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夕子、西成区花園町在住。 第56話       (お母ちゃんの事…)

  「お母ちゃん…お母ちゃんの事考えとったら、顔を見とうなったから来たんやけど… よかった…?」

    「うん…それは、かまへんけど…。」

  「食べるもんなんか、別に、なんでもええし……。」

 「あっ、それやったら丁度ええわ…鳥の釜めしが残ってる。」                                               「ふたつ在るから、昌幸くん呼んだってもええで…急には無理か…?」

 「めっちゃ喜ぶわ~ 実はもうすぐ来るはずや…。」 「うちかて嬉しい…ええ時に来たわ~。」                      「うち、お母ちゃんの事考えて落ち込んでたから、マサに付き合うて欲しいて、誘うたんや… マサにしてもタナボタやで。」

   「夕子…私の事… 何を考えて、落ち込んでたんや…?」

   「ううん… もうええねん…。」 「うちの期待が…先走りしとったんや………。」                                  「一緒に正月が迎えられたらええのに…って… せやけど、しゃ~ない事やって判ってるから…

    「…夕子………」

「必ず帰って来てくれるんやろ…? それやったら、無理は言わへん……。」                                  「いつでも、お母ちゃんのええ時で…かまへんから……。」

 「…夕子…堪忍やで…。」 「今となっては…私が悪いんですわ… お父ちゃんを、責めたらんといてや…。」

 「うん、お父ちゃんが努力してるのは知ってるから… 残ってるんは、あと一人か二人みたいや………。」                「それを、無くしてしまわんとアカン…… せやから、やっぱり悪いのは…お父ちゃんなんやろ……?」

 「夕子、そうや無い…違うねん。」                                                            「お父ちゃんの事は、もう…誤解してへんし、信用もしてる… どない言うたらええのんか……どう…言えば………」           「…その~~ 夫婦に戻るって事、どう云うことか…分かりますか……?」

 「えっ…? そ、それって…… まあ解かるけど……。」                                              「元々は、お母ちゃんとだけしてた事を、飛田のお姉ちゃんとも…してしもうて… それで、お母ちゃんが怒ったんやけど… …」     「…また、お母ちゃんとだけしか…せえへんようになるって事…と、ちゃう…のん……?」

 「夕子…あんた… 結構どぎつい事、こねくり回して、うまい事言うねんなぁ…。」                              「まぁ、そうです…その意味も解かってますのんか…? た…たとえば、どんなこと…するのんか…とか…?…とか…?」

  「あんまり判らへんけど… それで、赤ちゃんが出来るんやろ…?… 犬のヤツ見た事あるねん…。」

 「あ~~~~~っ! ゆ…夕子! そ、それは…ちょっと…………」                                      「い、意味は… まぁ、おんなじ…でもない……こともない…かも…ですけど……。」 「することも…いや、する事は…アカン…それは違う…同じ事なんかしたら、ちょん切らんと…違う…アカン…まぁ…その~ いややわ~~。」

  「お母ちゃん…! じっとしてえや…。 なに…モジモジしてるん…?」

   「…はっ! …そう、そうです。」 「…それって神聖なもんですねん…。」                                    「…せ、せやから…女の夕子には解かって欲しいんですけど……。」 「他の女の人に触った手で…触られるのが…おんなじ事されるのが… いや…って言うか…抵抗が在りますねん… 判りませんやろか…?」

 「解かってる…と…思う…。」 「なんとなくやけど…うちが、お母ちゃんやったとしても…厭やと思う…と…思うから。」

   「…そ、そうか~ ありがとう……。」


  「夕子…おばちゃん… お邪魔してもいいですか…?」

「はい、もちろんです…夕子から聞いてました。」 「今日は、夕子も大好物な【鳥の釜めし】を食べさせてあげるから…。」        「夕子……今の話で取りあえずは、堪忍しといてや… さぁ、すぐに用意しますよってに…。」

  「うん、お母ちゃん有難う……。」 「マサもよかったな~~ 大当たりやで。」

 「めっちゃ嬉しい…棚から牡丹餅や~~ おばちゃん、有難うございます。 けど、ほんまに…ええんですか…?」

   「かまへんよ~ 当たり前やんか…気ぃ使わんとき。」

  「へへっ…やった~~」 「夕子、有難うな…お前も元気が出たようやし… ほんまに良かったわ。」

 「うちも、落ち込んだり、元気が無かったりしてる様子は…マサにしか見せられへん… ゴメンやで。」

「そんな事…… けど、夕子はいつも俺に…『マサはマサらしい、しとったらええ!』…って言うやんか…?」              「俺も、おんなじ事を思うんやけど…今日の夕子も…夕子なんやなぁ… そう云う事でええのんか…?」

  「マサ…… そうや、めったに無いけど…こんな事も在る… これも、うちやねん…。」

   「……うん…。」


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夕子、西成区花園町在住。 第57話       (昨日の釜めし…)

 「昨日の釜めし、美味しかったなぁ~ 今度はいつ、食べられるんやろ… もう、完全に癖になってしもうたわ~~。」

  「昨日は特別やで、あれは店の売りもんやし…昨日は、たまたま…二人分残ってたんや。」

  「そうか~~ 俺、正月になって、お年玉もろうたら…お客さんとして食べに行こうかなぁ。」

 「やめてや! マサからお金は貰いにくいやろ…釜めしまで、お母ちゃんから…マサへのお年玉になってしまうやんか。」

  「え~っ、そうかなぁ… お金払うても食べたいんやけど…。」

   「そら、そもそもが…売りもんなんやから…。」

   「それやったら………。」

  「マサは、またの機会を楽しみにしとき… チャンスはまた巡ってくるから…。」

   「そっか~ クリスマスプレゼントも…受付中なんやけど……」

 「ふ~ぅん…そら、良かったなぁ……。」                                                         「うちの家には…『日本にクリスマスは存在せえへん。』…と、云い張って聞かへんおっさんが居てるんや…。」                   「あんたの尊敬するおっさんやけど…どうする…?」

 「そうやったなぁ…… 青田先生がそう云うんやったら、日本にはクリスマスは無いんやろ…。」                       「わかった…。 しゃ~ないやんか… だいたい、柔道とクリスマスなんか…似合わんからな。」

 「もともと、くっ付ける必要も無いけど…あんた、お父ちゃんの言う事やったら、何でもええのんか…?」

 「当たり前やろ、先生は男らしい上に、正義の味方なんやど… 間違うた事を言うはずがが無いやろ…?」

   「ふ~~ぅん… それで、女風呂を…?」

 「…あ、あれは~~ ちょっとした…やなぁ…なぁ、もう忘れてくれ~~」                                     「今もこれから…ちゃんと宿題はしてからやで… 先生と約束があるんや…。」

