制服と割烹着(夕子と昌幸・青春篇)  最終話


 「なぁ夕子…夕べ、昌幸の奴、店に来んかったけど、今日の予定は?」

「昨日は、オリンピックの話題で持ち切りやったやろ? 在る意味…みんながマサを待ってて……来たら、慰めたろうと思うてたと、思うんや。」「マサもそう考えて、店に来るのは控えよったと思うわ…もうちょっとしたら来るんと違うかなぁ…?…」


「覚悟は出来てたやろうけど、決まったら……やっぱりなぁ…」

「夕子あんた…昌幸くんと電話だけでも話しをしたりしてませんのか?」

「…してない……あいつやったら大丈夫や。」「お父ちゃんが言うた通り、覚悟は出来てたからな…」「世間の人は、急なニュースで『晴天の霹靂』のように言うけどな………諦めては無かった…けど覚悟はしとったんや。」


「決定するきのうまで……かえって辛い思いをしてたんと違いますやろか?」

「それは……わずかな望みは持ってたやろうけど…何一つ変える事なく頑張りよった。気持に迷いは無かったと思うで…」




 「おはようございます……その顔は、皆さんお待ちかねのようで……」

「…おう昌幸、まぁ……なんや…」

「なぁマサ……別に誰も待ってへん。早よ上がっといで。」

「うん……いや夕子、ちょっと待ってくれるか……」「先生も、おばさんも…俺はその…ショックは確かですけど、落ち込んだりはしてませんから…今まで通りやるだけです。」


「ん…せやな、わかった。」



 「あんたより、周りの人の方が気を使うて大変そうやなぁ…」

「…お前の周りには残念がってくれる人は居て無いんか?」

「アホっ…きのう、マサが来んかったから、お客さんからの慰めを一人で引き受けたったんやで…大変やったわ。」


「せやろなぁ……そう思うて、きのうは遠慮したんやけど、お前には悪い事したなぁ。」


「ほんまやで…お客さんだけや無うて、朝から電話も鳴りっぱなしやったわ。」

「まぁ、それは俺の方も一緒やった…」「なぁ夕子、ええ話も在るやないか。小西先輩と伊藤ちゃんの結婚が決まったんは聞いてるやろ?」

「聞いてる! あんたはいつ聞いた?」

「きのうや。小西先輩…慰めるつもりやったんか、ノロケるつもりやったんか…?」


「なるほどな…うちは3日ほど前やったから盛り上がったけど、小西さんも昨日で無かったら、もっとノロケてはると思うで。」


「まぁ、そうやろ…ほんまやったら、こんなめでたい話は無いもんな。」

「タイミングの問題や…仕方ないわ…」

「タイミングなぁ…逆に、小西先輩に悪い気がするわ。」

「それも仕方無いけど、ようはマサ…あんた次第や。あんたが落ち込んでたら、周りも暗くなってまうやんか……大丈夫なんやろ?」


「任しとかんかい、心配いらん。」

「それでこそマサや……予選敗退とは違うからな……うちは慰めたれへんで。」

「それでええ、慰めてなんかいらん。なぁ…今回はアメリカとお手々つないでボイコットしよったけど、その4年後はロサンゼルスなんやと…笑わせてくれるやろ?」

「ほんまやなぁ…4年後にはソ連がボイコットしよるんやろか?」

「ん~それは、今の俺には分かれへんけど……スポーツには国境が無いと思うてたからな…それについては…残念としか言いようが無いなぁ。」


「せやなぁ…それにアスリートにとっての4年間は大き過ぎるもんな……」

「確かに…せやけど、俺は負けた訳とは違うからな。」「知ってるやろ? 連勝記録バク進中やったんや…」


「うん、もちろん知ってる……よう頑張ったやんか。」

「うん、けど…これでまだ頑張れる……このままでは終わられへんからな。」「なぁ夕子、勝手な話かも知れんけど……もう4年待ってくれへんか?」


「ほんまに勝手な話や。それはあんた次第で…いくらでも頑張ったらええ。けど、うちはもう待たれへん。」


「……そ、そうか…待ってくれへんのか。俺が悪いとは思わんけど、約束やからな。俺の口からは2度と言わへん。」


「せやから…うちが言うたるわ……マサが厭やなかったら、嫁にもろうてくれへんか? どないしても、オリンピックに行ってからでないとアカンのか?」


「あ…アカンはず無いやないか…けど本気か? オリンピックに行けたらって約束はまだ果たせてないんやで。」「代表になれた時だけと違うたんか?」


