまだ、入口に立ったとこやで・・・ええか、子供、嫁はん、父親母親、老後ときて…最後は必ず思い出話・・・と、どんどん奥へ、奥へと進んで行くんや・・・」


「うわ~、かなわんわ~早よ帰ろ、帰ろ・・・」

「ママ~、俺と藤島にお湯割りのおかわりや・・・山ちゃんはこの年末になってもビールみたいやな・・・北さんは・・・」

「山本さん、ビール抜こか・・・?」

「ああ・・・若女将の、今日最後の仕事やな・・・お願いするわ。」

「ビールなんやから・・・抜くだけや無いで、最後の仕事は・・・山本さん…はいっ・・・」

「あっ、若女将・・・俺もビールもらうわ・・・」

「は~い、北村さんおおきに・・・」

「北さん・・・今…うらやましいと思うて、頼んだやろ・・・?」

「…うん、そうや・・・思わず、たのんでしもうた・・・」

「ほんま…?嬉しいわ~。うち、素直に喜ぶし・・・北村さん…はいっ・・・」

「うん、ありがとう・・・」

「ほな、今度こそほんまに帰るわ~・・・ほら、8時回ってしもうたやんか・・・おっちゃんらは、のんびりしていってや~」

「お疲れ~」「お疲れ~」


 「もはや、わしら全員、若女将にメロメロなんかも知れへんなぁ・・・」

「俺もそう思いますわ・・・」

「西島君やったかな?、そっちの若いお兄ちゃんらもそう思わへんか・・?」

「いや、思いますけど・・・僕らはまだまだ、ママさん目当てが本音ですわ・・・」「だいたい、森川さんら程、若女将に相手してもろてませんから・・・」

「ああ、そ~かも知れんなぁ・・・」

「北さんや俺から見たら、もう、孫みたいな感覚かも分からんで、せやから尚更に可愛いんや・・・」

「・・・それも在るかも知れんけど、なんや独特のモンを持ってるで・・・ほんまに小学生か・・・?、体のちっこい大人とちゃうか・・・?、って思う事…無いか・・・?、俺は在るんやけど・・・」

「そ~なんや、小学生なんや・・・3年やで・・・そない思うたら…怖いわ~」

「せやな・・・ほんま怖いわ・・・」

 「もう・・・うちの娘をみんなで…よってたかって、怖い、怖いって…ほんまに・・・何モンやと思うてますのんや・・・?」

「何モンって・・・小学3年生で、すごく気が付くうえに何でも出来て…時として、色気まで感じるような・・・スーパー若女将・・・なっ…十分、怖いやんか・・・」

「・・・そ~ですなぁ…たしかに・・・」

「ところでママ、年末年始の予定は決まったんか・・・?」

「はい、明日にでも張り出すつもりやったんですけど、27日までで・・・」

「おい、おい、わしらの仕事納めは28日やで・・・困るやないか・・・」

「森川さん、28日は何時までお仕事です・・・?」

「そんなもん…後片付けと、昼からは掃除して終わりや・・・あっ・・・」

「毎年、おんなじ話してますなぁ・・・」

「ほんなら、今年も・・・?」

「はい、皆さんが良かったら・・・」

「もちろんや、なぁ北さん・・・?」

「俺は、最初っからそのつもりや・・・藤島や山ちゃんかてそうやろ・・・森川さん、あんただけが毎年、おんなじ事言うてるんや・・・」

「そない言われたら・・・」「来年もおんなじ話すると思うけど・・・たのむで。」

「はい、はい…せやから28日は、3時半~4時には準備しときますよって、常連仲間で忘年会を兼ねた飲み納めと云うことで・・・どうです・・・?」

「うん、それでたのむわ。」

「異議なし。」

「俺も・・・」

 「あの~僕らも・・・」

「はい、西島さんらも良かったら来て下さい・・・」

「よかった~是非…頭数に入れといてくれますか・・・?」

「もちろんです・・・若女将にも手伝うてもらいますわ。」


 「それはええ・・・楽しみや。」



夕子、西成区、花園町在住。 第65話       (さぁ、いよいよ・・・)

 「さぁ、いよいよ冬休みやど~、明日の土曜日は、日本には存在せえへんクリスマスやけど・・・芳月のアイスクリームぐらいおごったろか・・・?」

「・・・うん、寒うても食べられるもんなぁ・・・有難う…けどな、日本には無かったはずのクリスマスなんやけど、せっかく土曜日なんやし…って事でな明日、お母ちゃんがマサ連れておいでって言うてくれてるんや・・・どうする・・・?」