   「ようするに… うちに来る訳やな…?」

   「そ…そう云う事になるわなぁ…。」

 「ろくでも無い相談やろけど… なんか、悪い予感がするわ…。」

 「アホな事言うな… 男同志の大事な話やないか… た…ぶん…。」

  「…ふ~ん、そうか… 勝手にしぃ…うちは知らん。」



    「先生、お邪魔します…。 昌幸です。」

  「昌幸、ちょっとだけ待っといてくれるか…この人で最後や…。 もうすぐ終わる……。」

  「はい、待ってます。 あの~ 夕子は…?」

 「ちょっと前に、出て行ったで。 …今はおらん。」

  「あっ、…そうですか…。」


  「マサ、待たせたな… 終わったぞ。」

  「はい…。 いえっ…そんなに待ってませんから。 それで、僕に話ってなんですか…?」

 「うん、それなんやけどなぁ…お前が礼儀正しいのは、ほんまに褒めたる…。」                               「…別に、俺に対してだけや無いのも知ってる… ほんまに偉いぞ……。」

  「有難うございます…。 けど、やっぱり先生にだけは…特別………」

    「そこやっ…!」

     「えっ…⁉」

   「ええか昌幸…俺はお前に、嘘なんか言わへんし…悪い事を教えたりするつもりも無い。」

  「そんなん…解かってます。 当たり前ですやんか…先生…。」

 「うん…ほんで、色々と話をするうちにや… なっ、話はおもろい方がええやないか…? そうやろ…?」

   「はい…それも、当たり前やと…。」

 「そ~~なんや。 せやから、嘘とか悪い事とは別に、中には…色々と…おもろい話が混ざるわなぁ… ええか…?」

   「…はい。 と~ってもええです…おもろいし…。」

 「うん…で、ここは…こないせんとアカンとか…こう、心掛けろ…とか、そんな話はやなぁ… そう云う部分は、よう聞いて、守ってくれたらええ…せやけどな…ここは笑いを取るだけのところやな~~ と、思うたら…そこは…ただ、笑っとたらええねん… ここが大事や…わかるか…?」

   「…先生、風呂の話…してます…?」

  「…おっ、いや~~~っ… 何もかんも合わせての事やけどな… そうや、風呂の話や……。」

    「やっぱり……はい。」

「…うん、あれは…マズイ…。」 「あれは~アカン… あそこが、ただ…笑っとったらええとこやったんや…分かるか…?」

  「はい…分かります……。」                                                                「確かに、ごっつい笑わせてもらいましたけど… 先生、『真似したらアカンぞ~~』って、笑いながら言いましたよね…?」

  「せ、せやろ~~ 言うたやろ~、言うたはずや… …なっ…?」

「あの、真似したらアカンは…『真似してみぃ…おもろいで~~』…と、しか… 僕には聞こえませんでした。」

  「…?…?… なんで、なんで…そうなるんや~~~~~?」

 「なんで、って言われても…先生は、『あれで何べんも楽しい思いをしたことか~~』…って、言うてましたやん…。」          「何べんもって言うてるのに…真似したらアカン… と、言われても……。」

 「アホっ!…俺は、見つかったり、バレたり…してへんから… ちゃうちゃう…何を言うてるんや…俺は…。」               「アカン…アカン事やねん…。」 「…ほ、ほんなら、あの日… いろんな話をしたわなぁ…? 体の鍛え方とか…重心の位置を見抜くんや…とか…。」 「…お前、次の日…すぐに、いきなり、直ちに、ためらいもなく…実行に移したって…ほんまか…?」

  「…はい。 あの話、聞いてから…他の事は、考えられへんように…なったもんで………。」

   「ま…昌幸~~ お前…ほんまに他の話は、何にも…?…。」

 「いえ、洗面器を…ピラミッドみたいに積み上げて…って、云うやつは…残念ながら、まだ実行には……。」

   「…するな~~~~~っ! 実行せんでもええ~~~!」

  「あれは、僕一人でも… 良文を誘わんでも出来きますから……。」

 「…出来んでええ~~~ねん! 一人でも、二人でも…そんな事は問題や無い…。」

   「はいっ! …二度と、バレるような事は…絶対に…。」

 「す、するな~~! …したらアカンぞ、絶対や… バレる、バレへんの問題やないと言うてるんや… ええか…⁈」

  「なにが… 二度と、バレるような事やねん…? …絶対したらアカン事って…? なんやねん…⁈」

  「わっ…! ゆ、夕子… お帰り~~。」  「え~~~っ! …あっ…夕子さん…お帰りなさい。」  

   「二人でハモって…… 悪い予感は、当たっとったみやいやなぁ……。」

  「なぁ、夕子… 誤解したらアカンで、俺はちゃ~んと…昌幸に一言、釘をさして…なぁ、昌幸…?」

「はい。…夕子、ほんまやど…先生は、『俺はバレへんかったから、良かったけど…お前はバレたんやから…二度と… それに、もうひとつ教えたやつも…やったらアカン…するな…絶対に。』…って言うのが…お前も聞いた、今の会話やったんや。」

 「昌幸~~~~~っ! お前なぁ~~その通りなんやけど…他に言い方が… なんぼなんでも、素直過ぎるやろ~~。」

   「マサっ…!」

  「は、はいっ…⁈」

    「帰り!」

  「えっ⁈… はい、お邪魔しました…。」

 「なぁ昌幸、まだ早いで… もうちょっとええやろ…ええやないか……。」 

  「マサは、 …帰るんや!」

  「なぁ、一人にせんといて…くれ…マサ~~」

   「先生、失礼します……。」

    「お父ちゃん!…‼…‼」

    「はいっ…⁈」  
 
  「……●…□…▼…◎…‼…‼…」 
 
    「………気を付けます……」

夕子、西成区花園町在住。 第58話     (ちょっと一杯飲ませて…)

    「…ちょっと一杯飲ませてくれるか…?」

  「あら、サブちゃん… 丁度、暖簾をはずすところですわ…。」

    「…ふ~~~っ…。」

   「どないしましたんや…?」


  「こっぴどく、夕子に怒られた…。」

 「…それは、大変でしたなぁ… 鬼の三郎も夕子にはタジタジですか…?」

   「こてんぱん、や……。」

 「気にはなるけど、何で怒られたんかは…聞きませんわ。」                                            「夕子がそんだけ怒るって事は…今の状況で、私の耳に入ったらマズイ事なんですやろ…?」

    「その通りや……。」

  「けど、…実際には大した事や無い…。」

    「その通り……。」

   「大した事や無いから、ここに来た…。」

   「…なんでも解かるんやなぁ… その通りや…。」

 「私らには笑えても、夕子の年頃には大変な事…今、私の耳には入れたく無い事………。」                         「…女に関する話……この前からの流れ……お風呂やね……?」