「そうや。もし代表選で負けてたら、あっさりサヨナラしとったわ。」「けどあんた、この4年間1回も負けて無いんやろ…よう、頑張ったやんか。」


「それは胸を張って言えるで。あの時にも言うた通り、俺の人生で一番気合の入った4年間やった…間違い無い。」


「お母ちゃんにも言うた事が在るんや…あんたが、人参無しで走る馬とは思うて無いんやけど…もしかしたらゴボウの為には走るかも知れへんやろ?」


「だいぶ白いゴボウになったようやなぁ。」

「せやねん。高校を卒業して4年…うちも地は白いのが判ったやろ?」

「せやなぁ、秋田美人とは言わんけど、南方系は抜け出したな。」

「あと、うちに必要なんは色気だけやと思わへんか?」


「…いや、俺には十分・・・」

「もっと在ったら困るんか?」


「そ、それは嬉しいけど・・・」


 「ほな、子供でも出来たら、胸もふくらむとは思わんか?」




            ― 完 ―



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制服と割烹着(夕子と昌幸・青春篇) 第51話


 「子供の頃は正月ほど楽しみなモンは無かったのに、今は何とも思わんようになってしもうたなぁ……」

「それはあんたが盆も正月も無い仕事やからやないか。うちは年末の忙しさから抜け出せて、やれやれなんや…今は、正月が一番のんびり出来て大好きやわ。」

「俺も嫌いやないけど…なんか『ウキウキ』するモンが無いと云うか……」

「あんたは、正月と運動会が好き過ぎたからそう思うんや。普通の人は、大人になったらそれで当たり前の事なんや。」

「当たり前かも知れんけど…俺は正月が楽しいと思われへん自分が嫌いやねん。」

「思いっきり、マサらしい考え方やな……うちは好きやで、気に入ったわ。」

「有難う…ところが気に入られても、楽しいと思う材料がないやろ? お年玉は出て行くばっかりやし、どこに行っても人混みや。」


「おまけに正月料金で高うつくしなぁ…」

「せや…その通りや。」「なっ? そう考えたら楽しい事なんか……」

「在るんや! 大人になったら正月はのんびりするんが楽しみやねん。」

「そう云う大人に、俺は一番なりたく無かったんやないか……」

「しゃ~ない奴っちゃなぁ…それも思いっきり、あんたらしいけどな……一人でコマでも回しといたらええやないか?」


「それがなぁ……5分で飽きたんや。」

「やってきたんかい? 要するに退屈したから来よったな…?……」

「一人では『羽つき』も『カルタ』も出来へんやろ? 福笑いかて……」


「アホっ、もうええ! ええ加減にしときや…めまいがしてきたわ。」「言うとくけどな、うちは付き合われへんからな…せや、アルに頼んで『カルタ』でも『トランプ』でも付き合うてもろたらどうや?」

「あのなぁ…『じゃりんこチエの小鉄』や在るまいし、なんぼアルが賢いと云うてもやで……アル~『トランプ』でええか?」


「…………」


「…今うなづいたら、テレビ出演やったのになぁ……やっぱり『小鉄』は凄いわ。」

「アホっ…『小鉄』はソロバンも出来るんやで、そんな猫が居てたら、うちかて店の手伝いをして欲しいわ。」

「テレビ出演の方が儲かるやろ?」

「……せやな。」「アホっ…せやから『漫画』なんと違うんか?」

「……それもそうやな。」

「ほんまに、昔からずっとや……退屈したらロクな事を考えへん。」


「そうやアル、散歩行こか?」


「 …… 」


「え~っ、うなづいたやんか…」

「うん、これはいつもやねん。」

「いつもやねん…つて、マサ、アルと散歩してるんか?」

「せやで、お前の居て無い時はいつもや。」


「嘘やろ…? ほんまにか?」

「嘘ついてどないするねん…仲良しなんやから当然やろ。」


「え~っ、ちゃんと付いて来るんか?」

「当たり前やないか…散歩やのに。」

「ひもは? 無いわなぁ?」

「当たり前やないか…猫やのに。」


 「行こ……うちもついて行くわ。」




 「なるほど…壁や塀の在るところは、こうやって壁の上を歩くんや。目線が合うもんなぁ………四つ角やで………止まった……マサを見る………方向を確かめて………走って行く……そこで…お~待つんや……凄いやん。マサ…凄過ぎるやんか……うちは感激してるで。」「これこそテレビちゃうんか?」