 「・・・・・」

 「口を閉じる!」

「なぁ夕子、今ここで・・・『今言うた事は嘘や』とか言うたら・・・国によっては死刑やど・・・」

「アホっ・・・どこの国やねん・・・?」

「い~~~や…そのくらい罪な事なんや・・・立ち直る為には・・・もう一回、土曜日のクリスマスが回って来るまで無理やからな…たのむで・・・」


 「今言うた事は・・・うそ・・・」

 「聞こえへ~ん~・・・!」

「アホっ…大丈夫や、お決まりのパターンやないか、うちかて言わなしゃ~ないやろ。」

「…それは、判ってる・・・けど、今の俺には刺激がきつ過ぎる・・・今晩、寝るんが怖いくらいや・・・」

「ややこしい奴っちゃなぁ・・・ええか続きが在るんや…クリスマスって本場では鳥を食べるそうなんや、せやから鳥の釜めしを・・・」

「うわ~~~~~」

「あんたが、ごっつい美味しそうに食べてくれたからって・・・お母ちゃんが・・・」

 「うわ~~~~~」

「なぁ・・・そんだけ喜んでくれたら嬉しいけどな・・・とりあえず、じっとしぃ。」

「ハァ・・・うん。」

「たいがい疲れる奴っちゃなぁ・・・ほんで明日の土曜日は終業式でおわりや、ええか…量も少ないし、昼から『洋子』に行くまでに宿題を終わらせるんやで。」

「・・・えっ・・・?」

「心配せんでもええ・・・一緒にやったる・・・昼御飯食べたら、うちにおいで。」

「・・・わかった・・・夕子、お前・・・今日は矢印のしっぽ、収納したままやなぁ・・・」

「すぐに出せるで・・・」

「・・・と云う事は、トゲの生えた矢印のしっぽを認めるわけやな・・・?」

 「マサっ!」

 「生えた~…バイバ~イ」「あした楽しみにしてるからな~」


  「アホっ・・・バイバイ。」



 「・・・ふ~っ・・・」「先生・・・サブちゃん…よかったわ…有難う・・・」

「・・・はい・・・」

「・・・約束です・・・今日が最後…今日で終わりにさせてもらいます。」

「・・・琴美さん・・・すんません…有難うございます・・・」

「いえ、今日まで無理してくれはって・・・あやめ姉さんに怒られましたわ・・・」

「えっ、あやめ姉さんは・・・」

「あれから来てませんやろ・・・?」

「・・・・・」

「残ってたのは私だけです・・・あやめ姉さんは・・・先生の方からそんな話聞いたら、こっちから身を引いてあげんと・・・って・・・怒られました。」

「・・・あやめ姉さんそんな事を・・・」

「そうです・・・『来週にも、また』って言うたまま・・・そうですやろ・・・?」

「・・・はい、たしかに・・・」

「そう言うた方が、先生に気ぃ遣わさんと済むからって・・・せやから姉さん、年内には来はりませんわ・・・年が明けたら…私もそうですけど、普通のお客さんとして寄せてもらいます。」

「みなさん、色々と考えてくれてましたんやなぁ・・・こちらは仕事ですのに・・・」

「無理な仕事をね・・・」「無理を承知でやらせてしもうて・・・申し訳ないと思うてます・・・特に私は…助けてまでもろうたのに・・・しつこうして、すみません・・・」

「・・・いや、そんな事は・・・それに助けたと言うても、別に何をした訳でもあらへんし・・・」

「・・・私には、十分でした・・・。」「正直に言うとね・・・奥さんが出て行きはったのを知って・・・確かに縁談話には困ってたんですけど、それを理由に、先生ともっと…仲良うなれたら・・・そんな気持ちが本心やった・・・と…思います。」「・・・堪忍して下さい。」「先生だけやのうて、奥さんや娘さんにまで迷惑を掛けてしまいました・・・きっと恨まれてるはずですわ・・・」

「そんな事は・・・ただ…アホな亭主とアホな父親・・・それだけや・・・。」「琴美さんも、春駒姉さんも…なんにも悪い事なんかあらへん・・・俺かて・・・アホやったかも知れんけど…悪い事したとは思うてない・・・それでええや無いですか・・・」


「・・・それでええ…のですか?」

「それ以外に・・・何も無いやないですか・・・琴美さんとも、考えたら長い付き合いや・・・5年程になるやろか…まだ制服着とったもんなぁ・・・」

「よう覚えてます…制服姿が素敵でしたわ・・・長い事は見られへんでしたけど。」

「せやなぁ・・・制服を脱いだんは…それからすぐにやった・・・それも、アホやったかも知れんけど…悪い事とも、失敗したとも思うてない・・・これで良かったと思うてます・・・」「琴美さん、これからも青田整骨院を御贔屓に…仲良うして下さい・・・頼みますわ。」

「はい…断られても、無理やりにでも来ますからね・・・」「ほんなら、これで失礼させてもらいます…先生、ほんまに…おおきに・・・ありがとう…。」

「こちらこそ・・・」「おおきに…有難うございました。」


 (姉さん達…みんな有難う・・・洋子、片付いたで・・・迷惑かけたなぁ・・・)


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弘と書いてひろむと読みます

Author:弘と書いてひろむと読みます
主人公の夕子と昌幸は作者と同級生と云う設定。          ディープな町、西成区花園町の世界を御堪能下さい。

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