     「………………・…。」

   「もう…言葉も出ませんか…?」

     「そ、その通り…。」

   「他のセリフも、聞かせてぇな……。」

   「ほんまに、恐ろしいわ…びっくりや」

 「…夕子は、私には絶対に内緒にしたい。 せやのに…まさかサブちゃんの口から、私の耳に入ってるとは…。」

 「そうやな…けど、夕子の本気さが、いじらしいて…それを、お前に聞かせたくてなぁ………。」                        「この前も、今日もや… あいつ、こんな話がお前に知れたら…って、俺に、本気で説教しよるんや……。」

  「…それに、こんな話を私に聞かせたら… 私の気持ちも刺激出来る…。」

    「…そ、それは……。」

   「その通りですやろ…?」

 「その通り…せやけど…夕子の気持ちを…利用するつもりやない………。」                                     「そんな夕子の気持ちを、お前が…知らんままにしといたらアカンと思うてなぁ……。」

   「わかってます…サブちゃん、有難う…。」

     「…うん。」

   「狙いは… 外れてませんで…。」

   「ほんまか…? それで…?」

「この間、夕子と…ちょっと、大人の話をしましたんや………。」                                           「けど…どこまで、ほんまに解かってくれたんかは…疑問なところもあります……。」                             「それでも、『お父さんの事は信用してる…今は、誤解もして無い…。』…って…言うてましたんよ……。」

   「うん、 …それで……?」

 「あとは、私の気持ちの問題やと…せやから、お父さんを責めたらアカンよ…って…。」                           「今はもう、悪いのは…お母ちゃんの方なんやから…って…。」

    「…いつから、お前の方が悪うなったんや…?」

 「それは…もうちょっと、内緒にさせといて…。」 「夕子に聞けるんやったら…別に、口止めはしてませんけども…。」

   「いや、お前の口から、聞きたい…。」

  「…はい。 その時が、私の戻る時やと思います。」

 「家に戻って来てくれるんや…。」 「ここまで来たら、もう、慌てへん…… ゆっくり待つ事にするわ。」

  「戻るんは…家や無うて、あんたの胸です… 忘れんといて……。」

    「洋子……。」

    「…はい…。」

  「……よ・う・こっ……。」

  「アホっ…! まだ…アカン…!」

   「えっ…? なんで…?」

  「なんでもや! …それが、理由なんや…!」

   「…それが、理由……?」

    「そう、それが……。」

  「…ほな、そろそろ…帰るわ……。」

  「…はい。 お休み……。」  (…サブちゃん…ゴメン…)

夕子、西成区花園町在住。 第59話       (おーい、夕子…)

    「お~い…夕子、待ってくれや~~」
  
     「…夕子ちゃん、昌幸くんが…。」

  「し~~っ… 恵子ちゃん、ほっといたらええ…振り向かんといくで。」

   「お~い。 なぁ、夕子って……。」

  「…あんた、誰…?」 「…恵子ちゃん、いくで…。」

   「え~っ… 夕子、なんで…?」

  「気やすぅ…人の名前、呼ばんといて。」

  「…夕子ちゃん。 昌幸くん…かわいそうやん。」

  「そうやぞ… どないしたんや…ほんまに…。」

 「どないもせえへん…。 知らん人とは口を聞いたらアカンって、学校の先生かて、いつも言うてるやろ。」

 「そんな…知らん人って…。 昨日、俺が帰ってから、先生とどんな話をしたんや…?」

 「先生…?」 「…先生って、うちに一人居てる…スケベなおっさんの事か…?」

   「…す……スケ………。」

 「なぁ、夕子ちゃん… わたし、先に帰るから…バイバイ…。」

 「うん、ゴメン…バイバイ…。」 「アホ!、みてみい……恵子ちゃんに気ぃ使わせてしもうたやんか。」

  「…そ、そんな事…。 何をそんなに怒ってるんや…?」

「アホ~~っ!…うちにとって今、一番大事な事は…お母ちゃんに、一日でも早よ…帰って来てもらう事なんや…。」           「それを邪魔する奴は…ぜ~~~ったいに、許されへんのや…。」

  「え~っ! 邪魔なんか…ぜ~~~ったいに……するつもりは……」

 「一番悪いのは、お父ちゃんか、マサなんか…チョット、ややこしいとこは在るけど……。」 「お父ちゃんには、昨日、ボロカスに…言いたいだけ言うたから…ちょっと、スッキリしたんや… あとは、マサしか居てへんやないか…。」

   「スッキリするんやったら、ボロカスに言うてくれ… 頼むわ~~~。」

 「素直なんもええけど…マサは、とにかくいらん事をせんといて。」                                       「ちょっとでも…たとえ、ちょっとでも…お父ちゃんが、お母ちゃんに嫌われる事があったら…アカンねん……困るねん…。」

    「…・俺は… 別に…。」

 「そうや…あんたは、お父ちゃんにも、お母ちゃんにも好かれてる… 怒ってるのは、うちだけや…。」                   「うちの気にし過ぎのようにも思う……。」                                                       「ただの気にし過ぎやろか…?… なぁ、もう一つ、教えてもろた事って…?勇気が在るんやったら、やってみるか…?」

 「いったいなんの話か、知りませんけど… 仮に、そんな話が在ったとしても…絶対にやらない自信が在ります。」

 「自信なぁ……?…」 「壁の向こうに居てるんは…今田のお姉ちゃんかも知れへんで~~」

 「ゴクっ! 仮の仮の…仮の仮の、仮の話… 万が一の時には…僕では無く、もう一人の僕を怒って下さい…。」

   「どアホっ!」  「…やっぱり風呂の話やったんやなぁ……。」

    「はっ…!…」

 「ほんまに、あんたら…しゃ~ない生きモンやなぁ… アホがほんまにぃ…。」                                 「それになぁ、マサ…あんた、この頃…そのアホに、さらに磨きが掛っ て来たらしいやないか…?」                             「せやから…ちょっと、あんたと仲がええって、言われるんが恥ずかしくなって来たんや…。」

  「え~っ… アホは認めるけど、磨きなんか掛かってへんやろ…?…。」

 「それやったら言うけど、こないだの社会のテスト…人の名前を聞かれてんのに【あの人】とか【女の人】とか書いて… 最後は、聖徳太子って書くとこで、【お札の人】って書いて、坂口先生…にごっつい怒られたんやろ…?」

 「いや、あれはやな…テストって時間が決まってるやないか…『あの人~~』って、ここまで出て来てるのに、間に合わへんかったんや… 聖徳太子もそうや…『お札の人~』…って…なっ、ほんで…『ん~時間が無い~』 …書くしか無いやないか……。」

   「…マサ特有の…素直さで…?」

 「そ、そうや。 素直に…なっ、もう俺の代名詞なんや…気楽に【素直なマサ君】…って呼んでくれたらええで。」

 「アホっ…! とどめは、授業中に地図の名前を聞かれてんのに…【五万分の一】…って、わざわざ手まで挙げて答えといて…大爆笑にはなったけど、廊下に立たされとったやないか…これはもう、学校中で有名な話や。」