「アホぅ…たかが散歩やないか。」


「…猫のな………なぁ、交差点とか信号はどうするんや?」

「ここはアブナイって分かるんやろなぁ……そこの信号で分かると思うけど…よう見とけよ。」


「うわっ……嘘やん……」


「なっ。危険を感じたら、こうやってスネにしがみつきよるんや。」

「…犬に会うたら?」

「壁や塀の無いとこやったら、肩の上まで登ってきよるで。」

「知らんかった……こんな凄い事が起きてたなんて…知らんかったわ……」

「大袈裟な奴っちゃなぁ…たかが散歩やって言うてるやないか。」


「猫のな…」「ほんで、マサを見つけたらついて来るんやな?」

「それが、お前の家で誘わんとついて来ぇへんねん…不思議やろ?」

「……全部が不思議やけどな…」「さっきのスネにしがみついてる姿なんか…観た人もビックリせえへんか?」


「びっくり……してるんかなぁ? 銀行では、お客さんと銀行の人まで寄って来てなぁ…大騒ぎになったんや。」


「……そら、騒ぎになるやろ……メチャ可愛らしいやんか。」

「分かるんやけど、騒ぐような事か?」

「その自然体を、アルの奴は気に入ってるんかも分からんな。とにかく、あんた限定なんやろ?」


「いや、そんな事は無さそうやで…実は、コツが在るんや。」

「それを早よ言わんかいな。なぁ教えて……メチャ可愛いやんか…羨ましいわ。」


「うん、その先に犬が居るから……ええか、お前がアルを抱いとくんや。ほんで犬の近くで足元に放したら…スネに飛びつくはずや。柵があるから肩までは登らへんと思うで。」


「ふんふん……ここでええか?」


「よっしゃ……ゆっくり足元に…」


「……痛っ! 痛いやんか~ビックリしたわ~アルの奴…本気で爪を立てるやんか。」

「それでアウトや……残念やったな。」


「マサ…あんた、これを騒がんと我慢してると云うんか?」

「それが唯一のコツなんや…もう完全に慣れたけどな。」


「今のなんか、うちから飛び移ったのに、痛た無いんか?」

「いや、今のも痛かったで……せやけど、慣れてるし覚悟も出来てるからな。」


「ふ~ん、なるほどなぁ……アルにしたら、マサほど居心地のええ相手は居て無いんや……そら、なつくわ…」


制服と割烹着(夕子と昌幸・青春篇) 第50話


 「おい、今年も紅葉を観に行くつもりで居てるんか?」

「悩みどころやねん。去年はやっと綺麗な紅葉が観られたけど、あの人混みにはうんざりしたからなぁ…マサは行きたいんか?」

「俺はいつでも、お前しだいやないか。」

「次に休みが合うのは? 今日はまだ早すぎるやろ?」

「それが、しばらく無さそうやから聞いたんや…行くんやったら今日なんや。」

「え~っ、散ってしまうよりはマシかも知れんけど、まだまだやと思わんか?」

「ん~確かに……場所によるやろなぁ。」

「どっちにせよ、休みがしばらく合わん分けやろ? 無駄にしたら勿体ないなぁ…」

「紅葉の他になんか在るんか? まさか子供の時から嫌いな菊人形でもないやろ?」

「別に菊人形が嫌いな分けでも無いんやで…見ても面白いとは思わんかっただけや。」


「菊のかたまりにマネキンの首をくっつけただけとか言うとったやないか?」

「こいつ…久しぶりにいらん事を思い出しよったなぁ。うちも、あんたが虫歯で泣きながら遠足に行ったんを思い出したわ。」


「アホな事を言うな…泣いてなんか無かったはずやで……悲しかったんは弁当や。」

「お茶とお粥だけやったなぁ。2本の水筒に入れて…おばちゃんのアイデアか?」

「…他に無いやろ? もう一人は発言権の無いお父んなんやから……」

「せやな、聞かんでも分かってる事やったわ……アレは可哀相やけど笑えたで。」

「お前ら……友達3人、束に成って笑うてくれたんは死ぬまで忘れへんわ。」


「アカン…またいらん事、思いださせてしもたやんか。なぁ、そろそろ行動に移る事にせえへんか?」