 「うっ…せやけど、思いついたら、言わんとしゃ~ないのが俺とお前の性格や…廊下には立たされたけど、先生も…『センス在るやないか~』って、一緒に爆笑しとってんど…… けど…『ふざけたらアカン!』って最後は立たされたんや…。」

 「センスは在る…確かに………。」                                                           「けど、うちまでマサと一緒にせんといて、なにが、『思い付いたら、言わなしゃ~ない』…ねん。 あほっ…!」

 「ほんならやで……お前、おんなし場面で【五万分の一】って、頭に浮かんだら…ど~するつもりや…?」

  「……浮かんで…来たら……沈めたら…ええんや………。」

  「…沈めても…浮いてくる… なっ‼ …俺とお前は一緒なんや。」

   「…悔しいわぁ~~ けど、認める…しかない……。」

 「せやろ~~ …なぁ、ついでに機嫌も直してや… おばちゃんの事は…ゴメン。」                              「先生の事も、なんでもかんでも真似するんはやめるから… ええとこだけを見習うようにするし…なっ…?」

 「それは、もうええ…。」 「恵子ちゃんと一緒やったから、ちょっと…いちびっただけや。」                          「せやけど…あんまりマサと、仲がええ、仲がええって言われるのんも、ちょっと恥ずかしいねん…。」                     「あんた、ほんまに…ええ加減、アホな事ばっかりすんのやめてや…お父ちゃんも、お父ちゃんやけど…。」

 「それは大丈夫や、まかしとかんかい…特に先生の事は、お父さんと呼ぶ日がくるまで………。」

  「ぜったい!…そんな日は、け~へん‼」  「ごきげんよう、さようなら……。」

   「じょ~だんやん… なぁ夕子……」

    「…あんた、…誰…?…」

  「そんなぁ……逆戻りや~~~」

 「アホっ…! それこそ冗談や…バイバイ。」

  「うん…またあしたなぁ~~~~」

 「…もう、わかった…って、 またあしたや~ ……。」

  「ほな、あしたは… もう、普通に……。」

    「しつこい!」

夕子、西成区花園町在住。 第60話    (ただいま…お父ちゃん…)

   「ただいま~お父ちゃん… 居て無いんか…?」

    「夕子~~ 台所や…お帰り~。」 

  「何してるんや…?」  「おばあちゃんは…?」

  「見たら解かるやろ…料理や…。」

「…たしかに…けど、なんで…ごっつい魚やなぁ…グレやんか… どないしたん…? しかも2尾…50センチ以上あるで。」

 「クリーニング屋が持ってきよったんや…『サブ…大漁や、大漁~~~』…って叫びながらな…。」                    「ヨイショ…ん、いっちょあがりや… もう、一尾は刺身でいこか~ 何せ、シゲの年一回の大漁やからなぁ…有難い話や~。」

   「へ~ぇ… 上手いもんやなぁ…美味しそうやんか…。」

 「まかさんかい… お前が生まれた前後は、お婆はんと俺とで、どんだけ店の手伝いやったか… お前、知らんやろ…?」

   「…それも…『へ~ぇ』…やけど… そら知らんわな…うちは……。」

  「…と、とにかく… そう云うこっちゃ…。 味も洋子仕込みやから、間違いないで~~。」

  「うん…それは、うちかて見ただけで美味しいのんは解かるで~ 大したもんや。」

    「せやろ~ せやろ~~。」

 「煮物は、色・ツヤ・匂いで味まで解かる… お母ちゃんの決まり文句や…。」 「うちにも解かるで~ これは絶対旨い。」      「ほんで、もう一尾はお刺身にするんやな…? ほんでも、こんな大きなグレ、見たこと無いで…食べきれへんやんか…?」

 「それも、考え済みや… 其の一、マサも呼んだるんや。 其の二、煮付けの半身と刺身も適当に【洋子】へ持って行く。」       「最後に、其の三… 行ったついでに、店から…たまり醤油とワサビをもろてくる… どや…?」

  「今日のお父ちゃん…中に他の人…入ってるんとちゃうやろな…?」

 「…アホっ! 先ずは其の一や、マサ呼んできたれ…早よ行ったらんと、藤川さんとこかて都合が在るやろ…。」

   「せやな! …うち、行って来るわ。」

  「…その間に刺身も完成や。 お婆ちゃんもそろそろ帰ってくるやろ… あれっ…夕子…は…?」

   「わかった~~ …聞こえてるで~~~。」

    「は、早っ!」


   「こんにちは~ 昌幸くん、居てますか~~?」

  「…あっ、夕子ちゃん…。 約束してたんか…?」

   「いえ、急にちょっと……。」

「もう、帰って来る頃やけど、良文くんと…お風呂行ってるんよ……。」                                     「もう…アホな事はせえへんと思うけど、早い時間に行く…クセが付いたとか言うて……。」

  「…え~っと、私が来た事は黙って下さい… お邪魔しました。」   「…あの、アホっ…! ほんまに……。」

   「…お~い、夕子~~ どないしたんや…?」

   「何でも無い! だだの散歩や!」

  「ちょ、ちょっと待ってや… 俺の家から出てきとったやないか…?」

   「あんたの見間違いや……ほなっ!」

  「ちゃ、ちゃうやろ~ まだ、怒ってんのんか~~?」

 「アホっ! そんなもん、とっくに忘れてるわ……新たな疑惑や…。」

 「ちょ、ちょっと待て、新たな疑惑て…風呂か…?…風呂やな…? 違うんや、なんぼ俺でもそんなアホな事はせえへん。」     「クセになってると言うんか…良文が迎えに来よるもんやから……なっ…分かってや~~~。」

   「……分かった。」

   「えっ、ホンマ…?」

  「もう一つ、教えてもろうた事に…チャレンジしてるんとは…違うやろな…?」

 「南海の大決闘を、一人で解決できる夕子さんに…嘘はつきません……神に誓って…違います‼」

 「…わかった、もうええ……早よ帰って、おばちゃんに、今日の晩御飯は…夕子の家で食べるって…言うておいで…。」

    「…えっ…?…」

   「イヤなんか……?」

 「…お、おかん~~~~~~ 今日の晩御飯…………」

   「…アホっ……。」

       …61話へ 続く……
      

夕子、西成区花園町在住。 第61話      (60話~の続き…)

 「お父ちゃん、行ってきたで~~お母ちゃんも喜んでたわ…『グレなんか、市場ではなかなか手に入らへん。』…って…。」     「それから、『ちゃんとお礼言うといて…』とも言うてたで… なぁ…マサは…? まだか……?」                            「ん……? …来た!

「うわっ! び、びっくりするやん…なんで分かったんや…?」 「あっ、今晩は…お邪魔します…え~本日は御招きに……。」

    「昌幸!」

   「はい!…」

  「早よ上がってこい…。」

   「…はい。」

  「マサ、あんた…全速力で走って来たやろ…?」

   「…来たけど…?」

 「玄関の前で一旦とまって、一息ついたやろ…?… それで分かったんや。」

   「…ホンマ…に…?」

 「昌幸、どないしても夕子には…今のところ、かなわんようやな…?」

   「…はい…そのようです…。」
「なぁマサ、素直に認めんといて…あんたみたいな【やんちゃもん】がそんな事言うから…うちの評判が下がるんやで…。」

   「えっ、 評判…上がるんとちゃうんか…?」

     「うちが、男の子やったらな……。」

  「…え~先生…… 今日は何を食べさせてもらえるんですか…?」

 「ふっ…魚料理や…グレやぞ。」                                                             「まだ年末とはいえ…そろそろ油も乗って旨いはずや…煮付けと刺身やけど、腹いっぱい食べて行け。」                  「御飯はお婆ちゃんが、特別にかやくご飯を作ってくれた…麺類とちゃうんやど、今日は……。」

   「いつも麺類で悪おましたなぁ…もう、ちょっとで炊けまっせ…。」


      「…旨い!」

    「…ほんまや~~~」

「はい、めっちゃ旨いです…僕、この魚食べるの初めてやと思います… あっ、かやくご飯も、めっちゃくちゃ旨いです。」

   「昌幸、お前ほんま、ええ奴っちゃなぁ…。」                                                   「せや、魚屋ではまず見かけへんわなぁ…ほんまに、よう礼を言うとかんとアカン。」                               「…無理やり洗濯もん作って、持って行ったろか…?」

   「そんなアホな事…かえって失礼でっせ…。」

  「うん、お婆ちゃんの言う通りやで…他の事、考えたほうがええと思うわ。」

   「アホっ、冗談やないかい……なんぼ俺でも解かってるわ。」

   「え~~っ、冗談やったんですか…?」

 「これや~!…これが問題なんや…マサ、あんたは…ほんまに……。」

 「…うん、どうやらそのようやな… 昌幸、ここもただ、笑うとったらええ処なんや。 分かるやろ~~ほんまの話…。」

 「いや~~さすがは先生や…ええ考えやと…思うてたんですけど…。」                                    「クリーニング屋さんに洗濯もんを持って行くんやから…大正解…これを、ラーメン屋に持って行っても…お礼には不向き…」

「…に、決まってるやろ!…昌幸、お前なぁ…お前…オリンピック選手になれんかったら、漫才師しか道は残ってへんぞ…。」

 「やめて、お父ちゃん!」 「マサ、本気にしたらアカンで… あんた、今…眼…キラリとさせえへんかったか……?」

 「…えっ、いや~~一生懸命頑張って…それでもオリンピック選手になられへんかったら……」                           「……そうか、漫才師になったら…ええんかなぁ……なんて………。」

   「アホっ! 警察官はどこいったんや!」

     「あっ…!」

 「アホっ、なにが…『あっ』やねん。」 「柔道…オリンピック…警察官…や。」                                「ええか、オリンピックがアカンかっても、この順番からオリンピックが 抜けるだけなんや…。」                        「うちは、絶対…夫婦漫才なんかせえへんからな。」

   「えっ…⁉…💛…」

    「えっ……⁉」

   「あ、あほっ! 仮の話や!…」  「…お、お父ちゃん、よう分かったやろ…?」                              「マサには特別、気を付けてしゃべらんとアカンねん……もう、なんべんも言うてるのに……。」

  「…夫婦漫才も…面白そうやけどなぁ……昌幸はどない思う…?」

  「うわ~お父ちゃん! …やめて~~~。」

    「…⁉…💛…⁉…」

  「マサ~~ 真剣に考えたらアカン…。」

 「うん…遠くを見つめてるみたいやな……『おい!昌幸』……なにを考えてるや…?」

  「…はっ! ……ぼ、…僕は……やっぱり警察官を目指して……ほんで……。」

   「ほんで…アカンかった時には…?」

    「…夫婦漫才。」

  「うわ~~~ えらいこっちや………。」
 

夕子、西成区花園町在住。 第62話      (いらん事言うたら…)

    「いらん事言うたらしばくで…。」

  「…いきなり睨みつけて… どないしたんや…?」 「まだ、なんにも言うてへんやないか…?」

    「そのまま、だまっとり…。」

   「なぁなぁ…俺が言う事、分かってるんか…?」

  「…口が、しゃべりたがってるやないか…… 内容は、あんたの事やから…大体の想像はつく……。」

   「えっ~そんなん…分かる訳、ないやろ~~?」

    「わかるんや…!」

   「ほな、確かめてみようや…?」

  「たしかめんでもええ…判ってる。」

 「なぁ…頼むわ~ 確かめさせてくれ~。」

    「……………」

  「どんだけ考えて来たと思うてるねん… ゆうべ、寝られへんかったんやで…。」

  「今ので、うちの考えが正しい事が証明された…絶対に言うたらアカン。」

    「そ…そんなぁ~~~。」

  「それから、とうぶんの間…うちの家には出入り禁止や… 忘れたらアカンで…。」

   「え~っ それは… アカン………そんなぁ~~~」

 「そんなぁ~も、ヘッタクレもあるか! お父ちゃんと、マサが揃うたら…ロクな事が起きへんやないか…ホンマ…。」

 「なぁ、今日だけでもええから……いや、それも困るけど…なぁ、頼むわ~~この話は先生にも聞いてもらわんと…。」

    「…⁉………」

  「なぁ…今、ちょっと面白そうやなぁ… と、思うたんとちゃうか…?」

  「思うてへん! ……違うわ、アホっ!」

「俺かて、お前の事は…色々と判るんやで…『今日だけでええから…いや、それも困る…』って、言うたとこで…ちょっと、ウケとったやろ……こらえた時に…鼻ふくらんどったど…?」

 「…クソ~っ! そんなに、おもろい事も無かったのに…なんでやろ…?」

   「なっ、ルール上、笑わしたら勝ちなんやから…ええやろ…?」

   「アホッ! そんなルールあるかいな…。」

    「ここは… 大阪やで~~。」

  「……⁉……」 「…アカンアカン…なに言うてるんや…。」

  「今かて、一瞬……なぁ、最初の質問だけでも…聞いてくれへんか……?」

   「…最初の…質問…?」 「質問やったんか…?」

    「せやで…。」

  「…いや、絶対に内容は、【アレ】のはずや…。」 「…そんなに言いたいんか……?」

    「うん!」

   「一応聞いたろか…?」

    「うん、うん!」

   「言うてみ…。」

   「漫才のコンビ名…何にする…?」

 「…頭、クラクラしてきたわ…予想では、『おい夕子、コンビ名、考えて来たったど。』…これしか無いと思うてたんや…。」      「けど、マサの事やから…ど~せ五つぐらい考えて来たんやろ……夜も寝やんと…?」