「勿論その気やけど…問題は目的地や。」

「それによって弁当も……いや、もう外で弁当は寒そうやなぁ…よっしゃ紅葉はあったら儲けモンでやっぱり温泉や。」


「お前この頃、温泉にハマってるみたいやなぁ…俺も嫌いやないからOKやけど。」


「ほ~確か…あんたの好きな温泉は雄琴温泉やったんと違うんか?」

「………あ~、あの~僕もいらん記憶を一つ消去しますので、夕子さんも是非…その記憶を消去して頂けませんやろか?」


「う~ん…どないしょ~かなぁ~これって、『エロ本国内版・読めもせん海外無修正版』と3点セットに成ってる話題やからなぁ…簡単には消去出来へんと思うで?」


「………あっ、僕の方は小学校までの『夕子の悪業三昧・蛮行の日々』をすべて消去しますので……これで、なんとか……?」


「アホっ、なにが『蛮行の日々』や……そんなモンは出来るだけ…早よ忘れ。」


「わ、忘れました…ほな、昼御飯も洞川温泉で良かったら『牡丹鍋とイワナの塩焼き』を御馳走させてもらいますので…これでなんとか……御代官様…」


「わかった…ただし酒付きやからな。帰りの運転は……越後屋に任せたで…」

「心得ました…ほな早よ行こ。」



 「今日のBGMは?」

「心配いらん『サミーディビス・Jr』はすべて録音済みや……今日は…ライブ盤『ココナッツグローブ』なんかどないや?」


「マサ…あんたええ趣味してるやないか。それに、その調子やったら出世も期待出来るかも知れへんで。」

「お前にだけ通用する技やと思うけどな…誰が『ココナッツグローブ』って言うて分かるんや?」


「アホっ……世界中には何人も居てる…はずや…絶対。」

「世界中な……夕子、シートベルトや。」


「あっ、うん。」「それにココナッツグローブはホール名や……」


「はいはい……どないしたんや? 声が小さくなっとるやないか?」

「…あんた、うちが少数派やと思うて、バカにしてるやろ?」

「そんな事あるかい……ジャージ族のお姉さんに向かって…」

「次の信号で止めてくれるか。」


「次の信号を超えたら、酒屋があるんや……行きも帰りも一人で運転するつもりなんやけどなぁ?」

「……次の信号で止めてくれたら、酒屋まで運転したるわ。」


「有難う…アホっ、素直に喜んどいたらど~やねん…今日は『少数民族救済奉仕活動日』なんや。」

「もう一回、噛まんと言えるか?」


「……運転中は話かけんといてくれ…」
 
 「アホっ……」



 「牡丹鍋って美味しいんや…マサよう知っとったなぁ?」

「もちろん俺も初めてやで…この前来た時に目を付けとったんや。」

「ふんふん…あんたにしたら上出来や。イワナも美味しいし、お酒も進むわ。」

「紅葉には早かったけど、紅葉鍋も在ったんやで。次に来た時にはこれやな。」


「うん、鹿も食べた事ないもんな。せやけど、牡丹鍋と云うたら能勢の方しか思いつかへんかったけど、山間部ではあちこちで食べられるみたいやなぁ。」

「こうなると、山の幸もええやないか。」

「ほんまや…あちこち開拓せんとアカンで。」

「せやろ、せやから今日はこことは違うて、帰り道の途中に在る…下市温泉で風呂に入るつもりなんやけど…?」


「ええ感じやんか…下調べは出来てるみたいやなぁ?」


「役に立つやろ? あとは、酒豪のお前やから心配はしてないけど、酒を飲んでるんやから長風呂には注意せいよ。」


「ふ~ん……役にも立つし、気遣いも出来る分けなんや。」


 「3点セットの消去をお忘れなく……」


制服と割烹着(夕子と昌幸・青春篇) 第49話


 「なぁ、お父ちゃん、ほんまにお通夜には一人で行くんか?」

「そのつもりやけど…昌幸の事か?」

「うん、マサは行かんでもええのんか?」

「大先輩とは言うても、面識も無いOBなんやから必要無いやろ……現役やったら別かもしれんけどなぁ。」


「そうか、それやったら別の用事なんや。」