   「お・お・当たり……。」

  「ほんで、それが言いとうてしょうが無いんやな…?」

   「お・お・当たり……。」

  「たまらんなぁ~~ その為に、うちに遊びに来たいんか…?」

   「お・お・当……」

    「もう、ええ!」

    「……たり…。」

 「あんなぁ、面白いのはええんやけど…あんたの場合は…。」                                          「本気やったりしたら厭なんや……あくまでも、盛り上がりと乗りとでの話やで…判ってるやろなぁ…?」

   「わかってるって…大阪に生まれた運命やと諦めんとしゃ~ないやろ…?」

 「言うとくで…第一に、五百万歩譲ったとして…漫才はあっても、夫婦は無い。」                               「第二に、オリンピックは頑張った結果や…アカン時は仕方が無い…けど、真剣に柔道やって、警察官を目指す……。」        「一旦そう決めたんやから… くじけたりしたら、夫婦どころか…友達でも無くなるからな…覚えときや…。」

   「…覚えとく… 五百万歩か…。」

    「それは漫才の場合や…。」

    「夫婦の場合…は…?」

     「…譲りようが無い。」

     「なんで……?」

     「ゼロやからや!」

夕子、西成区花園町在住。 第63話       ( ただいま~~)

    「ただいま~~~。」

   「おう、夕子 お帰り…。」 「今日も仲良う…マサと帰って来たんか…?」

  「腹の立つ言い方せんといて!毎日の事や…明日からやめよか…?」

 「おいおい、そんな事言うな…昨日は美味しい上に、おもろかったし…昌幸のこっちゃから早速…なんか……?…」

   「お・お・当たり…や……。」

  「お前… そのセリフは、もはや…昌幸……」

 「そのまんま…マサが言うたセリフや!」 「あいつ、夜も寝んと考えた事が在るそうや…宿題終わったら来るわ…。」        「お父ちゃん、全然判ってへんやろ…?」                                                             「ほんまに、マサには…しょうも無い事言わんといてや… あいつの脳みそ、ハ虫類レベルなんやから…。」

    「…ハ虫類って……?…」

 「お父ちゃんは、ただ、面白がっとったらええんやろけど… 困るんは、うちやからな…ほんまに、たのむで~。」

  「いや俺も、昌幸には驚かされてるし…お前にも怒られるんで…困ってるんやで……。」

   「それやったら…もうちょっと考えて欲しいわ~。」

  「ん~~とにかく、おもろかったらええ…って…性格してるもんやから……。」

   「…それは、うちも…同じや…。」

    「昌幸もやろ……?」

  「せやけど…あいつの場合、脳みそが……。」

 「なんぼなんでも…ハ虫類は可哀そうや…。」  「今更、言うまでもないけど…ごっついええ奴っちゃで…夕子かて、そう思うてるやろ…?」

 「それは、まぁ…マサよりええ子は見た事無い…。」  「せやから…せっかく寝んとまで考えたんやったら…付き合うたろかなぁ~~と、思うて………。」

  「うん、来るのが楽しみや。」 「もちろん、話は…あれ、やろなぁ…?」

   「マサやで…他にないやろ……宿題してくるわ…。」



     「お邪魔しま~す。」

   「おう昌幸、待ってたで…まぁ、上がれ。」

   「はい、え~~ この頃は毎日のように…おじゃま……・」

 「あほっ…そんなもんかまへん……。」 「 おい夕子~~っ、昌幸…来たど~~。」

    「上がっておいで~~。」

  「おいおい、夕子が降りて来て…3人で盛り上がろうやないか…なぁ、昌幸…?」

   「はい…。 もちろん…是非、先生にも聞いて………」

   「アホっ! まずはうちが………いや、ええわ…降りて行く…。」


「え~~っ、…もしも…もしかして…わたくし昌幸が…万が一にも、警察官にと云う…夢破れし場合…『残された道は、夫婦漫才しか無い。』…と、云う…先生の言葉を深く受け止め…コンビ名を考えかけたら…夜も眠れず…つきましては本日……」

   「昌幸、ちょっと待て…… いつも………」

「…いつも通りや…普通にマサや…… しょ~もない事ほど…表現豊かにしゃべりよるんや…ハ虫類の持ちネタやねん…。」

  「おい、夕子… いろんな事言われて来たけど…ハ虫類は初めてやど…俺のどこが…【ハ虫類】やねん……?」

   「まて…! ええか、昌幸…顔とかの話とは違う……場所を特定するんはやめとけ…!……。」

    「……?…??……はい…⁉」

  「なぁ、マサの事やから…ベスト5とか云うて…1位から5位くらいまでは用意してるんやろ…?」  
 
   「さすが…完璧な、名推理……。」

 「…いちいち疲れる奴っちゃなぁ… まぁええ…ほな、5位から、いってみよか…?」                             「ええか…降りて来てやったけど、お父ちゃんが一緒やから云うて…どつかれへんと思うたら大間違いやからな…。」

 「…先生だけが…御在宅の時を待たせて頂きますので…………。」                                         「…何と言いますか…発表の日時は、改めてと云う事で…よろしいでしょうか………?」

 「…やっぱりなぁ…。」                                                                    「うちが怒る事は判ってるのに、いっぺん思いついたら…どないしようも無いって…そんな内容なんやろ…?」               「5位からや! 早よ…言わんかい!」

   「……せんせ~ いざという時には……」

 「やかましいわ! うちに一番聞いて欲しいくせに!…あほが!」 「ええか!…あんたの頭で、一晩かかったモンが…すぐに作り直せるはずが無いやろ…せいぜい順番の入れ替えかなんかを、考えてるんやろうけど… 無駄や! 早よしぃ!」

  「…まぁ、当たってるんやけど、図星やないで…一番だけは変えられへん、一番は…不動の一番を考えてあるんや。」

  「ふ~~ぅん…それは楽しみやんか……ほな、5位から2位まで…いってみよか~~。」

  「うん昌幸、ここまで来たら観念せえ…いざとなっても、助けられへんけどな…。」

    「…せんせ~~そんなぁ……」

    「5位や…‼」

   「……【カマキリ】……。」

   「……⁇……」  「…???」

 「まず僕が…『カマキリのオスで~す。』…そして…続いて夕子が、『メスで~す。』……。」

 「……⁉…」 「…お~っ、意表を突いてくるや無いか~~ 想像して無かったパターンやで……。」                    「カマキリはメスがオスを食べるって話やな…? 昌幸、なかなかの出来やど…なぁ、夕子……?」

  「…まぁええ、…たしかに予想して無かった…。」 「…このくらいでは怒ったりせえへん……。」

 「よかった~~【ノミの夫婦】も考えたんやけど…大人になった時には…たぶん俺の方がでっかく成ってると思うし…。」

「ほんまに、あんたの頭…どないしても、しょうも無い事か、ど~でもええ事しか考えられへん構造やろ… 4位は……?」

   「………【蛇と蛙】……。」 

  「…マサ、あんた路線変えて来たなぁ…。」 「…まだ、大丈夫やで…次、3位や………。」

   「…お待たせしました、ここで登場……【昌幸君とキングギドラ】……。」

 「…待ってた訳や無いけど、予想通りや…と、言うよりも…今のところ、予想が当たってるのはこれだけや…。」            「まさ、このくらいやったら、全然、大丈夫やで…けど、これが3位やと云う事は…1位、2位って…?」 「2位は……?」

   「良かった~~…ほな、もう大丈夫や。」

   「うそやん…? ど~いう事やねん……2位は…?」

   「そんなん、普通に…【夕子と昌幸】やんか…。」

 「え~っ…! あんた、一番はとっておきやて言うてたなぁ…。」 「アカン…今日はうちの予想がついていかれへん。」

   「夕子がなぁ……うん、それは楽しみや…。」 「昌幸… 1位はなんや…? 教えてくれ…。」

 「…はいっ! 絶対の自信作、堂々の第一位は……【制服と割烹着】……。」

   「……制服……割烹着…… マサ……。」

  「……ええやないか… なぁ夕子…?…」

 「…うん、まぁな………」                                                                 「けど、コンビ名には、もう一つや…制服を着てるんやったら漫才自体が存在せえへんやろ…警官になれたんやし…。」         「ほんまに制服姿が…カッコ良かったら…うちが女将しながら、このタイトルで…小説でも書いたるわ…。」

夕子、西成区花園町在住。 第64話      (ほな、おっちゃんら…)

  「ほな、おっちゃんら、後はのんびり楽しんでいってや~ …うち、そろそろ帰る時間やし…。」

「えっ、もうそんな時間かいな…? ほんまや、もうちょっとで8時や…あっと言う間やなぁ…有難う若女将…お疲れさんやで。」

 「森川さん…あっという間と言えば、一年も、ほんま…あっと言う間やったと思いませんか…?もう年末ですよ…年末…。」

 「山ちゃん、ほんまや~早かったな~。」 「年末や、すぐに正月や…年取るはずやわ… 定年も近いで…。」

「もう、せやから年寄りは嫌いなんや…なんか言うたら、すぐ、しんみりした話になってくるし…そうなる前にうちは帰るで…。」

 「おい、おい、若女将…まだまだ、入口に立ったとこやで…。」                                          「ええか、子供、嫁はん…父親母親、ほんで老後ときて…最後は必ず思い出話…どんどん奥へ、奥へと進んで行くんや…。」

  「うわ~、かなわんわ~ 早よ帰ろ、帰ろ…。」

「ママ~、俺と藤島にお湯割りのおかわりや…。」 「山ちゃんは、この年末になってもビールみたいやな…北さんは…?」

   「山本さん、ビール抜こか…?」

  「ああ…若女将の、今日最後の仕事やな…? ぜひ、お願いするわ。」

 「ビールなんやから…抜くだけや無いで~ 最後の仕事は…山本さん…はいっ……。」

   「あっ、若女将… 俺もビールもらうわ……。」

   「は~い、北村さんおおきに…。」

  「北さん… 今…うらやましいと思うて、頼んだやろ…?」

  「…うん、そうや…。」 「…思わず、たのんでしもうた…。」

 「ほんま…? 嬉しいわ~~。」 「うち、素直に喜ぶし… 北村さん…はいっ……。」

   「うん、ありがとう…。」

「ほな、今度こそほんまに帰るわ~。」 「…ほら、8時回ってしもうたやんか…おっちゃんらは、のんびりしていってや~。」

  「あっ…若女将、お疲れ~~」   「…お疲れ~~。」

 「ありがとう、お疲れさん…。」 「もはや、わしら全員…若女将にメロメロなんかも知れへんなぁ……。」

  「そんなもん、ずっと前から……俺もそう思いますわ…。」

 「西島君やったかな…?…そっちの若いお兄ちゃんらも…そう思わへんか…?」

 「いや~~、思いますけど…僕らはまだまだ、ママさん目当てが本音ですわ。」                                「だいたい、森川さんら程…若女将に相手してもろてませんから。」

 「ああ、なるほど…そ~かも知れんなぁ…。」                                                    「若女将って…北さんや俺から見たら…もう、孫みたいな感覚なんかもわからんなぁ…せやから尚更に可愛いんや…。」

 「それも在るかも知れんけど、なんや独特のモンを持ってるで…ほんまに小学生か…?」                         「体のちっこい大人とちゃうか…?って、思う事…森川さんは無いか…? 俺は在るんやけど…。」

 「そ~なんや……ふと、気付かされる時がある……。」                                                  「実は、小学生なんや……3年やで…そない思うたら…怖いもんがあるわなぁ……。」

   「せやなぁ…ほんま怖いわ…なぁ…?」  

     「…はい…。」

 「もう、うちの娘を…みんなでよってたかって、怖い、怖いって… ほんまに、何モンやと思うてますのんや…?」

 「何モンって……?…」                                                                       「小学3年生にして、すごく気が付くうえに何でも出来て…時として、色気まで感じるような…スーパー若女将……。」     「なっ…? 十分、怖いやんか……。」

 「ありがとうございます… そ~ですなぁ…たしかに…。」 「褒めてもろてる…と、思うて…喜んどきます…。」

  「そんでええ…そんで…。」 「…ところでママ、年末年始の予定は決まったんか…?」

  「はい、明日にでも張り出すつもりやったんですけど…27日までと云う事で…。」

   「おい、おい… わしらの仕事納めは28日やで…困るやないか…。」

    「森川さん、28日は何時までお仕事です…?」

  「そんなもん…後片付けと、昼からは掃除して…終わりや…あっ…!」

    「フフッ…毎年、おんなじ話してますなぁ…。」

    「ほんなら、今年も…?」

    「はい、皆さんが良かったら…。」

    「もちろんや、なぁ北さん…?」

 「俺は、最初っからそのつもりや…藤島や、山ちゃんかてそうやろ……?」                                       「森川さん…あんただけが毎年、おんなじ事言うてるんや…。」

   「そない言われたら…。」 「…来年も、おんなじ話すると思うけど…たのむで…。」

 「はい、せやから28日は、3時半~4時には準備しときますよって……」                                    「常連仲間で、忘年会を兼ねた…飲み納めと云うことで…どうです……?」

   「…うん! それでたのむわ。」

    「…異議な~し。」

 「…もちろん、僕も…。」 「今日は欠席の…藤島さんには、明日にでも…僕から伝えときます…。」

    「あの~僕らも…?…」

  「はい、西島さんらも…良かったら来て下さいね…。」

  「よかった~是非…頭数に入れといてくれますか…?」

  「もちろんです、若女将にも手伝うてもらいますわ…。」

   「それはええ…楽しみや。」  
 
   「ほんまや…ほんま…。」 

 「…はい…待ち遠しいです…。」

夕子、西成区花園町在住。 第65話       (さぁ、いよいよ…)