「なんや別の用事って? 昌幸がどないかしよったんか?」

「いや…あいつ急に、今晩は帰りが遅いって言いよるもんやからな……」

「なるほど…友達と約束でも在るんやろ。」

「いや違うな……急過ぎたし、ちょっと様子が普段とは違うたんや。」

「どないしたんや? 夕子にしては珍しいやないか…まさか心配でもしてるんか?」

「明日は休みやから当然今日は店に来る予定やったんや。それを昼休みに、わざわざ電話を掛けてくるって…絶対におかしいわ。」


「なんでやねん、急に誘われる事も在るやないか…普段のあいつが『お~い中村くん』過ぎるんや。」

「アホっ。分かるんが厭やけど、茶化さんといて…だいたい新婚と違うやんか。」

「お~歌詞まですぐに浮かぶって事は…お前も中々の懐メロファンやな?」

「せやから、茶化したらアカンって……別にいらん心配をしてるつもりは無いんやけど、あいつの事は何でも分かるんや……絶対になんか在ったはずなんや。」

「…まぁ、お前がそう言うんやったら、間違い無くなにか在ったんかも知れへんけど、無理やり聞き出すような事はやめとけよ。」


「…せやな。分かった…そうするわ。」

「おいおい、マジかいな……ええ話や無い事まで分かってるんか?」

「…うん…なんでやろ? 分かるんや。」「そろそろ準備に出かける時間や…お父ちゃんもお通夜が済んだらお店に来るんやろ?」


「うん、帰って風呂に入ったら行くつもりやで…俺も明日は休みやしな。」

「マサも用が済んだら来よるやろ……」



 「……マサ…お帰り…」

「……いつも通り、唐揚げ大盛りとビールのセットをたのむわ。」

「…遅うなるって言うてた割りには早かったなぁ…もう用事は済んだんか?」

「うん、ちょっとした話が在って集合が掛かっただけやったからな…先生はまだか?」

「お通夜なんは知ってるやろ? 終わったら来るそうや…約束してたんか?」

「いや、約束してる訳とは違う……俺には面識も無い大先輩らしいけど、懐かしい面々が集まるみたいやから、話し込んで先生こそ遅うなるかも知れへんで。」


「偉い人も多いんと違うんか? お父ちゃんの場合は『エライさん』に親しい人は居て無いと思うで。」

「…それもそうやな…まぁ、のんびり待つ事にするわ。」

「……あんた、お父ちゃんになんか話でも在るんか?」

「…分からへん……先生から話が在るかも知れへんし……粕汁くれるか。」

「…うん、粕汁やな…」

「……ふ~っ…ビールもおかわりや。」


「いょ旦那、今日はペースが早いでんなぁ。」

「……心配せんでも3本以上は飲めへん。」

「…し、心配なんかしてへん…」「ノリが悪いやないか…なんか………はい、粕汁におでんの卵と厚揚げを入れといたで。」

「なぁ夕子、なんか在ったんは気付いてるんやろ? 聞くのを辛抱してくれてるんやと思うけど……はっきりしたら言うから、ちょっと待っといてくれ。」

「うん、それはかまへん。けど…うちが心配するような話とは違うんやろな?」

「…違う……どっちか言うたら喜ぶかも知れん話や。」

「……それは……まぁええ。マサがそう言うんやったら期待して待っとくわ。」

「うん、ゴメンなぁ…」



 「おう…昌幸、居てたんか。招集が在ったんやろ? 話は聞いたで。」

「そうやろうと思うて待ってました。」

「前代未聞の出来事や…内緒にせえと言われてるやろ?」

「はい、夕子にも言うてません。」

「あいつは、昼にお前からの電話で…すでに何か在ったと気づいてる。誤魔化さんと正直に言うたった方がええと思うで。」

「…やっぱり、そう思いますか?」

「うん、組織を通じての情報やと言いながら俺らの耳に入ってくる時には……お前には気の毒やけど、決まった事やと思うで。」

「……そうでしょうね…先輩にもそう言う人が多いですわ。」

「せやから話を広める訳にはいかんけど、夕子に話をするくらいは問題ないはずや。」

「完全に決まってからの方がええと云う事はないですか?」

「言いたい事は分かるけど、相手は夕子や…そのまま伝えといた方がええやろ。公表されて騒ぎになるのも時間の問題やと思うで。」

「分かりました…今日は先生と飲んで、夕子には明日の休みに話をしますわ。」

「それがええ。みてみい夕子の奴、わざわざ俺とお前から離れてくれてるんが…お前にも分かってるやろ?」


  「はい…」




 「マサ……二日酔い、大丈夫か?」

「うん、大丈夫や…俺もなんとかビールの限界が4本になりつつあるみたいや。」

「お酒なんか弱いままでええやんか…マサにはええとこが一杯在るんやから……」

「なぁ、人に言われたら困るんやけど、お前には正直に言うとく……日本はモスクワオリンピックの出場を辞退するそうや。」


「…………まさかとは思うてたけど、きのう『喜ぶかも知れん話』と言うたやろ? オリンピックに関わる事かも知れんとは考えたりしてたんや。」


「そうか……さすが夕子やな。」「確定はして無いらしいけど、俺らの耳に入ると云う事は決定やと覚悟しとく必要が在るそうなんや。」

「そうか…お父ちゃんがそう言うたんやろ? 残念ながらこう云う事は当たりよるんや。」

「おそらくな……多くの先輩も同じ事を言いながら慰めてくれたわ。」「せやけど夕子、俺には慰めなんか必要無いで、いままで通り自分に出来る事を頑張るだけの事や。」「お前は助かったと喜ぶつもりか?」


「アホっ、内容は別として…ロクな話や無い事は分かってた。」「これで、やる気を無くすような男やったら、うちの方から願い下げやけど……仕方が無い事やんか。」


「うん、お前がそう言うのは分かってた。せやから言うてる訳や無いんやけど、ここでやる気を無くしたら、お前まで失くしてしまうやろ……神頼みをしても無駄な事は知ってるしな。」


「当たり前やろ……神や仏やって言いかけたらそれこそマサとは終わりや。うちは無神論者と云う事に誇りを持ってるんや。」


「それは俺も、全く一緒や。悟りを開くって事は、御経になんの意味も無いって事に気がつく事やと思うてるくらいやからな。」


「お坊さん以外で、それに気がついたマサは偉いやんか……まぁ、うちとあんた以外の人がどう思うてたとしても、全くど~でもええんやけどな。」


「ほんまにその通りやな…それにお前としかこんな話は出来へんしなぁ。」

「当たり前や。ここだけの話に決まってるやんか……気を付けや。」「…まだ…夢も消えた訳やないんやろ?」


 「…任せとけ…選抜試合にも絶対に勝つ。」


制服と割烹着(夕子と昌幸・青春篇) 第48話


 「なぁマサ、ふと思たんやけどな…あんた趣味ってなんか在るんか?」

「おい、なんぼ俺でもカチンとくるど…趣味の1つや2つ無い方がおかしいやろ?」「だいたい今更なにを聞くんや? そうかプレゼントでもくれる気なんか?」

「アホっ、ちょっとお客さんと趣味の話になったんや。ほんで考えてみたら、うちも『趣味は?』って聞かれたら…音楽鑑賞…ぐらいしか思いつかへんかったんや。」

「お前の場合は片寄り過ぎてるから…音楽鑑賞とは言わんと、ずばり『サミーディビス・ジュニア』と言うたらどうやねん?」


「アホっ! 他の人も聞くわ…まぁ、8対2ぐらいやけどな……ほな聞くけどな、あんたの趣味って何やねん? 考えてみても全く思いつかへんで?」


「柔道とお前に決まってるやろ……2つも在るから俺の勝ちやで。」

「はぁ~ …聞いたうちがアホやったわ……お願いやから、よそで言わんといてや。」

「なんでやねん…これ以上の趣味は無いやないか? お前も、料理と俺を入れといたらどうや? 今やったら無料でサインもついてくるキャンペーン中やど。」


「アホっ、もうええ……せやけど、なんか……今までみたいには腹が立たたへん…自分でも不思議やわ。」
「まぁ、あんたの場合はトレーニングが趣味みたいなモンけどな…せや、ジョギングが在るやんか?」