 「さぁ~~ いよいよ冬休みに突入した…もはや、ここまで来たら…正真正銘の【もういくつ寝ると…】状態や…。」          「そして…年が明けた瞬間、これが抜けだされへん【タイムトンネル】やったら、どんだけええか…と、毎年…必ず思う正月がやって来る……。」                                                                             「なぁ、ここまでは…ちゃんと聞いてくれてるか…?」                                                「ちょっと…その視線に、不安を感じてるんやけど…ええか…ここからが本題や…。」                           「明日の土曜日…日本には、存在せえへん事で有名なクリスマスやけど…せめて俺が…芳月のアイスクリームぐらいおごったろか…?」

 「うん、寒うても食べられるもんなぁ…有難う。」                                                   「途中、3回くらい寝そうになりながらも…うちもマサに大事な話があって耐えとったんや…。」                       「…芳月のアイスクリームは素直に嬉しい…期待しとく。」                                               「…そしてやなぁ…うちからマサへの話も…日本には無かったはずのクリスマスやけど…今年は、せっかく土曜日なんやし…って事で…明日、お母ちゃんがマサを連れておいでって…言うてくれてるんやけど…どうする…?」

   「…え…あ~~~っ……。」

     「口を閉じる!」

  「な、なぁ… なぁ夕子…今ここで、『今言うた事は嘘や。』…とか言うたら……国によっては死刑やど…。」

   「アホっ…! どこの国やねん…?」

 「い~~~や…そのくらい、罪な事なんやど………」                                               「立ち直る為には、もう一回…土曜日のクリスマスが回って来るまで…無理やからな……たのむで…。」

   「あほっ……今言うた事は…『うそ』………」

  「…き、聞こえへ~~ん~!」 「…もし、聞こえたら…死ぬ~~~!」

 「アホっ… 大丈夫や…。」 「お決まりのパターンやないか、…うちかて言わなしゃ~ないやろ…?」

 「…それは、判ってる…けど、今の俺には刺激がきつ過ぎるんや…。」 「…俺は、今晩…寝るんが怖いくらいや…。」

 「毎度毎度、ややこしい奴っちゃなぁ……。」                                                     「ええか、続きが在るんや……クリスマスって、本場では鳥を食べるそうなんや、せやから鳥の釜めしを……。」

   「うわ~~~~~っ……」

 「あんたが、ごっつい美味しそうに食べてくれたからって…お母ちゃんが……。」

   「うわ~~~~~っ…」

  「なぁ、そんだけ喜んでくれたら嬉しいけどな…とりあえず、じっとしぃ…。」

   「ハァ…ハァ… …うん。」

 「判ってるつもりやけど…たいがい疲れる奴っちゃなぁ…ほんで、明日の土曜日は…終業式だけで終わりや…。」          「ええか…冬休みを存分に楽しむためにも…量も少ないし、昼から【洋子】に行くまでに、宿題は全部…終わらせるんや!」

    「……えっ…?」

  「心配せんでもええ… 一緒にやったる……昼御飯食べたら、うちにおいで。」

  「…わかった……夕子、お前…今日は矢印のしっぽ…収納したままやなぁ……。」

   「すぐに出せるで……。」

  「へへっ…と、云う事は……トゲの生えた矢印のしっぽを…認めるわけやな…?」

    「マサ~っ!」

  「生えた~~ バイバ~イ…。」 「あした楽しみにしてるからな~~。」

   「アホっ… マサ…バイバイ……。」



   「…ふ~っ……。」 「先生………サブちゃん……よかったわ…有難う……。」

    「…はい……。」

  「…約束です……。」 「今日が最後…今日で…終わりにさせてもらいます…。」

  「…琴美さん……すんません…有難うございます…。」

 「いえ、今日まで無理してくれはって……あやめ姐さんに怒られましたわ…。」

   「えっ、 あやめ姐さんは…?」

   「あれから来てませんやろ…?」

    「…たしかに……。」

 「残ってたのは…私だけです………。」                                                           「あやめ姐さんは…先生の方からそんな話聞いたら、こっちから身を引いてあげんと…って、怒られました…。」

   「あやめ姐さん、そんな事を…?」

  「そうです…『来週にも、また…』…って、言うたまま…そうですやろ…?」

   「…はい、たしかに……。」

 「そう言うた方が、先生に気ぃ遣わさんと済むからって…。」 「せやから姐さん…もう、年内には来はりませんわ…。」          「年が明けたら…私もそうですけど、普通のお客さんとして寄せてもらいます…。」

  「みなさん、色々と考えてくれてましたんやなぁ…こちらは仕事ですのに…。」

 「無理な仕事を、無理してくれはって…。」 「無理を承知でやらせてしもうて…申し訳ないと思うてます…。」               「特に私は…助けてまでもろうたのに…しつこうして、すみませんでした…。」

 「…いや、そんな事は……それに助けたと言うても、別に何をした訳でもあらへんし…。」

 「私には、十分でした…。」 「正直に言うとね…奥さんが出て行きはったのを知って…確かに縁談話には困ってたんですけど、それを理由に、先生ともっと…仲良うなれたら…そんな気持ちが本心やったと思います…堪忍して下さい。」                「先生だけやのうて、奥さんや娘さんにまで迷惑を掛けてしまいました…きっと、きっと…恨まれてるはずですわ…。」

 「そんな事は…ただ…アホな亭主とアホな父親の合体版…とんでもない奴…それだけですわ…。」                      「琴美さんも、春駒姐さんも…なんにも悪い事なんかあらへん…。」                                      「俺自身…アホやったかも知れんけど…悪い事をしたとは思うてない……それでええや無いですか…。」

   「それでええ…のですか…?」

 「それ以外に…何も無いやないですか…琴美さんとも、考えたら長い付き合いや……。」                             「5年程になるやろか…まだ、制服着とったもんなぁ……。」

  「よう覚えてます。 制服姿が素敵でしたわ…長い事は見られへんでしたけど…。」

 「せやなぁ…制服を脱いだんは、それからすぐにやった…。」                                              「それも、アホやったかも知れんけど…悪い事とも、失敗したとも思うてない…。」 「これで良かったと思うてます…。」                 「琴美さん、これからも青田整骨院を御贔屓に…仲良うして下さい…頼みますわ…。」

 「はい…断られても、無理やりにでも来ますからね…。」                                                 「今日は、これで失礼させてもらいます……先生、ほんまに…おおきに…ありがとう。」

 「はい…こちらこそ…。」 「おおきに…有難うございました…。」  
            ( 姐さん達…みんな有難う… 洋子、片付いたで…迷惑かけたなぁ… )