「あのなぁ、お前も今、自分でトレーニングって言うたやろ? ジョギングって言うたら趣味に聞こえるけど、ランニングやないか…筋トレも全部、趣味の中の『柔道』に含まれてるんや。」

「せやなぁ、解釈としてはそうなるわなぁ…ほな、最後に残ったんは…『エロ雑誌収集』だけやんか?」


「…な、なにを言うんや……アホっ、そんなモン趣味って……それはやなぁ…その~…趣味の中の『夕子』に含まれてるんや……」


「アホっ! あ、あんたこそ何を訳の分からん事言うてるんや……なんでエロ本がうちに含まれんとアカンねん? ちょっと待ちや……なるほど、あんた微妙な表現するやないか……ほな、あんたが最初に言うたように、うちが『プレゼントでもくれる気…』やとしたたら……何が期待出来ると言うんや?」


「…いや……それは違うやん……話の成り行きやないか…いつもの事やろ?」「すごい推理力やけど、度が過ぎてると思うで…」


「ふ~ん……まぁええわ。」「こう言う話は……最近ちょっとアブナイ気になるんや……この辺にしといたるわ。」「ほんで…あんた今日は、趣味の練習は予定して無いんか?」


「うん、この頃はなぁ……休む時には完全休養日にするようにしてるんや。」

「それはええ事やと思うで。気分転換って大事な事やし…うちも部活が懐かしいわ。」

「まぁな…しかし、気分転換も大事やけど、ここまで来たら、怪我が一番怖いからな…疲れを抜く事が必要なんや。」


「……なぁ、お好み焼ばっかり食べてんと、どっか温泉でも行かへんか?」

「まぁ、この前も行った洞川とか…そんなに遠いとこで無かったらなぁ…」

「向こうでのんびり出来る方がええから、近いにこした事はないんやけど……どこか思いつかへんか?」

「う~ん……近場の温泉やろ? 限られてるとは思うけど、道が分からへんやないか?」

「加太やったらどのくらいで行ける?」

「距離は洞川とかわらんと思うけど、26の混み具合によるなぁ…道は判るけど心当たりでも在るんか?」

「うん、魚釣りの好きなお客さんから聞いた事が在るんや…マサも知ってるやろ? 西村さんや。」

「パン屋さんの?」

「違う、建材屋さんの方や…どっちもお得意さんやけど、パン屋の西村さんは魚が大好物でも魚釣りはしはらへん。」


「おもろいなぁ……確か、建材屋の方の西村さんは釣った魚を持って来てくれるのに、自分では食べへんのやろ?」

「ほら、知ってるやんか……魚料理で食べるんは『アラ炊き』と『ジャコ』だけやねん。」

「不思議なモンやなぁ?」

「お陰で釣った魚はほとんど持って来てくれはるから有難いんやけどな。とにかく、うちの店で魚釣りと言うたら、この西村さんの事やねん。」

「なるほどな…ほんで、その西村さん情報が加太なんやな?」

「新鮮な魚が、安く食べられるお店が何軒か在ってな、日帰りで温泉に入れる宿かホテルも在ると言う話やったんや。」

「ほ~、おんなじ処へ行くより、そっちへ行ってみよか? 距離は似たようなモンやと思うし、道も加太やったら迷う事も無いわ。」

「それに食べるモンかて、山の幸より海の幸が好みやろ?」

「…よし…スクランブル発進や。」「今からやったら午前中には付くはずやからな…悩んでる暇は無い……洗車は?」


「アホっ、そんなもん要るかいな…弁当もいらんやろ?」

「洗車って、弁当と引き換えやったんか?」


「今頃なに言うてるんや? 車は走ったらええんやけど、うちが弁当作ってる間にあんたが遊んでると思たら腹が立つやないか?」


 「……ガソリンを入れんとアカンなぁ…」


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弘と書いてひろむと読みます

Author:弘と書いてひろむと読みます
主人公の夕子と昌幸は作者と同級生と云う設定。          ディープな町、西成区花園町の世界を御堪能下さい。

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